映画評「ルパン三世 バビロンの黄金伝説」

☆☆(4点/10点満点中)
1985年日本映画 監督・鈴木清順、吉田しげつぐ
ネタバレあり

僕らより若い世代の間では第一作は傑作で、この第三作は駄作であるとする意見が主流のようであるが、そこまでの差はないと思う。同時代的には僕はどちらも☆☆★相当の評価を付けた。しかし、こうして見返してみると、第一作のアヴァンギャルドでシュールなお話の展開ぶりに比べると、お話が相当ガタピシしている為今回は★一つマイナスにする。結果的に★一つプラスした第一作と☆一つ分の差がついた。

最初と最後の舞台は真冬のニューヨークはマンハッタンで、ルパン(声:山田康雄)は、よく知る老婆ロゼッタ(声:塩沢とき)が彼の狙っている古代バビロニアの首都バビロンの黄金について語り始めるのを聞き、驚く。
 マフィアの青年ボス、ルチアーノならぬマルチアーノ(声:カルーセル麻紀)も父親以来この宝を狙っていて、峰不二子(声:増山江威子)を間に挟さんで、万一先を越された場合は横取りを企んでいる。
 5人の婦人警官を率いる銭形警部(声:納谷悟朗)の追手をかわしながら、第二のバベルの塔が発掘されたという現場に到着したルパンは遂に黄金の獅子像を発見する。これを例によって不二子に横取りされたルパンは余裕綽々。マンハッタンにもっと膨大な量の黄金が埋まっていると気付いているのだ。
 後で懐刀の若頭コワルスキーに裏切られるマルチアーノの屋敷に潜入して不二子奪還を計ったルパンは、実権を握った若頭により不二子共々奈落の底に落とされるが、それが第一のバベルの塔へ続く上水道と判って来る。

絵は、当時TVで放映されていた第三シリーズに近く、僕は余り好きではない。コミカル度がここまで映画版三作の中で一番高く、銭形警部の奇妙すぎる追跡ぶりに苦笑も洩れて来る。

しかし、お話の要素は案外第一作に近く、10000年生きて来たと自称するマモーの代わりにバビロニア時代から2500年も生きて来たというロゼッタ婆さん(その正体は宇宙人の美女=つまりかぐや姫のバリエーション)が登場、最後にロケットで宇宙に出るマモーの代りにロゼッタは宇宙船に消える。
 古代文明絡みは最新作の「The First」に引き継がれたが、かの新作はぐっとクラシックなアルセーヌ・ルパンばりの冒険ミステリー仕掛けで、なかなかロマンティックだった。つまり、本作が決定的に欠いた部分を補完し改善した感じになっているのだ。

本作の何が悪いかと言って、お話(脚本)のバランスが悪さ。マンハッタンにおけるバイクでの追跡は必要を超えて長い。その一方で、ハイライトと言うべき、マルチアーノの邸宅での騒動から続くシークエンスでは、もっときちんと見せた方が面白くなると思われるところを端折って、あっという間にバベルの塔出現と相成る。その他場面の繋ぎに首を傾げるところ多し。

二人の監督のうちに鈴木清順の名前があるが、どなたかも仰るように名義貸しに近い状態ではないか。彼が堂々と主導権を撮ればもう少しきちんとしたシュールさ(矛盾する言い方だが)が発揮できたように思う。本作はシュールというよりはデタラメなのだ。

日活が鈴木監督を追い払う原因となった「殺しの烙印」のシュールさは非常に現在的。ヌーヴェル・ヴァーグに似た感覚があるが、ヌーヴェル・ヴァーグの先駆けを果たしたとさえ思える日活の経営陣がそれを理解しなかったのは不思議。

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