映画評「天気の子」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2019年日本映画 監督・新海誠
ネタバレあり

前作「君の名は。」の大ヒットでごく一般の映画ファンにまで知られる存在になった新海誠監督の新作。「君の名は。」では色々理屈をこねて書いたが、今回はさほど理屈をこね廻す気にならない。作品の問題ではなく、3年の間に僕が疲れたようである。

語り手である高校一年生男子・森嶋穂高(声:醍醐虎太朗)は伊豆諸島・神津島から東京本土を目指して家出、フェリーで知り合ったライターの須賀圭介(声:小栗旬)に雇って貰う。下働きの外、雑誌用の都市伝説的ネタを彼の愛人実は姪の夏美(声:本田翼)に付き添うのが仕事だが、マクドナルドで食事を恵んでもらった17歳実は14歳のバイト少女・天野陽菜(声:森七菜)と再会し、雨を晴らす力のあることを知るや、バイトを首になって弟・凪(声:吉柳咲良)との二人暮らしを続けるのが厳しくなった彼女を助ける為に、連日雨が続く東京で晴れ女サービスを提供するビジネスを始める。
 彼女の能力は100%なのでビジネスは順風満帆に進むが、夏美の調査によれば、彼女は人柱と言うべき存在で、この能力を使ううちに体が透明になりやがて消える運命にあるらしい。そして、8月なのに雪の降る東京を晴にすると実際に彼女は消える。
 穂高は彼女がこの能力を得た廃墟ビルの屋上にある鳥居を目指すが、家出と銃器不法所持の為に警察にも追われ、遂には銃を取り出す仕儀になってしまう。隙をついて鳥居をくぐった彼は空の別世界で彼女と再会、天気(晴れ)より彼女を選ぶ。すると晴れていた東京は再び雨になり、ずっと降り止まない。

新海監督は、現実的なネタと、民俗学的なネタをハイブリッドにして展開するのが上手く、今回も異常気象(特に大雨)が目立つ昨今の世界と、天気・自然災害に関する人柱の話を合体させて、一応新味のある物語に仕上げた。全体の図式が彼の旧作やその他の作品に似たところがあり、全面的に新味があるとは言えないが、そもそももはやそんな話は殆ど案出しようがないというのが実際ではあるまいか。

いずれにしても、本作の主題は、青春映画の定石中の定石である恋の成就、これに尽きる。それを超常現象的なお話にまぶしてスペクタクル的に語る・・・といった内容で、事実、恋心に気づいた彼が只管消えた彼女を探し出し、それを実現する一連のシークエンスはアニメ的な意味で正に怒涛の展開ぶり。色々出入りはある中で、やはりここが本作のハイライトと言わなければならない。

今回は新海監督お得意の男女の語りによる対位法はほぼないに等しく、結果的に対位法からカノンへ移行する「秒速5センチメートル」や「君の名は。」ほど音楽的な映画と言えない感じ。それでも、日本の青春映画の分野において、昨今、実写映画はアニメに及ばないという感を強くさせる作品の一つと思わせる。

絵は、前回まで同様実写を利用したものらしく、非常にリアルで繊細。為に現実の固有名詞が数多く確認できる。警察も大学も店も架空の名前を案出する日本映画では案外珍しいことなのでござる。彼らが記事を提供する雑誌(の一つ)も現実に存在する「ムー」。

八月の鯨ではなく、八月のクリスマスでもなく、八月の雪。

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この記事へのコメント

2020年10月17日 09:20
これはよかったです、アニメだから主人公が空に昇って行ったりするのがふつうに見られるというのがあって、アニメの功徳ってあるなと思いました。
東京の日常の細部がリアルで、それもドラマを支えていましたね。
日本は実写映画より、マンガやアニメのほうが充実してそうです。
オカピー
2020年10月17日 22:45
nesskoさん、こんにちは。

>アニメの功徳ってあるなと思いました。

空を飛ばせるのは、実写映画なら絵としては成りなってもお話としては苦しいですが、確かにアニメなら自然に受け入れてしまいますね。

>東京の日常の細部がリアルで、それもドラマを支えていましたね。

新海組は、実写をコンピューターで上書きしているそうなんですよ。その効果絶大。

>日本は実写映画より、マンガやアニメのほうが充実してそうです。

最近は僕もそう思います。実写映画は本当にダメになりました。