映画評「荒野にて」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年イギリス映画 監督アンドリュー・ヘイ
ネタバレあり

ウィリー・ブローティンなる作家の映画化ということだが、後半の正統的なロード・ムービーぶりが気に入った。

不倫相手の暴力夫に襲われて父親を失った15歳の少年チャーリー(チャーリー・プラマー)が、その直前から手伝っていた厩舎に寝泊まりを始め、雇い主デル(スティーヴ・ブシェミ)が面倒を見る競走馬リーン=オン=ピートに愛着を覚え、メキシコに売られて殺されることが濃厚と知るや、車ごと馬を盗み出し、自分の暮らすオレゴンから、以前親しみを覚えていたマージー伯母(アリスン・エリオット)のいるワイオミングを目指す。
 しかし、途中でピートを交通事故で失うと、官憲や施設の世話になるまいと、親切な兄弟や炊き出しで知り合った軍人などにお世話になるが、勿論良いことばかりではなくサバイバル精神を発揮する場面にも遭遇、やっと突き止めた伯母の勤める図書館に向う。

お話の構図としては非常に単純で、父親に死なれた15歳の少年が最後の砦たる伯母の家を目指し、その間に色々な難儀にも遭遇するが、犯罪めいたものは最小限に留め、決してぐれずに所期の目的通りに終の棲家を見出す、という内容。

王道たる幕切れに向って突き進む正に王道たる展開で、最近の子供が主人公若しくは重要な役目を負う米国映画(本作は英国映画)における少年( childhood の意味であって boy とは限らない)は、特に変人でもない、健気な子供が目立つ。ドラマ映画における少年の扱いが変わる潮目にあるのかもしれない。もう少し様子を見ないと何とも言えないが、そういう若者を見るのは気持ちが良いので、大いに歓迎したい。

同時に、本作は自己責任の国の実態をよく表す社会映画の要素もあり、そこも注目すべきであろう。後半の主人公がダメと言う人がちらほらいるが、15歳で官憲や行政に頼らずにあれ以上にやれるだろうか?
 彼にとって、施設ではなく、おばさんが終の棲家であるから、警察が現れれば逃げ出し、その為に借りた携帯電話で遂に引っ越した伯母さんの情報をゲットする。昔からロード・ムービーと相性の良い電話の使い方が良い。それまではバイトなどして食いつなぐ。立派なものである。僕が仮に彼であればあんな芸当は出来ない。

全体として、作りが内容同様に素直な正攻法で、途中に反骨精神を示すちょっとした暴力場面こそあれ、後味が良い。型通りの後半がつまらないという意見は寧ろ映画を評価する際にありがちな固定観念に陥っている。いつもそうなるわけではないが、この作品に関しては、無理なく定石通りに進む(ことの)気持ち良さを堪能した。

映画に限らず、やたらに他人を批判する人は、自信過剰じゃよ。

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