映画評「ぼけますから、よろしくお願いします。」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・信友直子
ネタバレあり
WOWOWの【W座からの招待状】初めてのドキュメンタリー・・・ではなかろうか。余り確かではない。TVドキュメンタリーを再編集したものらしい。
TVディレクターの信友直子が、広島呉市に暮らす自身の両親を捉えた内容だが、こういうドキュメンタリーを評価の対象にするのは躊躇せざるを得ない。IMDb の平均採点が8.0なので、そのまま採用する。
僕の両親は死ぬまで頭はしっかりしていたが、しかし、本作の老夫婦のやり取りを見るだけで、二人の最後の頃を思い出して、落涙を禁じ得ない。
さて、昭和2年生まれの母親がアルツハイマーと診断される。それから数年の様子が捉えられ、初期にはニコニコしていた母親が、自分の頭が思うように働かなくなったことにイライラを募らせ、夫や娘に怒りをぶつけるようになる。監督は途中で十数年前に自分が乳癌に冒された時に母親が力づけた時のビデオを挿入し、今度は自分が面倒を見る番だと思う心境を盛り込んでいる。
しかし、頑固な父親が自分が世話できるうちは娘に帰ってもらうには及ばないと宣言する為、彼女は頻繁に帰省しつつも余り手を出さずに、両親特に認知症を深めていく母親の様子を捉え続けるのである。
僕のような文才のない人間がとやかく書くより実際に観るに如くはないが、僕がこの作品に価値を感じるのは、監督がなるべく映画作家として両親を客観的に捉え、それでもそのうちに沈潜させた彼女なりの愛情がきちんと感じられるように作られているところである。他人にはこういうことはなかなか出来ない。
同様に、夫の「死ね」という言葉にも妻への愛情を深く感じる。この言葉に冷たさはない。
最近御母堂は亡くなったそうであるが、その時に監督はある人が言ったというこんな文言を紹介した。「介護は、親が命懸けでしてくれる最後の子育て」。けだし名言と言うべし。
タイトルは、新年を迎えて監督の御母堂が実際に放った言葉。ユーモラスだが切ないねえ。
2018年日本映画 監督・信友直子
ネタバレあり
WOWOWの【W座からの招待状】初めてのドキュメンタリー・・・ではなかろうか。余り確かではない。TVドキュメンタリーを再編集したものらしい。
TVディレクターの信友直子が、広島呉市に暮らす自身の両親を捉えた内容だが、こういうドキュメンタリーを評価の対象にするのは躊躇せざるを得ない。IMDb の平均採点が8.0なので、そのまま採用する。
僕の両親は死ぬまで頭はしっかりしていたが、しかし、本作の老夫婦のやり取りを見るだけで、二人の最後の頃を思い出して、落涙を禁じ得ない。
さて、昭和2年生まれの母親がアルツハイマーと診断される。それから数年の様子が捉えられ、初期にはニコニコしていた母親が、自分の頭が思うように働かなくなったことにイライラを募らせ、夫や娘に怒りをぶつけるようになる。監督は途中で十数年前に自分が乳癌に冒された時に母親が力づけた時のビデオを挿入し、今度は自分が面倒を見る番だと思う心境を盛り込んでいる。
しかし、頑固な父親が自分が世話できるうちは娘に帰ってもらうには及ばないと宣言する為、彼女は頻繁に帰省しつつも余り手を出さずに、両親特に認知症を深めていく母親の様子を捉え続けるのである。
僕のような文才のない人間がとやかく書くより実際に観るに如くはないが、僕がこの作品に価値を感じるのは、監督がなるべく映画作家として両親を客観的に捉え、それでもそのうちに沈潜させた彼女なりの愛情がきちんと感じられるように作られているところである。他人にはこういうことはなかなか出来ない。
同様に、夫の「死ね」という言葉にも妻への愛情を深く感じる。この言葉に冷たさはない。
最近御母堂は亡くなったそうであるが、その時に監督はある人が言ったというこんな文言を紹介した。「介護は、親が命懸けでしてくれる最後の子育て」。けだし名言と言うべし。
タイトルは、新年を迎えて監督の御母堂が実際に放った言葉。ユーモラスだが切ないねえ。
この記事へのコメント
>その時に監督はある人が言ったというこんな文言を紹介した。「介護は、親が命懸けでしてくれる最後の子育て」。けだし名言と言うべし。
ある人とは久田恵さんでしょうか?
もう20年ほど前でしょうか、久田恵さんの本は何冊か読みまして、色々慰められたり、笑わせてもらったりした事を思い出しました。
この名言は今も心の中で反芻する日々です。(私は介護をする親はもういませんが、久田さんの言いたかったのは、親の老いを子供に見せるというのは、いずれは自分(子供)の通る道だと教えられているって事でしょうね。)
これは観る機会は何度もありましたが、食指が動かず・・・
観たくない・・・逃げの姿勢ですね。
我が事になる日が近づきつつあるので・・・ (笑)
>ある人とは久田恵さんでしょうか?
いや、解らないです。僕がぼかしたのではなく、監督が“ある人”と仰っていまして。
>(久田さんの言いたかったのは、親の老いを子供に見せるというのは、
>いずれは自分(子供)の通る道だと教えられているって事でしょうね。)
僕は介護によって色々鍛えられるという意味が濃厚かなと思いましたが、なるほどそちらのほうかもしれないです。
>観たくない・・・逃げの姿勢ですね。
想像できる人は見なくても良いと思います。
>僕は介護によって色々鍛えられるという意味が濃厚かなと思いましたが、なるほどそちらのほうかもしれないです。
どっちもありじゃないでしょうか。
>想像できる人は見なくても良いと思います。
ものすごく最悪の状況を予想して落ち込んでしまいがちなので、考えないことにしました。
明日を思い煩わず、今日を生きよう! (GSにそんな歌がったような・・・?)
このタイトル、なぜだか「はげますから、よろしく・・・」と読んでしまいます。 (励ます、じゃなくて 禿げます、ですよ)
>どっちもありじゃないでしょうか。
有難うございますm(__)m
>明日を思い煩わず、今日を生きよう! (GSにそんな歌がったような・・・?)
テンプターズの「今日を生きよう」ですね。英国グラス・ルーツの曲の日本版。そのグラス・ルーツにさらに原曲があるようで、なかなかややこしい(笑)
>このタイトル、なぜだか「はげますから、よろしく・・・」と
>読んでしまいます。 (励ます、じゃなくて 禿げます、ですよ)
ははは、そう読めます。夫君が細君に言いそうで、可笑しい^^
ニュースによると昨日、群馬県は記録的大雨に見舞われたとか。
お住いの地域は被害等出ませんでしたか?
>テンプターズの「今日を生きよう」
早速youtubeで視聴しました。 懐かしい!
「キサナドゥの伝説」と「今日を生きよう」を混同していたようです。
「禿げますがよろしく・・・」に対しては「太りますが悪しからず・・・」でしょうか? (笑)
>ニュースによると昨日、群馬県は記録的大雨に見舞われたとか。
お気遣い有難うございます。
水上町あたりの豪雪地帯、北部でした。南部のこちらは大丈夫でした。ただ、水上町には親戚がいます。
>「キサナドゥの伝説」と「今日を生きよう」を混同していたようです。
「キサナドゥの伝説」はジャガーズによるカバー。オリジナルは、オリヴィア・ニュートン・ジョン(ザナドゥという曲あり)・・・ではなく、ディー・ディー・シャープ。
「今日を生きよう」はオリジナルの歌詞も結構似ている。割合珍しいのでは?
>「禿げますがよろしく・・・」に対しては「太りますが悪しからず・・・」でしょうか? (笑)
まあ、そうですかね^^;