映画評「ホテル・ムンバイ」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
2018年オーストラリア=インド=イギリス=アメリカ合作映画 監督アンソニー・マラス
ネタバレあり

甚だ恥ずかしいことに、2008年11月インドのムンバイ(僕らの世代はボンベイと言いたくなる)で起きた同時多発的なテロは殆ど記憶に残っていない。しかし、その実際の事件をテーマにしたこの映画はサスペンス映画として傑作である。ジョン・フランケンハイマーの秀作群を見ているような興奮を覚えた。

イスラム原理主義の若者十名ほどが幾つかのグループに分散、そのうち四名が機関銃を乱射して、外国人が多く滞在するタージマハル・ホテルを占拠する。フロント関係者が最初に射殺された為、料理係の長が指揮を執り、配膳係デヴ・バテルが英米からやって来たVIPなど客を守る為に八面六臂の活躍をする。

余り細かいことを述べる必要を感じないほど、客が味わう凄まじい恐怖と緊張を延々と描写し続ける超弩級のサスペンスに圧倒されるのである。馬力が凄いと言うしかない。娯楽映画は一つの目標に関し純度高く作るべきであって、社会派の要素があるとは言え、サスペンスに特化してこれだけ純度の高い映画は近年殆ど観た記憶がない。お客の人生模様を最小限に抑えてそれを実現したわけで、脚本を書いたアンソニー・マラスという監督は大衆映画の理想形を知っているように思う。

そのサスペンス特化の中で、しかし、ホテルマンが徹底してお客を守ろうとする精神が十分浮かび上がるように作られていて、ドキドキしながら感動することもできる。
 純度を重視する僕の映画観では、テロリスト側の個人的描写は入れるべきではないのだが、入れつつも上手く処理している。少年たちもテロに加担する色々な背景を持つという社会派の要素を匂わせることで、個人主義的に処理したのが良い。作者が実際にどう思って作ったか知らないものの、悪は彼らを支配する指導者や宗教的原理にあるという作者の考えを僕は感じるのである。

サスペンス度の強さを特に買うが、トータルのバランスに感心させられた。

トランプのように自分の国のことしか考えないのは、結局(政治用語としての)全体主義者と思って良い。僕の持っている小学館の国語辞典は全体主義をこう定義する・・・個人の自由や権利より国家の利益・発展を優先する考え方。

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