映画評「HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年アメリカ映画 監督イライジャ・バイナム
ネタバレあり

現在の邦画青春映画にはどうも感興が湧かないが、ぐっと複雑な様相を示すことの多い欧米の青春映画には捨てがたいものがまだまだある。

1991年(大きなハリケーン禍があった年)。父親が亡くなった喪失感から抜け出さず、母親にフロリダ州?の海岸都市に住む叔母の家に追いやられた大学生ティモシー・シャラメ君が、学生のくせに大麻を売りさばくアレックス・ローと親しくなり、右腕として彼以上の売上成績を残し次第にいい気になる。その間にシャラメ君はそうとは知らず、町一番の美人である彼の妹マイカ・モンローと昵懇となっていく。
 この兄妹は犬猿の仲で、兄が妹と付き合うことを厳禁しているので、若者はこっそりと高ビーのこの妹とデートを重ねる。妹は妹で、不良の兄とは交際しないでほしいと願っている。

本作が少し面白いのは、若者が兄には妹との交際を隠し、妹には兄との交際を隠す、という秘匿性で、IMDbがコメディーとしているのはこれ故であろう。一見虐めらっれ子タイプの主人公が暴力性向の強い不良と意気投合し、高ビーの妹を彼女にしていく辺りも面白い。

僕が気に入ったのは、通常の作品なら明朗な青春模様が麻薬に関連することで暗転するという構成を取るところを、それに並行させて麻薬関連場面でも明朗さを隠さない点。麻薬絡みなのに作品の大部分において明朗さを維持するのは大変珍しい為、買っておきたい。

結局、シャラメ君がコカインのディーラーと交渉しようとしたのがばれ、無関係のロー君が大麻組織に殺された為に彼がすごすごと台風一過の町を去るという暗転を迎える。元来町を出る願望の強かった妹もそれとは別に町を去っていく。

彼らより5歳くらい年下の少年が大人になり、自分が見聞したことを回想するという形式で展開する、謂わば「おもいでの夏」(1971年)の、音楽で言えばよりブルース色の濃いヴァリエーションと言って良い。もしかしたら脚本も書いた監督イライジャ・バイナムがその見聞した少年なのかもしれない。

リンダ・ロンシュタットの「ロング・ロング・タイム」から始まる既成曲の選曲が有名曲は少ないながら抜群で、ゴキゲン。

日本で芸能人が麻薬で逮捕されると、過去の出演作やCDまで封印されてしまうことが多いが、欧米人を対象にそれをやったらCDショップからCDはなくなり、上映する映画はなくなるだろう。麻薬依存は犯罪ではなく病気であります。逮捕するのは使用者ではなく、販売者に限りましょう。

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この記事へのコメント

浅野佑都
2020年08月07日 15:14
>リンダ・ロンシュタットの「ロング・ロング・タイム」

彼女の曲は、イーグルスの「ならずもの」(レコード所有)の中からカヴァーしたDesperadoが大好きですね!
カーペンターズも良いけど、この曲に関してはリンダのほうがいい・・。

>「おもいでの夏」
公開時の夏休みに、叔母の家に行ったとき東京で観ました。ちょうど59年前の今日ですね・・。その後、マクシミリアン・シエルの「初恋」を・・。

「おもいでの夏」のほうは映画よりもミシェル・ルグランの主題歌がの有名・・。今でも、デパートの地下食品売り場で三重県産サバの照り焼きなんか買いながらこの曲が流れると””遠い目”になります(笑)


「おもいでの夏」は原作者の自伝だそうですが、映画が1971年に公開されたあと、作者の元へ数多くの「私こそヒロインの女性」という手紙が届けられ、その中の一つに、オハイオ州カントン市から来た手紙を見た時に作者のハーマン・ローチャーは筆跡で彼女だということが分かりました。名字は無く、返信の住所も記されていなかったらしい。
手紙の内容は「30年前のことはそのままそっとしておきましょう」といったことで、彼女は再婚して、子供や孫もあり、ハーマンのその後を心配していたと・・。

僕の人生には、そういうことはありませんでしたね・・アハハ!(笑)
オカピー
2020年08月07日 23:14
浅野佑都さん、こんにちは。

>リンダ・ロンシュタット
>イーグルスの「ならずもの」(レコード所有)の中からカヴァーした
>Desperadoが大好きですね!

イーグルスの中で好きな曲ですね。イーグルスは大分遅く、「呪われた夜」で初めて注目したので、一番最初に聞いたのはカーペンターズのカバー・バージョンかもしれません。多分同じ頃にリンダのカバーも聞いたような。45年くらい前ではっきりしませんなあ。
 良い曲は誰がカバーしても良い感じに仕上がりますね。カーペンターズもこの頃になるとカレンの声に厚みが出て来て良かった。姉が好きでよく聴いていたせいで、最初に聞いたのだと思います。

>「おもいでの夏」のほうは映画よりもミシェル・ルグランの主題歌が有名

ルグランの中でもこの主題曲は名曲でしょう。この映画もノスタルジーが基調でしたが、この映画を観た僕らはそれ以上の昔(およそ半世紀前)を懐かしんでいる。この曲ほどそれにふさわしい曲もないような気がしますねえ。

>名字は無く、返信の住所も記されていなかったらしい。

この間見た将棋の瀬川晶司の伝記映画「泣き虫しょったんの奇跡」で似たシチュエーションが出てきました。こちらは小学校時代の女教師が教え子を励ます為に書いたのですが。

>僕の人生には、そういうことはありませんでしたね・・アハハ!(笑)

ありませんわなあ。映画のような面白い人生はしないほうが良いのでしょう。