映画評「酒とバラの日々」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1962年アメリカ映画 監督ブレイク・エドワーズ
ネタバレあり

再鑑賞もしくは/かつオールド・ムービー・シリーズその1。本作はオールド・ムービーの再鑑賞に当たります。その中では一番新しいのですがね。

アルコール中毒(最近はアルコール依存症と言うらしい)の恐怖を本格的に扱ったのは1945年にビリー・ワイルダーが作った「失われた週末」が最初と思うが、17年後の本作は少し違うアングルでアル中の恐怖に迫った。監督がコメディー畑のブレイク・エドワーズで、序盤のうちは彼らしくコミカルな扱いの場面も多少あり、やがて深刻になっていく。

広告会社の社員ジャック・レモンが顧客の美人秘書リー・レミックと急接近し結婚するが、女児を一人儲けた後、営業故に普段から酒をたしなむことが多い上に仕事の辛さを酒で誤魔化す彼に同情して、彼女が付き合ううちにアル中になってしまう。子供もいるしこの泥沼から脱しようと、彼女の父親チャールズ・ビックフォードの農園で働き二人共すっかりアル中を克服したと思いきや、レモン氏がこっそり調達したボトルを手にして元の木阿弥。彼はアル中更生会で再生を図るが、彼女は自力で抜けられると強気の態度を取る。
 1年後酒なしの日々を送る彼は、失跡した妻をモーテルに迎えに行って、寂しそうな彼女を慰めるつもりで一口やって再び入院。妻を実家に戻して、今度は強い決意で娘と暮らし始めた彼の元に彼女が現れる。しかし、彼女は禁酒を決意することが出来ず、寂しく帰っていく。

本作では「失われた週末」のような禁断症状による幻想などは出て来ないが、彼が隠した酒を探す為に義父の花をめちゃくちゃにする様、或いはその直後病院で拘束された彼の様子はなかなかに凄まじい。

本作のアングルというのは、夫が妻をアル中にしてしまう恐怖である。こういうケースが実際にどの程度あるか解らないが、愛するが故に互いの苦痛や孤独に同情して泥沼に落ちてしまうという過程が、夫と妻を逆さにして、二度繰り返されるところに作者の狙いを感じる。
 個人的には細君が酒に溺れていく過程がやや拙速のように感じられるものの、モーテルでのリー・レミックの演技は鬼気迫る。

正確なことは解らないが、アルコール依存症の更生会を扱った最初の映画ではないかと思う。演壇で発表するなど、丸く囲んで坐ったまま話し合う現在とは少し違うが、こういう仕組みを初めて観た日本人はびっくりしたのではないだろうか。

彼女が地獄を終らせることができないまま終わる幕切れは大変厳しい。依存症に関係ない人も一度は観ておいた方が良いかもしれない佳作。

“鮭とサバの日々”も怖いよ。ところで、YouTubeにこの映画のサントラ完全版がありましたよ。昔日本では発売されなかったサントラLPが相当YouTubeで利用できると思う。数日間かけて、カトリーヌ・ドヌーヴが主演しミシェル・ルグランが音楽を担当したミュージカル映画三本を集めて二枚組CDをこしらえたところ。さて、その作品とは?

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この記事へのコメント

浅野佑都
2020年08月04日 12:33
 この監督のピンクパンサーシリーズの笑いは好みではないですが、本作はなかなかしっかりしていて、ラストもテーマに合っていると思います・・。‥。映像に被さってくるヘンリー・マンシーニの音楽も・・。

クイズの答えは早い者勝ちで、ハイ!「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」「ロバと王女」ですね・・・アップダウンクイズでいえば、第一段階の問題でしたね(笑)


フランス人は洒落者なので、男性でも普通の袖ではなく、ベルスリーブやフリルの付いたワラチェーラのような派手な袖のシャツを好むそうですね・・。
ミッシェル・ラグラン・・なあんて(笑)
こんにちは。
2020年08月04日 12:57
モカ
2020年08月04日 13:25
こんにちは。
Bon jour Moca です。

重いテーマで書こうと思ってたのに出だしでヘマをしでかして笑いをとってしまいました・・・

これは私の「気の滅入る映画ベスト10」にライクインしていました。(忘れてましたけど)
いつ頃観たのかも定かではありませんが、軽妙でコミカルなイメージを持っていたジャック・レモンがシリアスな役どころなのに驚きました。
夫婦共倒れなのが絶望的でした。

私の友人もアル中の夫(昔はとってもハンサムで好青年でした)と泥沼状態の末、やっと別れたら、ひと月ほどで、元夫が孤独死
した、なんて話がありました。家庭が崩壊寸前になって、成人していた子供はまだいいけれど、思春期の子供は可哀そうにややこしい事になったようです。

昔の男の道楽は飲む、打つ、買うでしたが、今はサプリを飲んで、蕎麦を打って、ペットを飼う、だと誰かが言ってました。
オカピーさんのような(うちにも一人いますが)音楽道楽は可愛いもんです。 

ところで ”鮭とサバの日々” ってなんですか?
魚嫌いですか?


vivajiji
2020年08月04日 13:38
http://blog.livedoor.jp/vivajiji/archives/51059700.html

はい、私もモカさまと同じく

「鮭とサバの日々」が意味不明ですわ。

もしかして連日、焼鮭とサバの味噌煮のオンパレードとか?^^;

甘っぽい主題歌とアル中地獄ストーリーの絶妙お献立映画かと。

オカピー
2020年08月04日 20:44
浅野佑都さん、こんにちは。

>この監督のピンクパンサーシリーズの笑いは好みではない

僕もそうでしてね。最初の「ピンクの豹」くらいは、御相伴に与っても良いけれど。


>本作はなかなかしっかりしていて、ラストもテーマに合っている
>映像に被さってくるヘンリー・マンシーニの音楽も・・。

「ティファニーで朝食を」と本作と、このコンビは良かったですね。
これ以降のコメディー映画は本当に嫌いだなあ。真面目な作品にちょっと良いものもあるくらい。

>「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」「ロバと王女」ですね

大正解!
三本を丸ごと収めようとすると、はみ出るので、作品価値の劣る「ロバと王女」を泣く泣く切りました(泣いてロバを斬る)。

>ミッシェル・ラグラン・・なあんて(笑)

浅野さんはお洒落さんですね。なかなか僕らの世代の男性で、ラグランと言っても解らないのでは?
オカピー
2020年08月04日 21:01
モカさん、こんにちは。

>重いテーマで書こうと思ってたのに出だしでヘマをしでかして笑いをとってしまいました・・・

可笑しかったデス(死なないけど)。

>これは私の「気の滅入る映画ベスト10」にライクインしていました。

そうかもしれませんねえ。

>軽妙でコミカルなイメージを持っていたジャック・レモンがシリアスな役どころなのに驚きました。

彼はうまい役者。本当にうまいコメディアンはシリアスもしっくりやれる。

>夫婦共倒れなのが絶望的でした。

それが狙いでしょうねえ。

>昔の男の道楽は飲む、打つ、買うでしたが、今はサプリを飲んで、
>蕎麦を打って、ペットを飼う、だと誰かが言ってました。

上手いことを言う人もいるもんですねえ。僕の洒落はレベルが違う。

>オカピーさんのような(うちにも一人いますが)音楽道楽は可愛いもんです。 

当たり前ですがな(笑)

>ところで ”鮭とサバの日々” ってなんですか?
>魚嫌いですか?

単なる洒落ですが、多少関連あり。
 11年前に膵炎に倒れた後、脂っこい魚をずっと避けてきておりました。以前は、マグロの赤身とタラくらいでしたが、薬も飲んでいることではあるし、昨年からそれ以外の魚も少々怖がりながら復活(の日)。
 僕が鮭とサバを多めに食べたら、相当まずいことになると思います。
 酒を飲んだらあの世行きだからね(正確には、飲んで入院しても俺は面倒見ない)と、医者から釘を刺されているので、全く飲みません(以前は飲めたけれど、元来好きではないから気にならない)。
オカピー
2020年08月04日 21:09
vivajijiさん、こんにちは。

>「鮭とサバの日々」が意味不明ですわ。
>もしかして連日、焼鮭とサバの味噌煮のオンパレードとか?^^;

サバの味噌煮はそれに近い状態かな?
 いずれにせよ、膵炎の僕は大目に食べるとヤバいかもしれないので(怖い)、そこまでは食べませんが、最近はかなり食べるようになり、脂っこい魚を食べる楽しみが復活しました。10年がかりで復活したのでした。めでたしめでたし。薬があるので、ある程度安心して食べられます。有難や、有難や。

>甘っぽい主題歌とアル中地獄ストーリーの絶妙お献立映画かと。

トータルでは、この作品が、エドワーズ一番の作品ではないでしょうか。