映画評「世界の涯ての鼓動」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年ドイツ=フランス=スペイン=アメリカ合作映画 監督ヴィム・ヴェンダース
ネタバレあり

ヴィム・ヴェンダースの新作は、 IMDb でひどく評判が悪い。こういう瞑想的というか、映像詩的な映画は得てしてこういうことになるが、なかなか美しい映画と思う。

お話は単純である。
 10000mの最深海に存在するらしい原初的生物を研究する美人科学者アリシア・ヴィカンダーと、ソマリアのイスラム・テロ・グループ “アル・ジャバーブ”のテロ攻撃を阻止する任務を負って水の専門家の振りをして同地に潜入する予定の英国スパイ、ジェームズ・マカヴォイが恋に落ちる。
 しかし、潜入後テロ・グループに捕えられた為に連絡が途絶えたマカヴォイへの思いに揺れ動きながら、彼女は生還できないかもしれない深海へ臨んでいく。

二人と彼らが臨む世界の相似の数々(相似的対照とでも言いたいところもある)が対位法的にハーモニーを生み出す様子が実に美しい。
 水で結びついた二人は、それぞれ世界の果てに向かう。片や人跡未踏の殆ど非生物的世界と信じられている深海、片や部外者は容易に入れないテロ・グループの陣地。後者はある意味非常に人間的であり、一見対照を成すものの、それでもそれらは外部から閉ざされているという共通点があり、そこに閉塞された二人の内面という小宇宙同士が、本人も気づかないまま感応し合う。それを示すのが不可思議な、一部で評判の悪い幕切れの意味であろう。

原作者やヴェンダースが興味を示すのは、魂の再会であって、物質的な再会ではないと思われる。
 魂と言えば、ソマリアの “アル・ジャバーブ” の扱いも極めて人間的で、同調・共感はしないまでもヴェンダースは精神という点において理解を示す。

極めて寛容に他人を捉える傾向にある僕でさえ、イスラム・テロリストには同情できないのだが、互いに本作が示したような意識で他人に対すれば、そう簡単に諍いは起きない。

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