映画評「ジープの四人」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1951年スイス映画 監督レオポルド・リントベルグ、エリザベート・モナグー
ネタバレあり

偶然にも昨日の「十字砲火」に似て、終戦直後の帰還兵夫婦の愛情がモチーフになっている戦後ドラマである。厳密には帰還兵ではなく、脱走捕虜であるが。

終戦直後、米英仏ソが分割統治するウィーンが舞台で、ジープごとにこの四か国の憲兵が乗ってウィーンを見回っている。ある時、オーストリア人の人妻ヴィヴェカ・リンドフォースを巡って、アメリカのラルフ・ミーカーとソ連のヨッシ・ヤーディンが激しく対立し、イギリスのマイケル・メドウィン、フランスのアルベール・ダナンがヒヤヒヤする。
 後に、ソ連がソ連の捕虜収容所から脱走した彼女の夫を捕まえようと躍起になっていることを知り、人権を重んじる立場のミーカーは、ヤーディンに内緒で、ヴィヴェカをダナンの家に匿う。ヴィヴェカは夫が帰還する兵隊の中に夫の名前がないことに失望するが、実は夫君は既にウィーンに戻って来ていると知ったミーカーはソ連が逮捕する前に二人を再会させようと画策する。

こうしたお話のうちに、終戦して何か月も経たないのに早くも冷戦の萌芽が生まれ、アメリカの個人主義とソ連の全体主義の差が浮き彫りになっていく。それを呉越同舟的に同一ジープに乗っている個人の間に明らかにしていく辺りがアングルとしてなかなか面白い。

各国憲兵の人物描写がその国民性に則る形で類型的すぎるが、その国民性の平均値を表現するのが半ば目的なのであろうから、アングルの面白さをこれに優先させたい。

夫君が何とか捕まらないであれかしと願わざるを得ない終盤は強烈ではなくもサスペンスフル。但し、最後の方になると少しもたれてくる。

当時アメリカは赤狩りの時代だから、多少なりともソ連と仲良くするシーンなどご法度だっただろうから、中立国スイスの製作というのがうってつけで、歴史と映画史を踏まえて観れば、それなりに楽しめるに違いない。

ソ連がしつこく脱走した捕虜を追う映画は他にもあるが、戦争が終わった後、重要な戦犯ならともかく、ただの捕虜をあそこまで追い続ける意味が理解しがたい。

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