映画評「泣き虫しょったんの奇跡」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・豊田利晃
ネタバレあり

将棋は全くできない。興味も余りなく、棋士は十余名知っているだけだが、何故か本作の主人公・瀬川晶司は知っていた(但し名のみ)。

小学校時代将棋で隣家の同級生鈴木君と競い合っていた瀬川少年(青年期:松田龍平)は揃って将棋道場に通い、その座主(イッセー尾形)のお墨付きを貰い、中学生選手権に出場する。優勝できなかった鈴木君は事前の言通りにプロ棋士への唯一の道である奨励会に入らず、瀬川君のみ入会する。
 22歳で三段に昇進するものの、26歳までに三段リーグで上位2位に入って四段にならないと脱会せざるを得ず、プロへの道を閉ざされるという厳しいルールの前に挫折する。
 やがてアマチュア名人になった為プロ棋士と戦うチャンスが訪れ、それを繰り返すこと十数度プロ相手に7割の勝率を誇った為、素人の名棋士藤田(小林薫)と記者に薦められ、プロ棋士に挑戦することになる。

勿論実話であるが、藤田氏は実際には遠藤正樹という人(邦画らしく、主人公以外の姓名は尽く変えられている、とのこと。必要以上に気を遣う文化ですな)。

何が奇跡であるかと言えば、彼が35歳でプロ棋士になったことではなく、特例とは言え、奨励会を脱会した後でもプロになれる道を開いたことと僕は思うのである。故に、失敗に終わっても誇りに思って良いと思うが、彼はプロ認定の条件とされた3勝を挙げて見事プロになる。自分のことのように喜べる幕切れでありました。

彼の運命を決めたのは、熱中すること(将棋)に邁進すれば必ず将来プラスになると自信を持たせてくれた小学校時代の自称 "美人担任教師”(松たか子)と、好きな事を仕事にしろと励ました父親(國村隼)である。映画は決戦の前に、この二人を中心に彼に影響を与えた人々をフラッシュバック、決戦中には関係してきた人々の反応を見せる。

極めてオーソドックスな見せ方で、「空中庭園」を作った豊田利晃監督らしい野心が余り感じられないのは不満であるが、頑張る人を見るのはなかなか気持ち良いもので、ストレートに作った為にその気持ち良い部分が殺がれないという結果に繋がっているかもしれない。通行人役の藤原竜也、奨励会の脱会者役の妻夫木聡、飲食店店員の上白石萌音、会社の同僚・石橋静河など、端役の配役陣が頗る豪華。

棋士の映画と言えば、かつては「王将」くらいしかなかった(但し何度も同一素材が映画化された)と思うが、ここ数年で三本(正確には二話仕立ての「3月のライオン」があるので三種四本)と、ちょっとした将棋ブームですかな。

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