映画評「空母いぶき」

☆☆★(5点/10点満点中)
2019年日本映画 監督・若松節朗
ネタバレあり

昨年の今頃、本作で総理大臣を演じる佐藤浩市の総理大臣に関する発言に安倍政権支持層の右派一部がかみついたが、彼は別に安倍批判をしたとは感じられなかった。確か彼は、総理大臣というのは大変な仕事である、という主旨を発言しただけと記憶する。いずれにしても、異議を申し立てるほどの発言内容ではなく、大騒ぎするほうがおかしい。
 ネットで騒動する人間は何事も白と黒、オール・オア・ナッシングにしてしまわない我慢できない人種が多いらしく、 “そういう考えもあるよなあ”とはなかなかならない。僕のように人はみな愚かで弱い(から色々な言動をする)と考える人間には、言論そのものは理解しがたいところがありますな。それ自体が、人はみな愚かで弱いという証左になるわけだが。

さて、本作は、かわぐちかいじという人のコミックをベースにしたものだが、お話はオリジナルらしい。

近未来のクリスマス・イブの前日、波照間群島(八重島諸島のことだろう)初島に国籍不明の人々が上陸、専守防衛に反する戦後日本初の空母いぶきを筆頭とする第5護衛隊群が島に向かうと、東南アジアの小国東亜連邦の戦隊が海と空に現れ、日本側が、憲法の定める専守防衛のハードルと闘いながら、相手を迎え撃つという難しい作戦を強いられる。

他の先進国・大国と違って日本は現状専守防衛しか許されていないから、軍事行動を伴う政治サスペンスではどうしても、他国のように自由にお話を拵えられない。例えば、ネイビー・シールズがロシア大統領を暴走したロシア軍から救う「ハンターキラー 潜航せよ」のようなわけには行かず、総理大臣(佐藤浩市)を始めとする政治家同士、あるいは艦長(西島秀俊)と副艦長(佐々木蔵之介)を筆頭とする現場の専守防衛に関する考えを相当絡める政治論を打ち出すことになる。たとえ近未来の話であってもこれはなかなか避けられない。
 だから、ドラマとしてそこに降下していく分には幾らか面白く作り得るが、英米の戦闘サスペンスのように高純度に見せることが事実上不可能なので、本作のようにサスペンスとしては煮え切らない作品となる。これは特段本作の責任ではない。この手のお話はある程度現実を意識させないと作る意味がないので、パラレル・ワールドにして解決してもダメである。

具体的な戦闘を眼前にした人々の専守防衛の論戦を観たい人だけに鑑賞をお勧めする。

映画を見る人の大半は、原作を読んでいない(若しくは読まない)から、“原作を冒涜”などという意見は、本作に限らず映画評としては無価値であるし、余り高級な軍事考証の問題指摘も素人には意味を成さない。本作の場合は、サスペンスとして(多少国防論を含めて)面白いかどうかを論じることのみが映画評である。

本作を観た日の新聞に戦後日本初の空母と言われもする“いずも”の話があった。なかなか面白い偶然。最近この手が多く、昨日の午後8時前に五木ひろしの歌を歌いながらTVを付けて「チコちゃん」を見始めたら、早速五木ひろしが出て来たので大笑い。

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この記事へのコメント

2020年07月06日 19:36
映画より(この作品は未見ですが)、最後のオカピーさんのことのほうがおもしろい、先行きの見えがたいこのご時世、オカピーさんの動向に注目すべきなのかもしれませんね😉
オカピー
2020年07月06日 20:55
nesskoさん、こんにちは。

まさか、あの最後の一言(最近長いのですが)にコメントが付くとは思いませんでしたよ^^
 書いた以外にも色々と面白いことがありました。

それが予知能力なら面白いですね。