映画評「アルキメデスの大戦」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年日本映画 監督・山崎貴
ネタバレあり

世界の映画がアイデア不足で興味深いお話の映画が非常に限られているが、本作はアングルがなかなか面白い。原作は三田紀房のコミック。

国際連盟を脱退した後1933年の日本。これから始まる可能性のあるアメリカとの戦争を前提に、戦艦こそ戦争を有利に進める手段であるとする嶋田繁太郎海軍少将(橋爪功)や平山忠道造船中将(田中泯)と、これからの戦いは飛行機が軸であるとして空母を選ぶ山本五十六海軍少将(舘ひろし)と永野修身中将(國村隼)が対立する。
 山本らは戦争を回避する為にも何とか選定会議で空母が選定されるべく動き出し、戦艦派の出した大型戦艦製造費見積もりは明らかに低すぎるので、戦艦派が設計図や計算書等の資料を軍規を盾に一切提示しない中、大手財閥の家庭教師を首になった東京帝大数学科の天才学生・櫂直(菅田将暉)に白羽の矢を立て、選定会議までの2週間でその建設費を計算させるのである。

戦争を生き抜く為に或いは戦争を回避する為に数学が重要なツールとなるというアイデアが興味深く、概略の設計図しかなく、軍部から民間企業まで資料が一切封鎖された困難を天才が乗り越えていくところが実にサスペンスフル。
 都合の良すぎるところも多いが、こういう比較的地味だが理知的なアングルの着想を大いに買って、大目に見たい気になる。

終盤次々と凄い勢いで紹介される軍人政治家の複雑怪奇な深謀の数々、特に平山中将が戦艦に拘った理由が日本国民の精神性を考え敗戦後のことまで考えたことという事実はいかにも漫画的ではあるが、一種のどんでん返しとして捨てがたい面白味がある。

監督は特撮ものがお得意の山崎貴で、脚色も担当している。VFXは現在においては悪くはないが・・・というレベル。同時代的印象としては、彼の旧作群に及ぶ迫真性があるとは言いかねる(単純比較では旧作に優るだろうが)。

数字と言えば、医療関係者を含めて日本のコロナ対策に批判的な人も少なくないが、死者数・感染者の数(PCR検査が限定的だから少ない、というのは必ずしも正しくない。死者数からある程度逆算できる)から言って現在までは成功の部類と思う。医療関係者はとにかく完全を目指すから、行政・国民への要請が異様に厳しいのである。本作主人公の櫂直なら、実際の感染者数をずぱりと当てるだろう。

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