映画評「パンク侍、斬られて候」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・石井岳龍
ネタバレあり

本作は、いつの間にか名前が変わった元石井聰亙の石井岳龍が町田康の同名小説を映画化した作品だが、脚色を担当した宮藤官九郎の色が強い気がする。
 一応江戸時代を舞台にしているのに、使われる言語は平成語というのが、お話以上に人を食っている。パンク・ロック系のアーティストでもある町田の方向性なのだろう。

浪人の綾野剛が、財政の厳しい小藩に仕官しようと、かつて世間を騒がした新興宗教“腹ふり党”から藩を守ると、國村隼の次席家老と激しいライバル関係にある筆頭家老豊川悦司に持ち掛ける。
 やがて“腹ふり党”は既に解散状態と判明するが、それが殿以下に知られてまずい豊川は、綾野・家臣(染谷将太)・密偵の三人組を残党に派遣、元幹部浅野忠信に再建を持ち掛けて狙いは成功するが、豈図らんや、藩を潰すほどの勢力となってしまい、何故か人間の言葉を話し始めた猿(永瀬正敏)に応援を頼む羽目になる。

馬鹿らしいなりに登場人物の腹芸や権謀術数が楽しめる前半は面白いが、超能力を持つ低能青年やら言葉を喋る猿などの活躍が目立ってくる後半は余りにデタラメすぎて、僕の感性では楽しめない。つまり小説や映画の常識を外すというのが作品の目的なのだと思うが、僕くらいの爺になるとこう尖った態度は嬉しくないのである。

ナレーターをしているのが人の心を読め言葉も話せる猿と判明する瞬間は一種哲学的でもあり非常に興味深いものの、この猿に関してはその後手詰まり気味。浅野に使えている美人・北川景子が冒頭の場面で綾野に殺される巡礼老人の娘であるのはドラマツルギー上必然すぎるのも、幕切れでの面白味を殺ぐ。

余り趣味ではないと思う中で一番気に入ったのは色々な洋楽のパロディーのような音楽で、中でも“腹ふり党”の衆がええじゃないかの群集のように町に押し寄せる場面でかかる、ピンク・フロイド「吹けよ風、呼べよ嵐」のパロディーは楽しい。しかし、題名に反して背景音楽がクラシックなロックっぽいなあと思っていると、最後にモノホンのセックス・ピストルズ「アナーキー・イン・ザ・UK]がかかって納得。

今週は昨日から日本映画週間。不本意ながら暫く続きます。この間のクイズ番組によれば、僕らの時代と違って若い人が邦画の方を好む傾向にあるという時代故WOWOWの放映も邦画が多く、こういうこともある。

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この記事へのコメント

モカ
2020年05月13日 10:58
おはようございます。

町田康、好きです。さっき指折り数えたら20冊は読んでました。
我ながらびっくりです。
当然、これも読みました。はじけ具合では既読作品のなかでもダントツだと思います。
大菩薩峠へのオマージュ?な冒頭の峠の場面から時代劇マニアの町田節が炸裂してました。ちょっと筒井康隆入ってたかな?
とにかく、映画は未見ですし、観る気もありません。 
町田作品は映像化、翻訳共に不可だと思います。
何というかプリミティブな言葉のパワーでカッコ悪く人間を解体していきますから(意味不明ですね)
この原作は特に読み手を選ぶと思いますが、こんな映画で町田君を評価されたくないので、ちょっと書かせていただきました。

「告白」が傑作です!

オカピー
2020年05月13日 20:57
モカさん、こんにちは。

>町田康、好きです。さっき指折り数えたら20冊は読んでました。

おおっ、そりゃ凄い。
僕は、芥川賞シリーズがやっと70年代に入ってきましたが、彼は90年代でしょう? なかなか遠いな(笑)。芥川賞受賞作だけ読むなら、年内にも辿り着きますがねえ。

>何というかプリミティブな言葉のパワーでカッコ悪く
>人間を解体していきますから(意味不明ですね)

いや、凡そ解りますよ。

>「告白」が傑作です!

僕は湊かなえのほうを思い浮かべてしまいます。勿論これも読んでおりませんが、映画版を観ているので。