映画評「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2019年アメリカ=イギリス=中国合作映画 監督クェンティン・タランティーノ
ネタバレあり

クェンティン・タランティーノは最初の「レザボア・ドッグス」(1992年)以外は長く、残虐趣味もあり、僕は苦手だが、この映画に観られる解りやすい映画への愛情表現はそんな僕をして感涙を催させるほどである。

1969年のハリウッドが舞台。落ち目のTV西部劇俳優レオナルド・ディカプリオと彼のスタントマン(スタントダブル)のブラッド・ピットが、イタリア製西部劇でお茶を濁して小銭を稼いで帰国した直後、チャールズ・マンソン一味に襲われるが、ピットはブルース・リーと互角以上の強さを発揮して愛犬と共に撃退、ディカプリオも撮影で使った火炎放射器でやっつける。重傷を負って病院を向うピットを見送った直後、彼は隣の邸宅に住む妊娠中の美人女優シャロン・テイトと友人たちに迎え入れられる。

1969年8月9日深夜に胎児や友人たちと共に惨殺されたシャロン・テイトの事件がベースになっているが、タランティーノは、多くの史実を流用しながら、架空のTV俳優とスタントマンを英雄に仕立て事件をなかったことにする。
 その前段で町中に僕が良く知っている映画の題名を色々見せるところもさることながら、実際には死んでしまったシャロンを殺させなかったことに彼の映画愛を強く感じるわけで、僕はここにひどく感動したのである。

作劇的に巧いのは、事件の半年前に、ピットが拾ったヒッピーの少女に連れて行かれた映画スタジオの廃墟がマンソンの拠点をなっていることを示したことで、そこでの得も言われぬホラー的なサスペンス醸成も優れている。

「サイレンサー/破壊部隊」でシャロンに殺陣を指導したブルース・リーとピットの対決も、終盤大いに生かされることになるピットの強さを示す為に置かれていると理解できよう。よって、シャロンの部分は不要ではないかという意見には全く賛同できない。この作品は彼女への哀悼が眼目となっているとしか思えないからである。

映画史に残る悲劇。この事件を知っているか否かによっても評価が変わって来るだろう。また、この事件がなければ、ポランスキーの人生も変わったわけで、微妙に映画史も変わっただろう。

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この記事へのコメント

2020年05月24日 21:31
シャロンさんの扱いは良かったです。
「サイレンサー/破壊部隊」を見てみたくなりました。
オカピー
2020年05月24日 22:40
ボーさん、こんにちは。

そうですね。
 シャロン・テートの事件はなかったことにしたいのが映画好きの思い。彼女の事件を扱った映画がいずれも“たられば”なのは、そのことの裏打ちですよね。
 チャールズ・マンソンが、僕の愛するビートルズをあんな解釈したのは実にけしからん。

「サイレンサー/破壊部隊」は大昔他のシリーズ作品と共に観ましたが、すっかり忘れました。最近の映画はつまらないので、こういう昔の映画を観たいのですがね。