映画評「鉄コン筋クリート」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2006年日本映画 監督マイケル・アリアス
ネタバレあり

「ピンポン」(2002年)という映画を観た時に松本大洋という漫画家を知り、その時に「鉄コン筋クリート」という作品の存在も知った。さして興味を覚えたわけではないものの、珍しく事前に原作の存在を知っていたので、10年以上前に作られた旧作に属する作品ながら、今回観てみる気になった次第。

舞台となるのは、パラレル・ワールド的な現代日本。一応日本と書いたが、壁に中国語の会社名が書かれていたり、インドの伝説をモチーフにしたイラスト、インドネシア伝統芸能が出た来たり、ごった煮的・コスモポリタン的な世界と言って良い。

内容は、余り僕の趣味ではない、二人の不良孤児少年が暴力模様を繰り広げる物語である。が、単なる暴力三昧のお話ではなく、観念的な部分により――それには功罪があるとは言え――僕にはプラスに働いた。

昔なら浮浪児と言われたであろうクロ(声:二宮和也)とシロ(声:蒼井優)の兄弟(恐らくは疑似)は、その無敵の強さにより他の不良少年を圧倒し、古き時代の様子を残す町を牛耳っている。そこへネズミと呼ばれるヤクザが舞い戻る。その子分である木村(声:伊勢谷友介)は兄弟を御すことができず干され、そこを町を開発して支配しようと企む謎の男“蛇”(声:本木雅弘)に付け込まれ、ネズミを殺すことになる。
 それと共に“蛇”は謎めいた三人の大男(どうも人間ではないらしい)を兄弟に向かわせる。刑事はこの闘いで重傷を負ったまだ幼いシロを引き取り、相棒を失ったクロは心のバランスを失って他人に対する暴力によりそれを補おうとする。

本作のキモはこの最後の部分にあるだろう。クロにはその名の如きダークサイドがある。イタチと呼ばれる心の闇(別人格)であるが、純粋なシロは、クロが別人格イタチと闘って勝つ為の必要な(しかし本人が持っていない)ネジを持っている。結局シロの心のネジはクロに達し、イタチを追い出すのに成功するのである。主題設定は観念的で一見解りにくいが、実際にはそれほどではなく、クロの純粋な部分は事実上シロと同一、即ち二人で一人という不離一体の関係にあるということを表していく物語である。

親のない二人にとって町が親代わりであり、外部者は言うまでもなく、町の大人たちとは町の存在意義が異なる、という主題設定もユニークで、為に町並みの描写も精密を極め、アニメならではの凄味を感じさせるのである。その代わりフレンチ・アニメのような可愛げのない人物の外見は余り好かない。

ここで子供の声を当てた蒼井優は、13年後同じSTUDIO4℃の新作では、お母さん役。彼女自身、人妻になったし。

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この記事へのコメント

モカ
2020年04月04日 22:47
こんばんは。
モカ
2020年04月04日 22:52
改めて、こんばんは。

これを観てから面白がって「テッコンキンクリート」と言っていたら、そっちが定着してしまって困っています。
くだらないコメントですいません。
オカピー
2020年04月05日 14:38
モカさん、こんにちは。

>「テッコンキンクリート」と言っていたら、
>そっちが定着してしまって困っています。

あははは。
そういうことは、結構ありますね。僕も替え歌を歌っているうちに、本当の歌詞を忘れてしまった経験があります。具体的に思い出せないのが悔しいですが。