映画評「町田くんの世界」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2019年日本映画 監督・石井裕也
ネタバレあり

安藤ゆきという漫画家による少女コミックを石井裕也監督が映画化。
 今世紀に入って激増中の少女コミックの映画版はそれに反比例して避けることが多くなっているが、本作は着実に地歩を固めつつある石井監督の作品なので観ることにした。全体としては見て正解であった。

幼少時代に井戸に落ちたショックなのか、主人公の男子高校生町田一くん(細田佳央太)は他人に親切せずにはいられず、キリストとも言われている。しかし、高校生が一般的に持つ常識がなく、恋愛感情が全く解らない。そんな彼が保健室で、人間が嫌いと言う同級生の美少女猪原奈々(関水渚)に手当をして貰う。

つまり、恋を知らない人間好きと常識を持つ人間嫌いが知り合ったらどういう化学反応を起こすかというお話で、そこをサラッと描いてしまったら普通の少女コミック恋愛ものに堕してしまうが、大体においてそうなっていないのが面白く見られる所以。

具体的に言えば、町田くんの常識外れぶりが可笑しく、そんな彼の優しさに次第に傾倒してしまう奈々ちゃんの心情が全く噛み合わない為に、その可笑し味が増幅されるのである。とりわけ、彼が追いかけると彼女が逃げ、それを止めると、彼女が追って彼が逃げ出す、という河川敷でのドタバタは、古いフランス喜劇を思い出させもして、実に愉快である。

原作ものではあるが、ヒロインの台詞や演技、或いは“一生懸命やること”における可笑し味の醸成は明らかに石井監督調で、映画的な面白味を生み出している。ここまではなかなかヨロシイ。

ところが、指摘する人が多いように、終盤失速する。それまで続けてきたオフビートな可笑し味や面白味を捨て、荒唐無稽な空を飛ぶファンタジー場面にまぶして誤魔化しているものの、当たり前すぎる少女恋愛ものに堕してしまう。だから上で“大体において”と言ったわけである。

自己中心的で他人のことを考えない人の多さを憂えるのがサブテーマでありましょう。

思い起こすと、高校の時に保健室に行ったことがなかった。保健の先生がどんな人だったか全く知らない。

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