映画評「ガルヴェストン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年アメリカ映画 監督メラニー・ロラン
ネタバレあり

10年以上前になる「アウェイ・フロム・ハー 君を思う」(2006年)のサラ・ポーリー、先日の「レディ・バード」のグレタ・カーウィグという若手女優の監督ぶりに瞠目させられたが、本作のメラニー・ロランもなかなか良い感覚をしている。

反社会的勢力の一員ロイ(ベン・フォスター)が、ボス(ボー・ブリッジス)に頼まれた仕事場へ行くと罠が待ち構えており、危うく殺されそうになるところを逆襲して事なきを得るが、そこに十代の娼婦ロッキー(エル・ファニング)を見出す。肺癌を患っているらしい彼は、やけくそな気分で彼女を連れてその故郷に近い、テキサス州東南部の海浜の町ガルヴェストンまで逃避行をする。
 その途上彼女は実家に寄って継父を射殺して(直後に本人は撃っていないと言うのは後で嘘と判明)3歳半の妹ティファニー(アニスタン・プライス、ティンズリー・プライス)を連れ出し、三人はモーテルに泊り暫しヴァケーション気分を味わう。
 その間彼はロッキーの悲惨な境遇を知り、妹が実は娘であることに気付く。ところが、新聞に継父殺害のニュースが載り、それをネタに一緒に医院から薬を盗むよう脅して来たチンピラを殺す羽目になり、町も出ようとする。しかし、ロッキーの為にお金を稼いでやろうと最初の現場から持ち出した帳簿をネタにボスに脅しをかけたのが運の尽き、行方を掴まれ、ロッキーを殺されてしまう。
 命からがら逃げだした彼は長いこと服役することになる。20年後、成人したティファニー(リリー・ラインハルト)の訪問を受け、行方をくらました“姉”について訊かれると、“この写真の女性は姉さんではなく母親で、決して君を見捨てたのではない”と言う。彼は外に出て、迫り来る台風に向かっていく。

レオン」(1994年)以降一ジャンルを形成していると言って過言ではないヤクザ男による少女ボディガードもので、類似する作品が多い為にお話としてはそうニコニコできないが、犯罪映画というより純文学的な終盤に味わいがある。以下は僕の解釈。

服役する前に交通事故を起こし入院した彼は自分が患っていたのは死病ではないことを知り呆然とする。生きるべきロッキーは良かれと思った計画により死に、自分が生き残ると知ったからである。その後恐らく20年の長きに渡り彼は自分が生かされたことに苦悩したはずなのだが、遂にその疑問を解く時が来る。彼には、成長した娘ティファニーに“母親は君を捨てたのではない”と告げる使命があったのである。使命・義務を果たした彼はハリケーンに身を投げ出し、行動を共にするうちいつしか自分の娘のように思えて来たのであろうロッキーの許に向かうのである。

この幕切れを見ても本作には犯罪映画というより、元悪党と不憫な娘との疑似親子的な交流を描くというドラマの側面が強い。だから、中盤海辺の模様など丁寧に描くのである。3歳半のティファニーがロイのお尻を叩いては戻って来るという場面が僕は大好きだ。安易に復讐物語にせず、主人公に生の意味を問わせる展開に感慨を覚えずにはいられない。

ひと時の幸福を感じさせる明るい海辺の描写を筆頭に、アルノー・ポーティエのカメラがなかなか良い。

9・11の影響と思うが、21世紀に入って疑似親子ものが増えた。その中でも秀逸だったのは「ミリオンダラー・ベイビー」(2004年)。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント