映画評「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年アメリカ映画 監督マイケル・ショウォルター
ネタバレあり

クメイル・ナンジアニというコメディアンが夫人エミリー・V・ゴードンと自伝的脚本を書き、自ら演じたドラマである。

十数年前にパキスタンから家族と共にアメリカへ移住したクメイルは、厳格な両親に内緒でウーバーイーツの運転手をしながらコメディアンとしてライブに立っている。その観客の一人エミリー(ゾーイ・カザン)から声援が入ったことから親しい間柄となるが、彼女は彼が(イスラム教の慣習に則って)見合いをしていることに腹を立て別れてしまう。
 直後彼女は奇病に倒れると、クメイルは成り行きで意図的に昏睡状態にする書類にサインを強いられ、彼女の両親レイ・ロマーノやホリー・ハンターと一緒に様子を伺うことになる。しかし、病院の治療は尽く見当違いで打つ手なく死を待つばかりと思ったところ、彼が発した一言から病院が当初考えた黄色ブドウ球菌感染症ではなく、成人スティル病と判明、彼女は無事に蘇生する。
 が、目覚めた彼女は彼と和解しようとしない。今度は彼が家族と縁を切るような目に遭わせたくないという考えからだ。そこでクメイルはコメディアン仲間と一緒にニューヨークに拠点を移す決意を本格的に固める。勘当と言いながら両親も見送りに来る。
 やがてニューヨークの舞台に立った彼の前にエミリーが現れる。

非常に平明な展開で、創作部分も相当あるとは思う(現実の彼らが付き合っていた頃ISIS=イスラム国、或いはウーバーイーツは存在しなかった)ものの、実話であるのが惜しいくらい。ごく一般的な内容だから、これくらいは脚本家が案出して欲しい、ということである。

開巻より三分の一が過ぎる頃から映画はシリアスな状態に陥っていくわけだが、この映画が断然良いのはここからで、エミリーが深刻な状況に陥って両親が狼狽して騒動しまくる様子を積み重ねることで可笑し味が醸成される辺りコメディーとして実に上質な見せ方である。こういうのを見ると、笑いと悲哀が水と油のように分かれている韓国大衆映画のまずさが際立つ。
 両家の対照的な親子関係の扱いも良く、それでも親はいつでも子供を思っているというところにさりげなく収斂されていくのが極めて上品。あるいは、人種・民族差別などアメリカの現状を浮かび上がらさせる手法のやわらかさ!

俳諧用語で言う軽味(かろみ)という境地を思い出させて上出来と言うべし。

東京の緊急事態宣言に合わせて町の図書館(隣の市)が5月6日まで休館。山の図書館(地元)が貸し出しだけやっているので、一回くらいは利用するかもしれない。借りたいものがなくなってきたので、6,7年前から遠ざかっていたのだが、日本の大古典ならあるはず。

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