映画評「ナチス第三の男」

☆☆(4点/10点満点中)
2017年フランス=イギリス=ドイツ=ベルギー=アメリカ合作映画 監督セドリック・ヒメネス
ネタバレあり

がっかりしたなあ、もう。一年半前に観た「ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦」と同じ素材を扱ったお話ではないか。
 この邦題からナチスの高官を扱った作品であることが予測され、実際開巻後45分間ほどは、チェコ亡命政府派遣の闘士に暗殺されるラインハルト・ハイドリヒ(ジェイスン・クラーク)の後半生を描いて、ナチス高官の人生を描くとは珍しいなあとニコニコ(というのも変だが)観ていたのだが、45分過ぎにオープンカー車中の彼が襲われたところから、すっかり闘士たちのお話になり、前述作とほぼ同じ描写に推移して時間を持て余すことになった。

これが一番の難点ではあるが、映画の構成がそもそもなっていない。45分までハイドリヒの人生を描き、残り70分くらいはチェコ側にほぼ集中するという変なバランスの映画は一作品として認められない。これは僕の個人的趣味ではなく、演劇が誕生して3000年近くに及ぶ第一の“すべからず”である。これが個別に見られる二本セットの映画なら問題ないが、一本の映画では不可となる。

結局ハイドリヒが、「バイス」におけるチェイニー副大統領と同じように、初期からナチ党員だった妻(ロザリンド・パイク)に背中を押されて、出世街道を歩む人生のうちに、差別の問題や人間性の問題を浮かび上がらせるという目的の作品としていれば文学的に楽しめただろうが、結局はありふれた反ナチ映画に終わってしまうのだから戴けない。チェコ闘士の抵抗ぶりを見るならより正確で詳細な「ハイドリヒを撃て!」をお勧めする。

まだまだあります。一昨日の「ハンターキラー 潜航せよ」同様二か国語以上が交わる映画では全て当事者の言語で喋らせないのが戴けない。本作も言い訳のように本当の言語がごく一部で使われているが、実質英語の映画で、ドイツ人もチェコ人も英語では気分が出ない。但し、戦争映画ではなくレジスタンス映画なので、それにより解りにくくなるということがなく、重大欠点とまでは言えない。

カメラワークも良くない。「ハイドリヒを撃て!」では揺らすカメラが気に入らなかったが、こちらはそれ以上に速いパン(どうもやや流行の気味あり)が非常に煩わしく、こういうのはカットの切り替えで見せるべきである。

韓国大衆映画のように一本の映画で二つの作品を観るような作品は、得なのではなく、損である、と知るべし。これは長い歴史で培われた演劇観・映画観の金科玉条。但し、日本の歌舞伎など西洋の演劇観に影響されない各国独自の芸能についてはその限りでない。歌舞伎「盲長屋梅加賀鳶」の脚本を読んだ時に、解説の戸坂康二氏がそう指摘していた。納得である。

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