映画評「ザ・ウォール」

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年アメリカ映画 監督ダグ・リーマン
ネタバレあり

セルビアとボスニアとの中立地帯で身動きがとれなくなる兵士を描いた戦争ブラック・コメディーの傑作「ノー・マンズ・ランド」型の戦争映画である。
 かの作品はそういう極限状況を以って戦争の狂気を描き出そうとした反戦映画だが、その後同じようなワン・シチュエーションの戦争映画、厳密に言えば戦闘映画(「トラップ」など)が幾つか作られたのは、全く違う理由による。恐らくは「CUBE」「ソウ」等のワン・シチュエーション・スリラーが受け、お金をかけずとも極限状況が観客の琴線を打つことに気づいた、資金の余り潤沢ではない製作者たちが資金が節約できるタイプのお話としてこしらえたのであろう。

イラク戦争は2003年に米国にとっての目的がほぼ(しかし不本意な形で)達成されたわけだが、その後2010年に終結宣言が出されるまで細々と続き、そこで起きた事件という体裁を取っている。イラクの実在したスナイパーが着想源らしい。

砂漠で狙撃されて全滅寸前の小隊を救う為に二人の兵士アーロン・テイラー=ジョンスンとジョン・シナが現場に駆け付けるが、敵たるスナイパーはいそうもなく、爆撃で廃墟になった学校の壁に向かって歩き出したシナがまず撃たれ、彼をバックアップしようとしたテイラー=ジョンスンも狙撃される。
 テイラー=ジョンスンは壁に隠れて、相手を倒そうとするが、水筒を撃たれて水も碌にない。やがて無線機から声が聞こえ、助けを求めるが、内容と発音に違和感を覚える。イラクの狙撃者が偽装して話しかけて来たのだ。重傷を負いながら相手の居場所を探し当て、更なる武器を得ようと必死の行動を取るうち、シナが息を吹き返した為、相手が油断している間に密かに敵への銃撃を指示する。
 これは結局失敗に終わるが、決戦に臨んだ時に味方のヘリコプターが現れる。何とか無事に救出されたと思うのも束の間、イラクの狙撃者はヘリに向って狙撃してくる。

というお話で、負傷しながら生存している米兵を偽装して無線で呼び出しては殺すことを繰り返す凄腕スナイパーの物語で、幕切れは一種のどんでん返しと言って良く、ゾッとさせられる。
 しかし、単純すぎるシチュエーション故にサスペンスの持続性は低く、その辺りは大して面白くない。従って、イラク狙撃兵が繰り出すアメリカ側に耳の痛い批判が一種の風刺として機能するところを見るべきであろうが、それも言葉で語られるだけだからインパクトに欠ける。リベラル系のメディアが戦争中から言って来たことの繰り返しに終始、得点源にならないのである。

ピンク・フロイドの同名LPを映画化した「ピンク・フロイド/ザ・ウォール」があるので、“ザ”は取ってもらいたかったですな。

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