映画評「100万ドルの血斗」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1971年アメリカ映画 監督ジョージ・シャーマン
ネタバレあり

西部劇として良いか悪いかと言うより、1971年当時の西部劇をめぐる環境について語りたくなる映画として面白い。40年ぶりくらいの再鑑賞。

奥さんモーリン・オハラと喧嘩し家を飛び出して10年になろうかという牧場主ジョン・ウェインがいない大牧場に、不良白人リチャード・ブーンを中心とする強盗団が現れ、関係者を射殺しまくった挙句に孫を拉致、モーリンに100万ドルの身代金を要求する。
 三人の息子のうち一人は重傷に陥るも二人パトリック・ウェインとクリストファー・ミッチャムは無傷で、保安官と共に身代金を払う旅に出る。細君はこんな時に頼りになる夫君に手紙を出して呼びつけ、牧場主は彼らに加わる。彼はインディアンの旧友ブルース・キャボットを味方に引き入れ、100万ドル実は新聞紙の入ったカバンを持って、一味を倒して孫を奪還しようと奮闘する。

というお話は頗る単純で、親子の確執とその変化を含めて誠に古風な設定。個人的には解りやすくてさほど悪い感じを抱かないが、冒頭で述べたように、当時の西部劇環境にあってこの映画はどういう位置付けになるか考えてみたい。

開巻後すぐにモノクロ画像や映像が出て来るのはサム・ペキンパーや「明日に向って撃て!」など60年代後半から流行り始めたスタイル。つまり、アメリカン・ニューシネマ的にスタートを切る。
 続いてマカロニ・ウェスタンを思わせる悪い連中が意味のないのに一々紹介される。一見するとマカロニ・ウェスタンを引用しているのだが、彼らは次々と消されることになる。
 次に1910年近辺のお話なのでもはや開拓時代とは言えず、車やバイクが出て来る。しかし、追跡するうちにこれらは結局役に立たなくなり、途中から画面から消える。ペキンパーの「砂漠の流れ者」では車は西部開拓と西部劇へのレクイエムを表現するものとして使われたが、こちらは西部劇消滅への抵抗を逆説的に示す小道具として活用されているのである。
 マカロニ・ウェスタン的な人物をご丁寧に紹介した後呆気なく消すのも全く同じ理由で、我々は王道の西部劇を守ると主張する作品にほかならない、ということがお解りになるでありましょう。

一家は全員生き残り、彼等に協力した旧友や大奮闘する犬は死ぬ。死んでも良いが、彼等に対する感謝に相当するものが何もなく終わる。王道西部劇の在り方を主張する目的が第一にあったとしても、後味が悪い。

年を取っても美しいモーリンの出番ももう少し欲しかった。怪我をする長男役は「ミスター・ロンリー」で有名な歌手のボビー・ヴィントン。

昨日のフランス青年も10年ぶりに故郷のぶどう園に戻って来る。偶然だけど、面白い。

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この記事へのコメント

蟷螂の斧
2020年03月14日 07:10
おはようございます。昨夜見ました。後半から面白くなりました。しかし・・・。

>彼等に対する感謝に相当するものが何もなく終わる。

そこなんですよ。ジョン・ウェインを随分助けてくれた旧友と犬が惨殺されたのに悲しんだり感謝したりする場面がない。パトリック・ウェイン(ジョン・ウェインの息子)とクリストファー・ミッチャム(ロバート・ミッチャムの息子)は助かったのに。
双葉十三郎先生の採点は65点です。

>矢口史靖監督

『スウィングガールズ』も面白かったです。

>当時は悲愁を好んでいたので。

「サスケ」でお殿様のそっくりさんが身代わりになって馬上で手裏剣に刺されて命を落とす話ってなかったですか?幼少の頃に見た記憶があります。
オカピー
2020年03月14日 21:04
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>双葉十三郎先生の採点は65点です。

やや甘めと感じますが、実力相応でしょう。ジョン・ウェインがほぼ崖状態の急な坂を馬で下りるところなど、さすがに痺れるものがあります。

>『スウィングガールズ』も面白かったです。

「ハッピーフライト」もお勧めですよ。

>「サスケ」でお殿様のそっくりさんが身代わりになって
>馬上で手裏剣に刺されて命を落とす話ってなかったですか?

すみません。結構いい加減なもので、憶えていません。
「サスケ」で特に好きだったのは、「母さんの歌」です。胸がしめつけられましたね。オープニング曲のナレーションも好きだったなあ。
蟷螂の斧
2020年03月15日 07:15
おはようございます。

>ジョン・ウェインがほぼ崖状態の急な坂を馬で下りるところ

あるいは大男をわざと怒らせる。殴られたジョン・ウェインが後ろのテーブルごと倒れる。当時64歳の彼がスタントマン無し?凄いです!

>車やバイク

僕が大好きな映画「砂漠の流れ者」とは逆なんですね。

>怪我をする長男役

彼も中途半端に消える役でした。

>「ハッピーフライト」

見ました。一見温厚そうだが、実際はかなり短気なビジネスマン( 菅原大吉)。オロオロするキャビンアテンダント(吹石一恵)、それを助けるキャビンアテンダント(寺島しのぶ)。
寺島さんは日本航空123便墜落事故の機長の娘さん(現在キャビンアテンダント)に似てるという人がいますね。娘さんもつらい人生を送ったと思います・・・。一生懸命働く彼女は立派です!
オカピー
2020年03月15日 21:42
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>当時64歳の彼がスタントマン無し?凄いです!

何と言ってもデューク(公爵)ですから、それくらいはやるかもしれません。

>僕が大好きな映画「砂漠の流れ者」とは逆なんですね。

そうですね。
 デュークは最後まで西部劇らしい西部劇に拘ったわけですが、さすがに最後は西部劇と自身へのレクイエムと言うべき秀作「ラスト・シューティスト」を残して旅立ちました。映画史上の奇蹟ではないでしょうか。

>寺島さんは日本航空123便墜落事故の機長の娘さん
>(現在キャビンアテンダント)に似てるという人がいますね。

存じ上げななかったので、検索で調べてみたら、画像もありました。なるほど、そう言われて不思議ではないですね。
Life goes on です。皆そうして生きていくのであり、我々も頑張りましょう。
蟷螂の斧
2020年03月16日 06:37
おはようございます。

>開巻後すぐにモノクロ画像や映像が出て来る
>アメリカン・ニューシネマ的にスタートを切る。

「ダーティーハリー」の出演を断ったジョン・ウェインが「マックQ」(ジョン・スタージェス監督)や「ブラニガン」(ダグラス・ヒコックス監督)で主演した事を思い出しました。

>秀作「ラスト・シューティスト」

これも未見。一度見たいです。リチャード・ブーンも出てるんですよね?

>Life goes on です

その通りです。生きてるとつらい事が多いです。
オカピー
2020年03月16日 21:08
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「マックQ」「ブラニガン」
映画業界が西部劇に行き詰ってこうした刑事映画に活路を見出そうとしたのでしょうね。保守的なデュークは、やはりニューシネマ的な「ダーティハリー」の柄ではないです。

>「ラスト・シューティスト」
それほど観るのに難しい作品でもないでしょうから、チャンスを探し出してみてください。
 当時ガンと戦うデュークがガンと闘うガンマン役で出演するとは! 西部劇ファンなら涙なしに観られない。
蟷螂の斧
2020年03月18日 20:06
こんばんは。
先ほどジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演「三人の名付親」(1948年)を見ました。見応えがありました。双葉先生の採点は75点。

>当時ガンと戦うデュークがガンと闘うガンマン役で出演するとは! 

ファンに伝えたい事が色々あったのでしょうか?
オカピー
2020年03月19日 20:34
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「三人の名付親」
ピーター・B・カインの小説の何度目かの映画化ですね。3回くらい観ていると思います。
 聖書の東方の三博士をベースにした物語なので、西洋人にはもっとピンと来るのでしょう。

>ファンに伝えたい事が色々あったのでしょうか?
Wikipediaによると、製作時にはガンは一通り治っていたらしいです。その後再発して亡くなった。
 しかし、闘病の記憶が生々しい中での撮影であることを考えると、一種の自伝映画という気持ちがあって主人公を演じたような気がしますね。
蟷螂の斧
2020年03月20日 01:32
こんばんは。

>聖書の東方の三博士をベースにした物語

なるほど。聖書を知らないと理解できない映画があると言うのは本当ですね。

>製作時にはガンは一通り治っていた

そうだったんですか。

>闘病の記憶が生々しい中での撮影

役者としての引き際、人生の引き際を考えていたのでしょう。

閑話休題。
マイケル・クライトン監督、ショーン・コネリーとドナルド・サザーランドが共演した「大列車強盗」を見ました。ネットで調べると、あまり評価は高くないようですが、僕自身は楽しんで見る事が出来る映画でした。
オカピー
2020年03月20日 22:44
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>聖書を知らないと理解できない映画があると言うのは本当ですね。

聖書だけでなく、キリスト教の考えを知らないと、真価が理解できない作品はいっぱいありますね。
 例えば、ウッディー・アレンの「教授のおかしな妄想殺人」なんてのは、キリスト教と哲学の長い期間の敵対関係を知らないと面白くも何ともない作品と思います。

>「大列車強盗」を見ました。ネットで調べると、
>あまり評価は高くないようですが、
>僕自身は楽しんで見る事が出来る映画でした。

申し訳ないですが、凡作ですね(笑)。しかし、憎めない作品でした。
 僕にとっての「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」。ホームズのパスティーシュで、映画史的には全く重要ではなく、IMDbの評価も大して良くないですが、大好きな作品です。
蟷螂の斧
2020年03月21日 06:54
おはようございます。

>申し訳ないですが、凡作ですね(笑)。しかし、憎めない作品でした。

双葉先生の採点は60点でした。列車の上での危険な撮影。ジョン・グレン監督「007オクトパシー」で同じような場面がありますね。
同じ邦題でバート・ケネディ監督、ジョン・ウェイン主演の「The train robbers」は未見ですが、評価が高いんですよね?一度見たいです。

>キリスト教と哲学の長い期間の敵対関係

勉強不足の僕にはまだまだです。

また別の話になります。すみません・・・(汗)。
最近「木枯し紋次郎」(中村敦夫が主演)もよく見ます。関八州廻りとか三国街道だとか勉強になる事が多いです。そして座頭市ほど切れ味が良くない殺陣も真実味があっていいなあと思います。
オカピー
2020年03月21日 20:48
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>列車の上での危険な撮影。
と言えば、くだんの「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」にも機関車上でのチャンバラがありました。こういうのは大好き。機関車だからムードもありますし。

>同じ邦題でバート・ケネディ監督、ジョン・ウェイン主演
映画史上最初の西部劇も「大列車強盗」でした。
 ケネディは実に優秀な脚本家であり、面白いお話をたくさん拵え、これも面白い作品でした(詳細は忘れましたが)。監督としてもなかなかだったでしょう。

>最近「木枯し紋次郎」
真面目に観てもいなかったし、色々と語れるほど詳しくないですが、一応わが上州のお話ですね。うちには「木枯し紋次郎」ののれんがあります。二階にあがる階段のところにつるしてあります。

>座頭市ほど切れ味が良くない殺陣
勝新が格好良すぎるんです(笑)。確かに格好良すぎないほうが本当らしい。