映画評「女囚701号/さそり」

☆(2点/10点満点中)
1972年日本映画 監督・伊藤俊也
ネタバレあり

クテンティン・タランティーノが好きと言う日本映画は「吸血鬼ゴケミドロ」と言い、本作と言い、お話として成立していないものが多い。昔シリーズのうち一本観たが、通して見たらそれは一番まっとうな第4作と確認できた。

麻薬捜査の刑事・夏八木勲に騙されて囮捜査で逮捕された女囚701号こと梶芽衣子(役名松島ナミ)が脱獄に失敗、看守からひどい目に遭うだけでなく、その為に一蓮托生の罰を食らった女囚特に班長グループ(ベテラン三原葉子など)から徹底的にいびられる。
 そこへ夏八木が、協力者たるやくざのボス伊達三郎と相談し、自分にとって不利な証言者となり得る芽衣子嬢を始末すべく班長グループの一人・横山リエに務所内での暗殺を命じる。

というお話だが、ここがお話の成立していないところである。治外法権とばかりに看守がリンチのし放題で事あるごとに銃をぶっぱなし、班長グループの女囚へのひどい虐待にも目をつぶっている状態で暗殺などする必要もないではないか。人間狩りの対象にしているように女囚を日常的にいびっている彼らが女囚を殺したところでこの映画の世界では何の問題もなくもみ消せるであろう。第4作で刑事がその旨を話している。わざわざ一人の女囚にやらせる必要などないのである。
 とにかく、十分に一度は裸の出て来る事実上のSMポルノ映画として成立させる為に看守や女囚の暴力三昧を繰り出すのに夢中で、お話が破綻してしまった。そこを大人しめに見せておけば、殺し屋としての横山リエの存在価値が増すのにも関わらず・・・。

お話は本物らしくなくても良いが、本当らしくなくてはならぬ。この違いが解りますか。

しかし、刑務所が火事になってその隙に抜け出した芽衣子嬢が次々と自分を罠に嵌めた連中を殺すのを矢継ぎ早に見せる終盤は見応えがある。何故か夏八木の時だけが余り凄腕に見えないのは弱点だが。彼女のシルエットも劇画的(原作は篠原とおる)で格好が良い。タランティーノはこれに惚れたのかもしれない。

伊藤俊也の監督デビュー作で、序盤に鈴木清純を彷彿とするシンプルなセットにおけるカラフルなラブシーン(但し使われている色は赤ではなく青)を見せていて、三原葉子の顔が鬼のようになったり、色彩設計を含めて彼の演出は少なくともお話よりずっと面白い。

この作品の最高傑作はミリオンセラーになった主題歌「怨み節」ですな。同じ年に「仮面ライダー」の主題歌を書くと思えばこんな曲も書く菊池俊輔は才人。どちらも良く憶えている。

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この記事へのコメント

2019年12月09日 22:24
これは中学生当時、毎月、父親がもらってくる映画の株主招待券を使ってリアルタイムで観ていますね・・。

東映ピンキー路線の真っただ中に作られた作品で、仰る通り、10分に1回裸が出てくる映画でして、制作側は同年公開の「旅の重さ」で、旅一座の女優を演じていた横山リエの僕はファン(笑)。
彼女は、秀作「遠雷」でも、ジョニー大倉と駆落ちする団地の主婦役を好演していました。
オカピー
2019年12月10日 18:17
浅野佑都さん、こんにちは。

ハンドルネームが洩れていましたが、解りました^^

>これは中学生当時、毎月、父親がもらってくる映画の株主招待券を
>使ってリアルタイムで観ていますね・・。

今ならR-15でしょうね。
 僕らの若い頃は、成人映画か非成人映画しかありませんでしたから、こんなのも無条件で観られた。良い時代でした^^


>同年公開の「旅の重さ」で、旅一座の女優を演じていた
>横山リエの僕はファン(笑)。

70年代は邦画を余り見なかったので、これはTVで観て良い映画と思いました。もう一度観ておきたい作品の一つ。
 横山リエは癖のある役をうまくこなした女優ですね。僕は大島渚がゴダールを気取ったような「新宿泥棒日記」の彼女が実に面白いと思いました。


>秀作「遠雷」

これももう一度観たい。
 NHK-BSも週に20本も放映した時ならこういうのも出せたのだろうけど、今は週6本。全くやる気がなくて、がっかり。
浅野佑都
2019年12月11日 21:17
 僕はいつも、コメントを書いてから最後に自分のハンドルネームを打って送信するのですが、上記のコメントは、昔のポスターなどを引っ張り出して、記憶を呼び覚ましながら書こうと思っていて、いつのまにか送信していたようです。
おかげで、全く文章の体を成していないのによく僕のコメントだとお分かりに・・(笑)

この女囚さそりシリーズは、ビックコミックに連載されていた原作漫画自体も相当に〝変”でして、裸とSM趣味が売りの”俗な”漫画だったと思います。

それに息を吹き込んだのが、”全身黒ずくめで全く喋らずに、淡々と復讐を遂げるというスタイリッシュな女殺し屋像を打ち出した梶芽衣子でしょうね・・。

日活で、吉永小百合や和泉雅子らに遅れてきた青春物のヒロインだった彼女が、東映にきてこの作品でブレイク。
梶芽衣子は全く僕のタイプではないですが、タランティーノならずとも、「怨み節」をバックに出刃を構える彼女には痺れるのも頷けますね!
先輩ヒロインの藤純子や、大映の江波杏子の作品も多く見ましたが、歌はダントツに梶芽衣子でしょうね!

彼女だけでなく、銀幕のスターの貫禄十分の三原葉子は、登場するだけで何か怪しい雰囲気ですし、元関脇鞍馬夫人の渡辺やよいは可憐な女囚(笑)という感じで各々、バラエティに富んだ囚人たちも魅力的なんですね。

上のコメントでも触れた横山リエは、好きが高じて、彼女が新宿で経営しているバー「GOD」まで一人で飲みに行ったことが・・。
とても気さくな方でして、手作りのカルパッチョを肴に映画談義に花が咲きました(僕はあまり飲める方ではありませんが、彼女が上手くお相手をしてくれた思い出があります・・)
「遠雷」を観て店に訪れる映画ファンがちょくちょく来る、と言っていたのでやはり物好きはどこにでもいるようですね(笑)
オカピー
2019年12月12日 21:29
浅野佑都さん、こんにちは。

前のコメントにレスする前に新しいコメントが^^;

>コメントを書いてから最後に自分のハンドルネームを打って送信
コメント欄は、ウェブリが刷新された際に改悪され、ネームなしでも送信されてしまうので、今のところはハンドルネームを先にされたほうが良いような。

>スタイリッシュな女殺し屋像を打ち出した梶芽衣子
俗悪至極な部分を別にすれば、30年早かった内容ですね。フェミニズムの影響で、今ハリウッドで強いのは女ですからね。

>吉永小百合や和泉雅子らに遅れてきた青春物のヒロインだった彼女
芸名が、太田雅子でした。

>歌はダントツに梶芽衣子でしょうね!
異議なし!

>横山リエ
>彼女が新宿で経営しているバー「GOD」まで一人で飲みに行った
いや、大したものです。そこまでやれば本物のファンです。