映画評「バハールの涙」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2018年フランス=ベルギー=ジョージア=スイス合作映画 監督エヴァ・ユッソン
ネタバレあり

2018年にノーベル平和賞を受賞したナーディーヤ・ムラード女史の経験を参考にしているのではないかと思われるフィクションである。しかし、18世紀の劇作家レッシングが言ったように、ドラマ系においてフィクションは誰も知らない実話と考えることできる。

ISに誘拐されて性奴隷にされたクルド人の女性弁護士バハール(ゴルシフテ・ファラハニ)は、TVで見た恩師でもある政治活動家にスマートフォンで連絡を取り、隙を見て家を抜け出す。

この映画はその後の現在が中心だから彼女が逃亡に成功したことは解っているにもかかわらず、なかなか緊迫感のある脱出場面となっている。一緒に逃げる仲間に臨月の妊婦を用意したことがサスペンスを盛り立てるのである。

逃亡に成功した彼女は、ISの戦闘員訓練所にいる息子を奪還すべく女性軍隊を指揮するようになり、捕えたIS戦闘員を使って敵指令室に辿り着いて攻撃、やがて息子のいる学校へ向かう。

というのが主軸となるお話で、彼女たちの活動を目撃するのがフランス人女性ジャーナリストのマチルド(エマニュエル・ベルコ)。彼女を狂言回しに展開する形式だが、過去と現在への往来が呼吸よく行われていず、解りにくい。服装その他が明らかに違うので混乱することはないものの、映画なのだから気持ちよくシフトしてほしいものである。

それ以外は映画的に不足はなく見応え十分で、一種の戦争を描きつつ、また、戦争映画に匹敵するようなサスペンスがありながらも、戦争映画と言うのは適当ではないような気がする。やはりこれは究極の女性映画なのだと思う。フェミニストは女性映画という言い方を嫌うが、男性に支配されている社会の女性を描くのにこれほど適した言葉はないのではないか?

他宗教圏の発展ぶりを考えると、イスラム圏の人は早めに女性を解放したほうが彼らの発展の為になると僕は信じているのだが、なかなかそうならない。

クルド人の指揮官が自爆者を“カミカゼ”と言っていた。イスラム原理主義者と違って日本の特攻隊員は喜んで死んでいったわけではないのだが。

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