映画評「女囚さそり 701号怨み節」

☆☆★(5点/10点満点中)
1973年日本映画 監督・長谷部安春
ネタバレあり

梶芽衣子主演としてはシリーズ最終作である。シリーズ中一本だけ観たことがあると記憶していたのはこの作品だった。

またまた警察に捕えられたさそりこと松島ナミ(梶芽衣子)が護送中に警官の油断をついて早業で襲い、逃亡する。彼女を痛めつけることを業務上の目的としている警部・細川俊之はほぞを噛んで悔しがる。
 逃げたさそりに援助の手を差し伸べるのは、元過激派で今はヌードスタジオの照明係を務めている田村正和で、暫く行動を共にするが、警察の拷問で足を悪くしている彼は逃げるのに遅れて逮捕、青森の母親を呼ばれてさそりの居場所を明かしてしまう。
 かくしてさそりは再度逮捕され刑務所に送られて、死刑の日が遂に訪れる。ところが、執行直前に人権派の看守長・森秋子が逃亡の手助けをする。が、これはさそりの行動が原因で妊娠中の妻を失った細川警部の策略で、彼女が潜んでいる車を自分で拵えた死刑台まで運ぶのである。

映画がやっとさそりに追いついた。何のことかって? つまり、ナミ(並み)になったということである。お解りですかな(笑)。
 僕のように映画としてきっちりと作られているかお話として成立しているかどうかを評価の基準とするタイプは、監督ににっかつ反権力青春映画で実績のある長谷部安春を起用してSMポルノ色をほぼ一掃したこの第4作に至ってやっとまともなものが観られたという思いがするのである。ところが、劣情を刺激するSM的バイオレンスを求める世間とは評価が反比例する。さそり或いは梶芽衣子の格好良さは別にして、第1作第2作は愚劣としか言いようがないのだが、そういうのが喜ばれるのだから、悲しくなる。

それはともかく、挫折しか待っていない反権力青年を出して来るのがいかにも長谷部監督らしい。終盤の青年の切ない扱いも彼らしい。
 反面、これまでの3作に比べると、警部側にも同情の余地がある。結果的とは言え妻を殺されれば怒るであろうし、少々お気の毒の気がしないでもない。その思いを払拭させるのが狙いだろうか、看守長暴行の場面がある。それまでのタッチを考えればやりすぎの描写と思うが、東映上層部がシリーズ・ファンの為に必要なんだと強要したのではないかという気さえする。

私的復讐の応酬というお話でした。因みに、日本の死刑囚は刑務所には入れられない。

主題歌「怨み節」は藤圭子にも似合う曲だが、実際カバーもしていた。YouTubeに音源がありました。

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この記事へのコメント

浅野佑都
2019年12月12日 21:13
>第1作と第2作は愚劣

無意味かつ悪趣味な拷問は、グロテスクさと滑稽さの入り混じった不快感すら感じさせます・・。

が、凌辱と恥辱にまみれ、復讐に幽鬼の炎を燃やすヒロインが、凄惨な手法で次々と男たちを狩るところにカタルシスを感じる観客が多く、この作品はバイオレンスにおいて劣るゆえに(僕は、十分この監督のバイオレンスさを出してると思うのですが・・)不人気になったんですよねぇ・・。

もともと、京都の伝統ある時代劇と比べて、仮面ライダーなどのテレビの30分物のヒーロードラマよろしく低予算で素早く上げる、東映東京スタジオですからね!

第一弾は制作サイドも、内心やりすぎでは?とビクビクしていたのに蓋を開けてみれば5億円近い当時としては大当たり(笑)
東映社長の岡田茂の、「あれは、ライト線ギリギリの二塁打」というコメントに本音が表れているようです・。

>にっかつ反権力青春映画で実績のある長谷部安春を起用

梶芽衣子にとっては「野良猫ロック」で気心も知れた監督ですね・・。
73年という時代は、過激派崩れが実際に跋扈していましたし、自衛官殺害など映画になっている事件も多かったですね・・。

地下道に始まってラストも地下道で終わる・・シリーズ最高傑作(笑)じゃないでしょうかね!



オカピー
2019年12月12日 22:29
浅野佑都さん、こんにちは。

>この作品はバイオレンスにおいて劣るゆえに
女性に対する暴力や、肉体損壊という意味ではそうですね。
しかし、最後の死刑台の場面なんか僕は非常に好きですが。

>東映社長の岡田茂の、「あれは、ライト線ギリギリの二塁打」
そんなことを仰っていますか。
僕が好んで使ってきた表現ですが、先輩がいたんですねえ^^

>梶芽衣子にとっては「野良猫ロック」で気心も知れた監督ですね・・。
あのシリーズは良かった。素晴らしい秀作ではないものの、あの時代にしか生まれないような、甘酸っぱい作品群でしたね。