映画評「十年 Ten Years Japan」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・早川千絵、木下雄介、津野愛、藤村明世、石川慶
ネタバレあり

5人の若手作家に十年後の日本をテーマに作らせたオムニバス映画。結果的にディストピア映画になっている。

総合監修が是枝裕和となっているが、高齢化社会の怖い未来を扱う第一話「PLAN75」では開巻早々初期の是枝作品みたいに素人ではないかと思わせる老婦人が出て来る。
 主人公(川口覚)は低所得者の老人を体よく早くこの世からおサラバさせるプロジェクトに実施している役人である。実態を知っているので姉が認知症の母親を入所させるのに賛成しないのだ。
 僕は尊厳死・安楽死の法整備が必要と思うが、本人・家族・医師が合意しない限りは認められない。この映画の場合は全くダメだ。監督は早川千絵。

二話目は木下雄介という人の「いたずら同盟」。子供の頭に変な装置を取り付けて行状・思想・感情をコントロールする。
 昨年【道徳】が教科化されたことが発想の元に違いない。政府が多様化を訴えつつ“人間は、日本人はこうあるべきだ”と型にはめようとするのは矛盾だろう。最初から多様化など口先だけだろうけど。全体主義化は最終的に国を弱体化させるので、我が国においてこれ以上進むのは勘弁して貰いたい。映画としては自由になった馬が滑走する場面が美しい。

第三話は「DATA」。監督は津野愛。亡くなった人の生前スマホ等に残された通信データを観る権利が遺族に与えられた社会のお話。母親がある男性と通信していたことが解り、父親(田中哲司)と娘(杉咲花)が話し合うのが微笑ましい。
 5作の中で一番明朗なお話で、一種アクセントとなっている。因みに父親がスープを作っている時に歌っていたのは荒井由実の「CHINESE SOUP」でござるよ。

虫が生きていられないほど地上が汚染された為に人々が地下で暮らしている第四話「その空気は見えない」は、藤村明世の監督作品。母親(池脇千鶴)の過保護を振り切って少女(三田りりや)が地上を目指す。
 彼女が最後に見る空の青さが非常に印象的だが、ディストピアぶりは型にはまり過ぎているだろう。第一話くらいのほうが現実的で身に沁みる。

最後は安倍首相批判の「美しい国」。戦争が始まり、徴兵制が復活した世界のお話だが、道徳を教科化するより徴兵制復活の方が良いのではないかと思うので、石川慶という監督の危機感は半分だけ理解できる。
 戦争は問題だが、民主主義下で戦争をしていない状態での徴兵制はさほど問題ではない。民主主義下の徴兵制では子供を預けている親が反対するので、戦争の抑止になる可能性が高いからである。可能性の話だから戦争にならないとは言えないが、学校などとは違う不自由な社会を短期間味わうのは若い人に良い勉強になるのではないか。但し、国を全体主義化させてはこの考えは成立しない。
 この映画は、徴兵制のポスターを張っていた若者が徴兵に応じて姿が見えなくなる陰鬱で終わる。尤もこれからの戦争は戦場に行かない人も多くなるはずなので、様相が違ってくるはずだが。

といった次第で、全体的に、短すぎるので舌足らずの印象を残す作品が多いことと、ディストピアすぎるのが気になるが、若い人が色々と考えているのを知るのは悪くない。

ユーミンは荒井由実時代が良い。女心の表現では松任谷由実のほうが凄味があるかもしれないが。

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