映画評「アンダー・ザ・シルバーレイク」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年アメリカ映画 監督デーヴィッド・ロバート・ミッチェル
ネタバレあり

古い映画を知っていれば少しは楽しめるかもしれない、異色ミステリーである。監督はデーヴィッド・ロバート・ミッチェルと言い、「イット・フォローズ」という前作のホラー映画が評判を呼んだらしいが、僕は観ていない。

現在、ロサンゼルスはシルバーレイク地区。
 映画か音楽関係の仕事でもやろうかと思っているが定職につかずにフーゾク嬢は呼ぶ金はあっても家賃を払わないので立ち退きを迫られている青年アンドリュー・ガーフィールドが、眼下にある家に妙齢美人ライリー・キーオを発見し接近する。もっと懇ろになろうと思ったところ翌日家は既にもぬけの殻となっていて部屋には変な記号だけが残されている。
 行方知れずになっていた大富豪の死体発見のニュースで彼女のものと思われる高級マフラーの遺品を発見、がっかりすると同時に、事件の真実について解明してやろうと、巷に散りばめられていると教えられた暗号や記号を懸命に解くうちに謎のシェルターに行き着く。

というお話で、この後も色々あるが、要は探偵も一人称の語りも出て来ないハードボイルド映画の如し。女性たちが賑やかに関わってくる辺りもハードボイルド映画を踏襲している。

舞台も私立探偵フィリップ・マーロウでお馴染みロサンゼルスで、具体的にはロバート・アルトマン監督のマーロウもの「ロング・グッドバイ」(1973年)のパロディーと思って間違いない。あちらでも行方不明の男を探すマーロウが向かいの家にヌードでヨガをしている美人たちを見出したり、犬や猫が絡んで来たり、映画ネタが繰り出されるわけで、ミッチェル監督はこれらを相当意識している。

しかし、物語の整合性を考えるのは余り意味がないと思う。この映画は冒頭に主人公の母親を使って、現実か幻想か判断が難しいと言われたサイレント末期の古典「第七天国」(1927年)を何度も出して来ることから考えても、最初から半ばこのお話は彼の幻覚と言っているようなものだからである。「第七天国」ネタは満載で、例えば、昏睡から目覚めたら、何故か「第七天国」の主演女優ジャネット・ゲイナーのお墓の前にいる。行方不明になる富豪の名前がSeventh(第七)ならぬSevenceで、韻を踏んで映画全体に共鳴させているのも面白い。

ところで、ベートーヴェンからポップス、ロックの傑作まで書いてきたと自称するソングライターは神である。主人公が神たる彼を殺したり、雑誌から新聞、看板、ポスター、ニュースあらゆるところにサブリミナルな暗号が忍ばせられていると疑心暗鬼になったりするのは、一種の現代文明論と考えてよろし。
 といった具合に、色々な要素を詰め込んだごった煮のような内容につき、知識を駆使する必要はあるが理屈で考えず、直観(直感とはちと違う)的に理解するほかあるまい。

「第七天国」はどこかにビデオがあると思うが、またも見つからない。

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