映画評「座頭市二段斬り」

☆☆★(5点/10点満点中)
1965年日本映画 監督・井上昭
ネタバレあり

かなり前にシリーズを断続的に観ていたが、今月は長い映画ばかりで疲れたので、短くかつ娯楽性の高いこのシリーズを暫くぶりに。第10作。

昔縁のあった土地に近づいた座頭市(勝新太郎)が橋を超えて按摩の師匠に会おうとするが、偶然出会った知人から、師匠は死に、娘のお小夜(坪内ミキ子)は女郎屋に売られたと知らされる。
 復讐とお小夜救出の為に女郎屋に入る市。主人は辰五郎(澤村宗之助)で、その彼と手を組んで好き勝手やっているのが郡代の磯田(春本富士夫)と判って来る。
 市は一味のもう一つの仕事である賭場で壺振りをしている伝六(三木のり平)と知り合い、敵ながら11歳の娘お鶴(小林幸子)を可愛がる人の良い彼を気に入るが、一味の用心棒・門倉(加藤武)には付け狙われ、遂に決闘を申し込まれる。馬に乗って襲いかかられて倒れた市は、しかし、難なく相手を倒す。
 辰五郎は伝六に"市の仕込み杖を奪ってこない限りお鶴を置いて、出て行って貰う”(主旨)と告げる。お鶴は意味も解らずに父親と離れたくないばかりに、市の仕込み杖を奪う。彼は気づかない振りをして盗ませ、後で父親の許に寄って取り返し、これにより二人の仲は却って強固になる。
 市は一味の子分たちや捕り手たちに追われる中、先回りをして辰五郎と磯田を追い詰め、女郎たちを解放する。

例によってコンパクトな作りだから退屈する暇はないが、旧作と色々似た配置と図式につき、積極的な意味においてそう面白いわけではない。脚本は例によって犬塚稔。案外そそっかしい人で、この作品では、仕込み杖を取られた市が取り返す為におでん屋のなりすまして伝六を待っている設定がある。伝六が訪れる保証もないのにである。余り重要な場面ではないから笑って済ませられるが。

終盤その伝六に扮する三木のり平にユーモアを通り越してギャグを繰り出させているのは良くない。全くトーンが崩れてしまう。

勝新太郎の素早すぎる殺陣にしても、いつも素晴らしいので本作を取り立てて凄いと褒めるわけにも行かず、得点源とは言いかねる。

監督は井上昭で、シリーズ初登場。三隈研次ばりに、画面の端に人物を置くなど画面の構図に良いところが少なくないものの、肩掛けカメラか何か解らないが、画面が揺れて落ち着かない感じを与える箇所があるのは、こういう様式的な構図で見せた方が面白い作品ではマイナス。昨日の「墓石と決闘」の堂々たるカメラとは好対照だ。

子役時代の小林幸子を見るのは本作で二度目。「ある殺し屋」(1967年)の時より2歳若くまだ11歳。歌手として上京した直後で勿論歌を歌う場面がある。

小林幸子はすぐに解った。顔はまだ丸いが、特徴的な眼は変わっていないのだ。

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この記事へのコメント

モカ
2019年11月26日 15:00
こんにちは。

「座頭市」って映画でしたか~ テレビでしょっちゅう観ていたので映画とは認識していなかったかもです。

昔読んだ子母澤寛の「ふところ手帖」に座頭市が入っていて、余りにもあっさりした短編なのに驚きました。

これはデュ・モーリエの「鳥」をヒッチコックが自家薬籠中状態にしたのと同じケースですね。 
いいところに目を付けたもん勝ちというやつです。
「座頭市」も「鳥」も30ページあるかないかだったと思います。
 その後意識してテレビを見ていると、毎回必ず「原作 子母澤寛」になってるんですよ。 そんなん有りですか?(笑)
あっ、という事はやっぱりテレビドラマにもなってましたよね?

なんだかデビッド・ジャンセンの「逃亡者」と「座頭市」が遠い記憶のなかで重なります。
エンドレスに放浪している感じ?
そういえば、「カムイ伝」とか「カムイ外伝」とかもよく似た匂いがします。
時代の匂いでしょうか。アナーキーな匂い?(笑)

   
オカピー
2019年11月26日 21:18
モカさん、こんにちは。

>「座頭市」って映画でしたか~ テレビでしょっちゅう観ていたので

映画でした^^
 TV版もあり、たまたまさっき偶然TVを付けた瞬間にBSフジでTV版を放送し貯りました。面白いなあ。


>余りにもあっさりした短編なのに驚きました。

そうそう、僕も映画がたくさんあるので、小説も「眠狂四郎」と同じように色々あるのかと思って調べたら、短編しか出て来ないという、肩透かしをくらった経験があります。


>毎回必ず「原作 子母澤寛」になってるんですよ。

映画でも毎回なっています。全然書いていないのに(笑)


>デビッド・ジャンセンの「逃亡者」「カムイ伝」「カムイ外伝」
>時代の匂いでしょうか。アナーキーな匂い?(笑)

アナーキーですし、「カムイ外伝」などはニヒリズムもありますね。TV版「カムイ外伝」は再放送で観て気に入りましたなあ。
モカ
2019年11月27日 14:07
こんにちは。

勝新で思い出しましたが、「悪名」も映画はシリーズ化してましたけど、今東光の原作は1冊だけみたいですね。
この頃は映画が当たったら「名義貸し」が当たり前だったんでしょうね。

私、「座頭市」より「悪名」の方が好きです。
なんせ田宮二郎が出てますからね! 
白衣着て鬱陶しい顔してるのより軽妙洒脱なこっちの方がええわぁ~。


そう、抜けてからの外伝のカムイはさらにニヒルになってカッコよかったです。
外伝は2、30巻くらい読みました。
(これも物置に保存されていましたが、保存状態が悪かったので救出は断念しました・・・蜘蛛のミイラがのってました・・)

カムイ外伝は放浪する?ハンセン病の人達が描かれていましたが、あれは当時としては画期的な事だったのかもしれませんね。



オカピー
2019年11月27日 21:49
モカさん、こんにちは。

>「悪名」も映画はシリーズ化してましたけど、
>今東光の原作は1冊だけみたいですね。
>「名義貸し」

そのようですね。
「007」もロジャー・ムーア辺りまでは一応原作がありましたが、それ以降は「カジノ・ロワイヤル」を別にして映画の創作です。ムーアの時代にしても大半が短編を膨らませた半創作。


>なんせ田宮二郎が出てますからね! 
>白衣着て鬱陶しい顔してるのより軽妙洒脱なこっちの方がええわぁ~。

寂しい最期を遂げたのが残念でした。


>外伝は2、30巻くらい読みました。

ほーっ。僕はアニメ版だけですが、あれは素晴らしかった。


>カムイ外伝は放浪する?ハンセン病の人達が描かれていましたが、
>あれは当時としては画期的な事だったのかもしれませんね。

出てきましたね。漫画は時々とてつもないことをします。凄いことですねえ。
モカ
2019年12月02日 14:34
こんにちは。

トラフィックは未だ出てきませんが「ふところ手帖」が出てきました。
なんと「座頭市物語」はたった10ページの物語でした。
昔の文庫なので字が小さい。
こんなのを裸眼で読んでいたなんて!(視力1.5だったのが0.1になりました)
とりあえず、眼鏡+拡大鏡で読んでみましたが、昔読んだ時はあまりにもあっさりした短編なのに驚いて見過ごしていましたが、実在のモデルがいそうですね。
○蔵が安政〇年に死んだ、というようなくだりがありまして、
ネットで検索すると、座頭市の墓の写真が出てきました。 
真偽のほどは定かではありませんが面白い!
オカピー
2019年12月02日 20:51
モカさん、こんにちは。

>ふところ手帖」が出てきました。
それは良かった。
僕の「エクソシスト」も出て来るよう祈って下さいませ(笑)

>昔の文庫なので字が小さい。
そうなんですよ。
図書館で古い文庫本を借りると、瞬間的に呆然となりますよね。
蟷螂の斧
2019年12月15日 15:33
こんにちは。

>「ある殺し屋」(1967年)の時より2歳若くまだ11歳。

あの映画を見て「誰?これは。」と思ったら小林幸子。驚きました!

>特徴的な眼は変わっていないのだ。

「♪あの人 どうして いるのかしら」と歌う眼と同じです。

>坪内ミキ子

お嬢さん育ち。でも勝新や雷蔵の主演映画で色々な役を演じています。
オカピー
2019年12月15日 20:33
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>あの映画を見て「誰?これは。」と思ったら小林幸子。驚きました!
「男はつらいよ」で小林幸子役の小林幸子は観ていましたが、女優という意識が全くない時に観たので、僕もびっくりしました。まして子供でしたからね!
 寅さんの小林幸子はパラレル・ワールドの小林幸子で、全く売れていないという設定。この辺り面白かったな。

>坪内ミキコ
かの坪内逍遥の血筋ですよね。
蟷螂の斧
2019年12月16日 06:18
おはようございます。

>加藤武

悪役も上手く演じる人です。「よしっ!分かった!」の警部とは随分イメージが違います。

>おでん屋のなりすまして伝六を待っている設定

なるほど・・・(苦笑)。

>全く売れていないという設定。

それ、一度見たいです。

>かの坪内逍遥の血筋ですよね。

連想ゲームに出演していた時、やっぱり育ちや品の良さを感じさせました。
坪内ミキコさんにピッタリだった役は雷蔵主演「陽気な殿様」のお姫様役です。
オカピー
2019年12月16日 20:35
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>>加藤武
>悪役も上手く演じる人です。

確かに金田一シリーズの時とはイメージが違い、最初は誰か解りませんでした。声を聞いてもしやと思い、よく顔を見た結果確認できましたよ。


>>全く売れていないという設定。
>それ、一度見たいです。

どうも僕の記憶違いで、ちゃんとした役名がありました。
演歌歌手という設定だったので、パラレル・ワールドの小林幸子みたいだなあと思ったのが、そのまま“事実”に化けてしまったようです。小林幸子もどきであることは確かなので、面白いことは面白いのですが。
よく確かめないで書いたため、ご迷惑をおかけいたしました。


>坪内ミキコさんにピッタリだった役は雷蔵主演「陽気な殿様」のお姫様役

余り色々観て混乱していますが、僕は未見だと思います。雷蔵は好きなので、観ておきたいですね。
蟷螂の斧
2019年12月17日 05:22
おはようございます。

>加藤武

『隠し砦の三悪人』の冒頭部分で壮絶な死にざまを見せた落武者を演じたとか?

>よく確かめないで書いたため、ご迷惑をおかけいたしました。

いやいやとんでもないです。いつもレスをありがとうございます。

>雷蔵は好きなので、観ておきたいですね。

雷蔵はコミカルな映画も似合うんですよね。やっぱり凄い役者さんです。
「陽気な殿様」は森一生監督。坪内ミキ子が可愛いし、高田美和や宇津井健、天知茂も共演です。ぜひご覧下さい!
オカピー
2019年12月17日 22:15
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>『隠し砦の三悪人』の冒頭部分で壮絶な死にざまを見せた落武者
あれは加藤武だったですか。そう言えば、聞いたことがあるような気がします。

>雷蔵はコミカルな映画も似合うんですよね。
一見の価値がありそうですね。
時代劇の虚無的な雷蔵とは違うという意味で、三島由紀夫「金閣寺」を映画化した「炎上」での吃音の学生も非常に印象深い。必見です。
蟷螂の斧
2019年12月18日 17:23
こんばんは。

>「炎上」

あの映画も良かったです!吃音症の学生という翳のある人物を雷蔵が演じました。
内反足の障害を持つ孤独な戸刈(仲代達矢)との奇妙な友人関係。

>加藤武

『蜘蛛巣城』における都築警護の武士役も彼。
オカピー
2019年12月18日 21:49
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>>「炎上」
>内反足の障害を持つ孤独な戸刈(仲代達矢)との奇妙な友人関係。

所謂、同病相憐れむ関係というものですね。三島らしい設定と思います。

>加藤武
黒澤明は重用したわけですね。
僕は、70年代金田一シリーズで彼を認識しました。
蟷螂の斧
2019年12月19日 19:15
こんばんは。

「金閣寺」ではなく「驟閣寺」。難しい漢字です。僕ではとても覚える事も書く事も出来ません。金閣寺の住職からやめてほしいというクレームが入ったからですね。そういう名前をつけた理由は。

>所謂、同病相憐れむ関係というものですね。

三島に限らず、人はそう言う面を持っているのかも知れません。僕も同じです・・・。

>70年代金田一シリーズで彼を認識しました。

僕は「警部マクロード」の上司(吹き替え)からです(^^;

オカピー
2019年12月19日 22:19
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「金閣寺」ではなく「驟閣寺」。
>金閣寺の住職からやめてほしいというクレームが入ったからですね。

小説ではタイトルになっているんですがねえ。映画はタイトルどころか、中で出て来る寺の名前まで変えられているのが日本らしい。
 こういうことがあるから、日本の映画(小説でも多い)は、実名を避けたがる。それが日本映画を弱いものにする。悪しき習慣になってしまいましたね。


>僕は「警部マクロード」の上司(吹き替え)からです(^^;

な~るほど。
傑作「激突!」のデニス・ウィーヴァ―が主演というので少し見たことがある記憶があります。僕の場合は「マクロード」と言えばウィーヴァーとなりますね。
蟷螂の斧
2019年12月21日 06:59
おはようございます。

>中で出て来る寺の名前まで変えられているのが日本らしい。

高林陽一監督作品ではタイトルが「金閣寺」です。
溝口:篠田三郎、鶴川:柴俊夫の「シルバー仮面」兄弟コンビ。

>僕の場合は「マクロード」と言えばウィーヴァー

宍戸錠の声が合ってました。若い婦人警官に「気をつけて。お嬢さん。」なんて言う場面とか(笑)。

>澤村宗之助 (2代目)

弟は伊藤雄之助なんですねー!兄弟共に60歳で逝去・・・。
オカピー
2019年12月21日 19:51
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>高林陽一監督作品ではタイトルが「金閣寺」です。
文句を言った住職が亡くなったのかな?
それとも高林陽一監督の哲学か? 少なくとも原作がそれで通っている以上そこまで配慮する必要もないでしょうね。

>溝口:篠田三郎、鶴川:柴俊夫の「シルバー仮面」兄弟コンビ。
それは面白い。
まだTVドラマを辛うじて見ていた僕は、篠田三郎は結構好きでした。

>宍戸錠の声が合ってました。
宍戸錠でしたか。そんな気もするなあ。
「激突!」での吹き替えは確か穂積隆信でした。吹き替え版で3回くらいみているでしょうか。後は全て原語版ですが、友人曰く、台詞が少ないからそのままでも大丈夫!


>>澤村宗之助 (2代目)
>弟は伊藤雄之助なんですねー!兄弟共に60歳で逝去・・・。

歌舞伎役者の血を引いていましたか。知らなかったなあ。
蟷螂の斧
2019年12月22日 05:02
おはようございます。

>高林陽一監督の哲学か?

そうかも知れません。それに製作がATGだし。

>篠田三郎は結構好きでした。

知的でキチンとした二枚目役が多いです。でも「笑っていいとも!」に出演した時は結構ノンビリしていてチャランポランな人のようでした。友達とゴルフの約束をしたけど遅刻する事が多いとか(笑)。

>「激突!」での吹き替えは確か穂積隆信

あの映画で宍戸錠は合わないでしょう。徳光さんがアテた事もあるんですよね?

>郡代の磯田(春本富士夫)

そして錣山の代貸が伊達三郎。伊達さんは勝新や雷蔵映画の悪役として欠かせない人です!
オカピー
2019年12月22日 22:50
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>知的でキチンとした二枚目役が多いです。

そうですね。
大体僕は日本の男優では、知的な二枚目が好きです、どこか爽やかで。石坂浩二とか加藤剛とか。


>あの映画で宍戸錠は合わないでしょう。
>徳光さんがアテた事もあるんですよね?

宍戸錠ではタフガイすぎる^^
そう言えば、徳光バージョンもあったような気がしますね。


>伊達三郎

本当に悪役としてよく見ました。