映画評「マスカレード・ホテル」

☆☆★(5点/10点満点中)
2019年日本映画 監督・鈴木雅之
ネタバレあり

東野圭吾は図書館でも人気、映画界にも人気。映画としての完成度が余り高くないものが多いが、この度完成度に拘らず東野圭吾原作の映画を全部保存することにした。現在までのところ11本。もう一度観ても良いのは「容疑者Xの献身」くらいですがね。

同一犯と思われる連続殺人が起き、犯人が残した暗号によりホテル・コルテシア東京が次の犯行現場と推定され、木村拓哉の警部補ほかのメンバーがホテルマンの偽装をして潜入捜査することになる。フロント・スタッフの長澤まさみが、じっとしていられないタイプの警部補を指導、喧嘩友達よろしく色々と衝突しながらも互いの立場を認めていく。

というのが縦糸と言うべき軸のお話で、その間に様々な問題客が登場し、一種の群像劇の様相を示す。これが綾をなす以上横糸に当たるわけであるが、以下に述べるようにそれほど単純ではない。
 問題客にも色々ある中、高嶋政宏をめぐる疑惑はちょっとしたミステリー的アイデアで、木村警部補の刑事らしい推理力が生きている。老婦人をめぐるほのぼのとした挿話もある。こちらはまさみ嬢のフロント・スタッフとしての忍耐に感心させられることになる。

ところが、それだけでは映画にならない。どう見ても老婦人ではない老婦人が終盤再び現れることで一気にミステリー・サスペンスという本来の立場にお話が固定され、外部でひそかに活躍する刑事・小日向文世からの情報をヒントに、連続殺人の謎が解かれていく。つまり、横糸が横糸に組み込まれるわけで、映画の見せ方として一応の工夫と言いたくなる次第である。

単独犯による連続殺人かと思われたのが、一人のアイデアによる闇サイトを通じた別個の殺人と判明するところも、ネット時代らしいアイデアとして注目に値しよう。TVと違ってミステリー映画が余り見られない現在(最近少し増えつつあるか?)、観るべきとは言えないまでも観ても良いとは言える内容だ。

しかし、鈴木雅之という監督はカメラを色々と動かすわりに絵面が貧相で、映画としてはワクワクできない。

出来栄えとは別に気になることがあった。ホテル・スタッフの低姿勢は客商売として当たり前と言えば当たり前であるが、こうした“お客様は神様です”の精神がぐっと遍く敷衍して日本人をダメにしていると思うのである。ちょっとしたことでネットで叩かれるのもそういう土台ができている為に極端化するのである。サーヴィスをするほうにもお客と同じ権利がある。欧米の接客業の態度こそ本当の姿であると考えるが、お客様として接せられることに慣れた日本人は多分相手を不遜と思うのだろう。かくして、余りの低姿勢は客を、巡り巡って日本人全体を増長させるだけで、百害あって一利なし。
 芸能人の“自分は謙虚な人間です”という姿勢を表現する極端な言葉遣い(させて戴きます等)も実に良くない。おためごかしが見え透いている。

井上陽水「リバーサイドホテル」は風変わりだけれど名曲。レオン・ラッセルの曲でカーペンターズがカバーした「マスカレード」もアレンジが良くて聴き応えがあった。年寄は題名から色々思い出します。

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