映画評「007/ユア・アイズ・オンリー」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1981年イギリス映画 監督ジョン・グレン
ネタバレあり

シリーズ第12作で、ロジャー・ボンド第5作。前作が宇宙にまで飛び出してやりすぎた感を覚えたのか、恐らくプロデューサーたちが路線を原点に戻して作ろうとしたのだと思う。監督がジョン・グレンに代わったのはその一環で、監督が代わったから方向性が変わったのではあるまい。

イアン・フレミングの短編「読後償却すべし」を拡大映画化した作品である。

英国の監視船がギリシャ沖で機雷により沈没する。船にはミサイル誘導装置ATACが積載されている為、政府はギリシャの海洋考古学者に引き上げを依頼するが、娘キャロル・ブーケが久々に帰った途端に空から襲撃されて夫婦揃って殺されてしまう。ゴンザレスという実行犯を追ってスペインに赴いたボンド(ロジャー・ムーア)は敵に捕らえられそうになるピンチを迎えるが、両親の復讐を果たすべく同地にやって来たキャロルに助けられ、彼女の小型乗用車で隘路やカーブの多い山道を逃げ回る。

ゴンザレスを失ったボンドは彼に金を渡した眼鏡の男を追い、英国勲章も得ているギリシャ人ジュリアン・グローヴァ―の協力を得べくウィンター・スポーツを行っている山地(アルプス?)を訪れる。ここでもボンドは命を狙われる。
 本作のハイライトはここで、ジャンプ台を二人が並走した後、ボブスレーのコースをスキーで逃走し、それをバイクで追うなんてのはスタントマンを有効に使ったSFX時代ならではの見せ場で、大満足である。VFX時代の華美千万な見せ場に比べるとかなり地味に映るが、今となると却って新鮮に感じられなかなか良い。

グローヴァーの情報に基づきギリシャの麻薬王トポルに接近するが、トポルによればグローヴァ―こそソ連と内通している二重スパイであると告げ、サスペンスフルな沈没船の調査の後、トポルと協力して崖上にある彼の基地を急襲することになる。
 ここではロック・クライミングが見どころとなっていて、開巻直後宿敵プロフェルドにヘリコプターをコントロールされてしまうピンチを加えると、空・陸上・雪上・海中・山岳とさしづめボンド近代五種といったところ。

それぞれの見せ場を長丁場にしているのも特徴で、スキーでの逃走や海中場面など旧作群の焼き直しみたいなものが多いが、今の方が却って新鮮に観られるかもしれない。

旧作と言えば、本作は「女王陛下の007」(1969年)を土台にしている(=一種のオマージュを捧げている=同一製作者同一シリーズなのでオマージュと言うのも少し変なのだが)のだと思う。類似のスキー場面のあることは言うまでもなく、開巻早々かの作品において彼が結婚した唯一の妻テレサの墓参をし、彼女を殺したプロフェルドを始末し、最後に女王陛下ではないがサッチャーを模した首相を出しているからである。

開巻直後“空中”“落下”を通奏低音にしていた前作を引き継いでいる感もあり、この辺も面白い。

音楽は長年の貢献者ジョン・バリーに代わってビル・コンティ。従って主題歌の印象も少し違う。歌っているのは当時断然人気のあったシーナ・イーストンで、歌い手が画面に現れるのが実に珍しい。

近代五種と言えば五輪。アテネ、北京、リオと日本人は海外のオリンピック準備の進捗具体を色々揶揄してきたが、東京はそれに輪をかけたくらいにドタバタでみっともない。それはともかく、時間差のない地元だけにTVでは放送されないものを流すネットを含めて徹底的に堪能しようと思っている。オリンピックの楽しみは普段観られない競技が観られること。日本人が強いか、或いは日本人が出場しているか否かは全く関係ない。強い方が力が入るのは確かですがね。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス

この記事へのコメント

蟷螂の斧
2019年11月11日 21:02
こんばんは。

>監督がジョン・グレンに代わったのはその一環

原点を大事にする監督さんでしょうか?
5作を監督。ロジャー・ムーアよりも5歳年下。

>ジャンプ台を二人が並走した後、ボブスレーのコースをスキーで逃走し、それをバイクで追う

カッコいい場面でした!

>思ったような結果が出ましたか?

9ヶ月前のハーフマラソン。膝の痛みが酷くて出場前に辞退。悲しかったです。
だから今回はタイムは気にせずにゆっくりと走って完走出来ました。
謙虚な気持ちで、まさにマラソンを始めた頃の原点に戻って走りました。
オカピー
2019年11月12日 15:23
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>>ジョン・グレン
>原点を大事にする監督さんでしょうか?

僕の全く個人的な推測ですが、編集者出身ということで、作家性が薄いと見なして、製作者たちが指名したのではないでしょうか。良くも悪しくも脚本から逸脱することがない、若しくは少ない・・・はずと。

調べてみたら本作のベースとなったと思われる「女王陛下の007」は彼の編集でした。
多分、編集に関しては他の監督より口を挟んだかもしれませんね。
ロバート・ワイズのように編集者出身で一流の監督になった方もいます。


>カッコいい場面でした!

「女王陛下の007」の終盤場面を思い出しましたねえ。


>だから今回はタイムは気にせずにゆっくりと走って完走出来ました。
>謙虚な気持ちで、まさにマラソンを始めた頃の原点に戻って走りました。

それは良かったです。
“原点”に始まり、“原点”で締めるところがうまい!
蟷螂の斧
2019年11月13日 19:39
こんばんは。

>当時断然人気のあったシーナ・イーストン

田山力哉氏が『ヨーロッパ・ニューシネマ名作全史』で彼女の歌を褒めていました。

>彼女を殺したプロフェルドを始末し

巨大な煙突の中へ・・・してやったり!

>良くも悪しくも脚本から逸脱することがない、若しくは少ない・・・はずと。

製作者にとっては無難な選択だったんですね。

>“原点”に始まり、“原点”で締めるところがうまい!

ありがとうございます!初心忘れるべからず!
オカピー
2019年11月13日 21:40
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>>当時断然人気のあったシーナ・イーストン
>田山力哉氏が『ヨーロッパ・ニューシネマ名作全史』で彼女の歌を褒めて

僕も割合好きでしたが、意外に人気が長持ちしなかったなあ。


>製作者にとっては無難な選択だったんですね。

僕はそう思いますね。似たタイプのガイ・ハミルトンよりもっと堅実のように感じます。