映画評「ハード・コア」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・山下敦弘
ネタバレあり

狩撫麻礼というマンガ原作者による同名コミックをベテランになってきた山下敦弘が映像化したコメディー。

金城(首くくり栲象)という人物が率いる極右的な小団体に参加している権藤右近(山田孝之)は、彼を頼りにしてくる同志牛山(荒川良々)と共に、上官水沼(康すおん)の管理下で、群馬県にあるとされている埋蔵金を週に一度掘っている。金城はそれを資金に乱れた世の中を直す腹積もりである。
 牛山が寝泊まりしている廃研究所で壊れかけのロボットを発見する。落後者右近を見下している弟左近(佐藤健)はIT関連のエリート社員で、そのロボットがひどく先進的な技術による製造物と気づくと、上官には内緒に、右近らがロボオと名付けたロボットに金の在り処を探らせる。
 見事発見した左近は香港に換金に向った後、実は造反を企む水沼が金城を殺し、死体を入れたスーツケースを研究所にいる右近と牛山に預ける。そこへ彼らを左翼過激派と誤認した警察が現れると、ロボオは二人を抱えた空に飛び立ち、空中で最適化ならぬ最適解を遂げて空中分解する。

というお話で、極右というと暴力団のような荒っぽいイメージだが、要は古き良き日本を取り戻すという点で、実在する日本会議をさらに純化させたような存在らしい。右近も牛山も優秀な兄弟たちとのプレッシャーで潰れた形の落後者であると共に、間違ったことは間違っていると言う立場を崩せない純粋な人たちである。空気を読むことが社会を生きにくいものとし果ては悪くすると考える僕には彼らの考えがよく解る。
 そんな社会に無理に適しようとするから内的にはストレスが、外的には虐めが生じ、過激化する。尤も、誰もが他人に配慮せずに好きなように生きても社会はダメになるのであり、要は中間的に生きるのが最良なのであろう。但し、配慮(忖度)と“空気を読む”のは似て非なる概念であって混同してはならない。配慮と違って“空気を読む”のは他人の為に見えて実は自分の為、つまりはおためごかしである。特に芸人らがTVで言うそれが当てはまる。今世間で取り上げられる“忖度”も本来の配慮とは違う意味で使われていて、実際にはこれもおためごかし。

そうした“空気を読む”社会に適合できないのが二人や金城――或いは水沼の淫乱娘(石橋けい)も含まれるかもしれない――であり、この作品の社会観に従いこの世から消える定めである。しかし、二人はこの世からは消えず現日本社会から消えるに留まり、【完】の後に二人が南洋の島らしきところに生きていることが紹介される。
 映画としては、そのドラマツルギー上の是非が問題になるわけだが、僕はさほど問題ではないと考える。二人のいるところを南洋の島というよりタイムスリップした先史時代の日本と考えると、実にユーモラスで救われたような気になる。作者も敢えて観客にそうした“救われた”気分を与えようとしたのではないかと思う。

しかるに、このお話全体には馴染めない。作品として無視はできないものの、山下監督独自のオフビート感が、いかにも荒唐無稽なこの内容の為に強調され過ぎるのだ。寧ろ少し相殺してくれるくらいの物語のほうが彼には丁度良い。

現在の日本に閉塞感はあるか?

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