映画評「2重螺旋の恋人」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年フランス=ベルギー合作映画 監督フランソワ・オゾン
ネタバレあり

フランソワ・オゾンの新作は一種のミステリーである。

妙齢美人クロエ(マリーヌ・ヴァクト)が謎の腹痛の為に色々な病院で診てもらうが特段の異常はなく、精神的なものと言われる。そこで精神分析医ポール(ジェレミー・レニエ)を訪れる。通院するうち互いに好感を覚え、同棲を始める。
 しかし、引っ越しの当日、彼の荷物に興味を覚えてちょっと調べた結果、彼のパスポートが現在の名前と違うことに気付く。彼は父親の姓から母親の姓に変えたと説明する。
 ある時列車の窓から夫がいないはずの場所で女性と話しているのを見かける。夫が「別人だ」と言うので、現場へ行くと姓の違う双子の兄ルイ(レニエ二役)が同じく精神分析をしていると知り、受診と称して彼の許に通ってみる。内気なポールと対照的なルイは暴力的に彼女に迫り、クロエはルイを嫌いながらも避けるのが難しくなってくる。

このお話の最終目的がクロエの腹痛の原因を突き止めることにあるということが最後に解るのだが、ポールとルイの関係が一番興味をそそるところであろう。ポールとルイの同一人物の可能性を考えるのも面白い。

結論から言うと、クロエはルイの言う寄生性双生児を腫瘍として自分の体に宿していてそれが腹痛の原因であると判明するのである。この映画には、現実、完全な妄想(彼女が発砲する場面など)、現実とも取れる妄想の三種類の映像から構成されているのだが、この最後の部分は現実と考えられる。そうしないと収拾がつかなくなり、逆に面白味がなくなってしまう。

それでは、彼女が嫉妬を向ける、自力で動けないポールの元恋人サンドラ(ファニー・サージュ)は実在するのか? 実在しても良いのだが、その母親(ジャクリーン・ビセット)が自分の母親の顔を持ち、クロエが吸収した双子の名前がサンドラである?ことを考えると、彼女の妄想と考えたほうが落ち着く。
 それどころかルイの存在も幻想の可能性があるのだが、写真に二人映っていることを考えると実在すると考えられる。しかし精神分析医としてではないかもしれない。その場合映画の“現実”の中では出ていないことになる。

どこで彼女の幻想が始まったか考えることにより色々の可能性が出て来るものの、それについて正解はないのではないか。
 彼女の幻想が始まるのは(1)写真の双子とパスポートの名前を見た時(2)ポールとそっくりの男を列車から見た時(3)ルイのクリニックを訪れて高圧的な態度を取られた時・・・この三つが有力候補である。
 (1)(2)の場合に精神分析医としてのルイが存在しない可能性が強い。

とにかく、双子をキーワードに映画は随所に記号をちりばめる。双子だけに必然的に相似、対称、時に対照を狙いとする記号である。例えば、隣室の老夫人にも寝たきりの娘がいて、サンドラに通ずる。
 記号を解くのが好きな映画ファンには大いに受けそうな内容であり、最後の落ちが事実であれば些か散文的であるとは言え、事実と幻想の間を記号と共に彷徨わせるところが最大のお楽しみ。

映画のタイプとすれば、一昨日の「ノクターナル・アニマルズ」と同じグループに属しますな。

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この記事へのコメント

2020年02月22日 10:45
オゾン監督、いろいろな映画をつくるなあと感心します。
今回はホラー的にもなっていって。
しかし、精神分析医って、特殊な仕事ですね。映画でも重宝して(?)使えます。
オカピー
2020年02月22日 21:28
ボーさん、こんにちは。

>オゾン監督、いろいろな映画をつくるなあと感心します。
全く。初めて見た「ホームドラマ」は、タイトルに反する内容で、ブラック・コメディーでした。純文学も多いですが、純文学寄りのサスペンスにも面白いものが多いですよね。