映画評「上海特急」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1932年アメリカ映画 監督ジョゼフ・ヴォン・スタンバーグ
ネタバレあり

嘆きの天使」「モロッコ」「間諜X27]に続く、ジョゼフ・フォン・スタンバーグ監督=マレーネ・ディートリッヒ主演コンビ作第4弾。再鑑賞。

悪名高い白人美女マレーネ(役名上海リリー)の乗る北京発上海行きの汽車には様々な人々が乗り合わせ、白人たちの多くは彼女と中国美人アンナ・メイ・ウォングに蔑視の視線を投げつける。二人とも商売女だからである。その中には8年前に彼女と恋に落ちた英軍大尉クライヴ・ブルックもいる。
 やがて列車は乗客として乗り込んでいたウォーナー・オーランドの将軍率いる革命軍と称する軍閥に停められ、乗客たちは彼の取調を受けることになる。将軍の目的は逮捕された部下と交換できる重要人物の発掘である。ブルックは中国要人の手術に駆け付けるところであり、これに目を付ける。
 中国政府を絡めた交渉は巧く行ってブルックは解放されることになるが、将軍は以前屈辱的行為をした彼を無事解放するとは言っていないと言い出す。それを知ったマレーネは彼女に大いなる関心を抱いている将軍の情婦となると誓ってブルックを解放させる。
 結局、将軍がアンナに殺された為にマレーネも再び同乗の人となるが、大尉は彼女の気持ちが全く理解できない。さて、この後二人の関係はどうなっていくのか? 

ミステリーのない「オリエント急行殺人事件」みたいな、事実上の恋愛映画。列車内の口さがない人々はヒロインの日陰の女性としての立場を浮かび上がらせる為に登場、またサスペンスフルな場面は二人の気持ちのほどを試すためのお膳立てという具合である。お膳立てと言えば、前半から断続的に見せられるヒロインと神父との関係がお話の楔となって機能し、二人のロマンスそのものより面白いくらい。

最初のコンビ作三作に比べてお話の面白味・凄味が薄く、トータルの出来栄えは落ちるが、マレーネは相変わらず素敵だ。リー・ガームズを撮影監督とする画面は、瞬きをせずに動かされる大きな目や細かく動かされる手をこれ以上ない丁寧さで映し出す。徹底的に彼女に注力された映画なのだ。手だけで祈りを見せる場面はライティングの妙もあって感動的でさえある。

ハリウッドの東洋人の扱いがひどいという意見を目にしたが、当時の白人の多くは東洋人を馬鹿にしていたのだから、その事実を無視してハリウッドに目くじらを立てても仕方がない。
 実際この作品の立脚点は、白人対東洋人でなく、男性対女性にあると気付いて貰わなければ困る。繊細な女性に対して男性が鈍感すぎるという精神上の見せ方もあるが、具体的には中国人の女性が将軍を殺すことからそれが伺えましょう。

観ている最中より、こうして思い出しながら書いている今の方がこの作品の良さが見えて来る。

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