映画評「俺俺」

☆☆(4点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・三木聡
ネタバレあり

一人33役というのが面白そうなので観てみた。星野智幸の原作はともかく、映画は三木聡が監督なのでコメディーである。ホラーやサスペンスの要素はあるが、怖い場面も概ねコメディーと言って良い。

家電量販店で働くカメラマン志願・永野均(亀梨和也)が、レストランで偶然自分のトレイに置かれた携帯電話を出来心でそのまま持ち出し、オレオレ詐欺を働く。
 良心の呵責に苛まれて自宅に帰ると、見知らず中年女性(高橋惠子)がいる。話を聞くうちに電話の主の母親であることが判るが、彼女は彼を自分の息子と信じて疑わない。逆に自分の実家に戻ると、今度は本当の母親(キムラ緑子)から変質者扱いされ、家に自分とそっくりの他人がいることに気付く。彼も相手が自分のドッペルゲンガーであることに気付く。
 さらにチャラい学生の様相を示す自分もいて、彼らはアパートを借り“俺山”と称する根城とする。が、さらに何人も自分がいることに気付くと、学生の“俺”は不要な”俺”を削除する作戦に出る。

カフカも真っ青な不条理なドラマでござる。しかし、これは良心の呵責に耐え切れずに別の自分を作り出し、自己を失ってしまってしまうアイデンティティ崩壊の物語で、一人の人間の内面において起きていることと思えば不条理でも何でもない(だから同じ顔をした十数名の人物が喧嘩をする場面など怖いと云うより哄笑するほかない)。
 これは心理学的及び哲学的な解釈であるが、同時にIT時代の人間関係の希薄さを揶揄する面が物語世界の背景にあると言っても間違いではないだろう。

家電量販店で同じ人物が映る十数台のTV、ゼロックスによる複写など、少しずつ違う同一人間の増殖と重ねるべく映画言語として表現する辺り若干の工夫はあるものの、この手はもっと徹底しないと面白くなり切らない。その中では共産党ならぬ“増産党”のポスターが“増やします”と謳っているのが大いに笑える。勿論ポスターの顔も"俺”になっている。

本作に出て来た英語の問題。"Enployees only"(従業員専用)は"Employees only"の間違い。p,b,m(両唇破裂音、両唇鼻音)の前の子音(ン)は必ずmとなる。そうでないと連続的に発音できないからである。意図的に間違えているのでなければかなり恥ずかしい間違いで、先日ダイハツのポスターがmenberという同じ間違いをしていたのにも気づいた。こんなことはわざわざ習わずとも辞書を引いているうちに気付くはずなのであるが。わが群馬もGunmaと表記されるが、実際には我々日本人もGummaと発音しているのである。

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