映画評「華氏119」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2018年アメリカ映画 監督マイケル・ムーア
ネタバレあり

マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー。相変わらず作り方が巧い。

僕は文化的には保守で、個人主義者(厳密には、反全体主義であって、個人主義のマイナス面は認めがたい)である。従って、人権は大事にしないといけないという立場であるから、安倍政権の政策を歓迎しないことが多い。だから政治の話をすると僕は左翼的と思われたりする。
 例えば、日米地位協定の不公平を問う。しかし、これが左翼的であるはずがない。自分の国の利益になる当たり前ことを言っているに過ぎない。最終的に米軍に出て行って貰う(=日本が核兵器を持つ)のが理想だが、左翼だけでなくアメリカも日本が核兵器を持つには反対であるから、完全に出て行って貰うのは日米同盟がある限り不可能でござる。一部の護憲派のように、9条を現状のまま維持し、かつ、米軍に出て行って貰うという考えは、中国という覇権主義の国家が、或いは、王朝を維持する為には何でもする北朝鮮が隣にある限り、余りに能天気すぎよう。或いは、9条を変えたいのであれば、安倍政権は“将来的に米軍には頼らない”と明言すべきであるが、自民党支持層であっても核兵器を持つことには不賛成の人が少なくないから、それも限りなく夢物語だ。

さて、トランプ大統領が生れた原因・力学を探る本作は、反トランプ・反共和党であるが、民主党応援では全くない。全くムーアらしい一筋縄で行かないところである。共和党であろうが、民主党であろうが、反トランプであろうが、実権を持つ人間は(現在のところ)全部ペケだと言うのである。

大本を辿れば、民主党の権力者が妥協を繰り返し、共和党もどきになっていること。ムーアの生れたミシガン州の前知事リック・スナイダーが甚だしい差別主義者で同タイプのトランプを勇気づけたこと。これが全ての始まりというのだ。
 オバマ前大統領もムーアの生れた黒人の多いフリントの水問題を解決するどころか御墨付きを与えてしまった。つまり、スナイダー知事やトランプ大統領と変わる所がないというのだ。日本にいては研究者でもなければなかなか得にくい話で、面白いではないか。

とにかく、ムーアが訴えるのは現在アメリカ(に限らないが)で民主主義の破壊が堂々と行われているという事実である。そうして個人の無力感が進行して起きるのが精神的な無政府主義、これなり。日本でもこの傾向が甚だしいが、一縷の希望として、ストを強行した学校関係者や銃器反対を主張する高校生が権力者に翻意させたという例証を出す。

この辺りの作りが実に巧妙で、大半のジャンル映画より楽しめる。この作品の全てに賛同できずとも、考えることが大事だ。

この映画を見ずとも、以前からアメリカの大統領選挙制度にはおかしいところがあると感じていたし、実際の票獲得比率が正確に反映しない日本の小選挙区制もすぐにやめるべきだが、暫く続くだろう。

民主主義=多数決ではないが、選挙だけは票獲得の多いものが勝たなければいけない。また、考えの左右を問わず、全体主義の一変形であるポピュリズムに変質する時民主主義は否定されねばならないわけで、民主主義は万能ではないと言っておく必要がある。現在は、右派VS左派の時代ではない。全体主義VS個人主義の時代である。

今日から読売VSソフトバンクの日々が始まる。僕らの世代より上の群馬県プロ野球ファンは90%以上ジャイアンツ・ファンだろうが、ソフトバンクが強いのは素直に認めねばならない。因みに、最近のスポーツ選手がよく使う“素直に嬉しい”は“素直に言って、嬉しい”が正しい日本語。

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この記事へのコメント

モカ
2019年10月19日 19:10
こんばんは。

この映画はみていませんが、

>一部の護憲派のように、9条を現状のまま維持し、かつ、米軍に出て行って貰うという考えは、中国という覇権主義の国家が、或いは、王朝を維持する為には何でもする北朝鮮が隣にある限り、余りに能天気すぎよう。

 夫もかねがね同じ事を申しております。
 でも、こういう意見にはヒステリックに反応して、「戦争反対」と叫んで思考停止してしまう人が結構多いです。
 国防と戦争を仕掛ける事は違うと思うんですが、上に書いたような人達は国防意識はなんだかないみたいです。

 話変わって、ご存じかもしれませんが明日、 BS日テレで19時から前にお勧めしていた ストーンズのレディース&ジェントルメン が放映されますよ。



オカピー
2019年10月19日 21:48
モカさん、こんにちは。

>こういう意見にはヒステリックに反応して、「戦争反対」と叫んで
僕だって反戦ですよ。しかし、こちらがいくら何もしませんよと言っても、相手が何もして来ないとは限らないわけで、必要なことは講じないといけませんよね。
 僕は必ずしも改憲派ではないです。しかし、9条を維持するなら米軍にいて貰わないといけないですし、米軍に出て行って貰うなら9条は変えないといけない、という立場です。

>ストーンズのレディース&ジェントルメン が放映されますよ。
何と!
実は、先日未使用の中古品ですが、ブルーレイを買ったもので。勿論CMによる中断があるであろうTV放映よりこちらのほうが良いに決まっていますが、散財してしまった(笑)。
モカ
2019年10月20日 21:28
こんにちは。

>こちらがいくら何もしませんよと言っても、相手が何もして来ないとは限らないわけで、必要なことは講じないといけませんよね。

 そう思います。 
 中国はもう眠れる獅子ではないんですものね。
 
 
ストーンズ、早まらせてしまいましたね~
しかし、70年代のああいう映像でもブルーレイだと違いがあるんでしょうかね。うちはケチって普通のです。
オカピー
2019年10月20日 22:57
モカさん、こんにちは。

>ストーンズ、早まらせてしまいましたね~
TVに出るとは思いませんでしたがねえ。尤も、WOWOWも注意すると、色々なライブ映像を放映しています。

>70年代のああいう映像でもブルーレイだと違いがあるんでしょうかね。
ありますよ。そもそもハイビジョンはDVDと比べて発色が断然良いんです。理由はよく解らないんですがね。
DVDより安かったので、お買い得でした!