映画評「小さな巨人」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1970年アメリカ映画 監督アーサー・ペン
ネタバレあり

ニューシネマ以前から活動し「俺たちに明日はない」(1967年)でニューシネマの道を切り開いたアーサー・ペン監督の異色西部劇である。吹き替えの不完全版で一度、完全版で一度、都合三度目の鑑賞。残念ながら映画館では観ていない。

カスター将軍の第七騎兵隊のただ一人の生き残りジャック・クラブ(ダスティン・ホフマン)が121歳の現在から、110年前に遡って個人史を語る、という形式で進行する。因みにジャック・クラブは架空の人物である。
 11歳の少年ジャックが姉と共にインディアンの襲撃を生き延び、比較的温和なシャイアン族の部落で過ごすことになる。姉が逃走した後酋長(チーf・ダン・ジョージ)に気に入られて勇士として育てられるも、白人との戦いで自ら白人を名乗って救われ、議員夫婦に引き取られる。
 しかし、敬虔な信者である筈の議員夫人(フェイ・ダナウェイ)が不貞を働くのを見て失望し、今度は正反対のペテン師(マーティン・バルサム)と組んで軽犯罪三昧。そこへ女丈夫に率いられる山賊みたいな連中が現れ、ペテンにかけた二人をこらしめるが、なんとその女丈夫は自らの姉と判明する。しかも彼は天性のガンマンぶりを発揮し、ワイルド・ビル・ヒコック(ジェフ・コリー)と出会って憧れるが、結局殺人はできないと気付いて廃業、姉とも別れることになる。
 英語のできないスウェーデン女性と結婚して商売に精を出すも騙され、出会ったカスター将軍(リチャード・マリガン)に薦められて再び西部を目指すが、またまたインディアンに襲われ、妻を失った後再び酋長の許に戻る。
 カスター将軍の攻撃でインディアン妻を失った後将軍を亡き者にするため再び味方のふりをして白人側即ち将軍の偵察員になる。

Allcinemaの投稿にも指摘があるように、悪漢小説(ピカレスク・ロマン)のヴァリエーションである。
 先日まで読んでいた18世紀フランスの大長編小説「ジル・ブラース物語」も悪漢小説の形式で主人公が大物になっていく波乱万丈を扱っていて、基本は善だが悪党に与するなどそれなりに人間的な弱さを示しながらも主人公がしぶとく生きていくという辺り、本作に通底するものがある。

主人公は白人とインディアンの間を巧く泳くわけで、日本人的道徳感では全く褒められない人物だが、前述通り悪人ではない。つまるところ彼の精神はインディアン側に落ち着くわけで、その目を通すことでインディアン側から見た、白人批判という内容になっている。特にニューシネマ以前は英雄的に扱われることの多かったカスター将軍の英雄像破壊が眼目である。
 しかし、インディアンの風俗も相当ユーモラスに扱われていて、昨今のポリティカル・コレクトネス映画の生硬な見せ方とは一線を画して大変楽しい作品に仕上げられているのが殊勲。ダスティン・ホフマンの変幻ぶりも見ものですぞ。

「まっすぐにくねった道」などと矛盾することを言って面白がっていた中学の頃を思い出すタイトル。

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