映画評「ロリータ」(1962年版)

☆☆★(5点/10点満点中)
1962年イギリス=アメリカ合作映画 監督スタンリー・キューブリック
ネタバレあり

ロリコン(ロリータ・コンプレックス)の語源となったウラジミール・ナボコフの小説「ロリータ」をまだ神格化される前のスタンリー・キューブリックが映画化。40年位前にTVで見たのは大幅カット版(多分70分くらいカット)だから実力は把握できず、今回やっとまともに評価できる。

欧州からアメリカにやってきた教授ハンバート(ジェームズ・メイスン)が下宿先を選定中に、高校生の少女ドロレス=愛称ロリータ=(スー・ライオン)に魅了され、未亡人たるその母親シャーロット(シェリー・ウィンターズ)の貸している部屋を借りることにする。そうとも知らない未亡人は彼に色目を使って結局結婚するが、彼の日記を読んで真相に気付いて狂乱した末に自動車事故で帰らぬ人となる。
 キャンプにいるロリータを連れだした彼は、ある町で新婚夫婦のような気分で、高校に通う彼女を雁字搦めに縛り付けるが、当然若い彼女にはそれが面白くない。さらに別の町へ行く途中風邪を引いた彼女は入院中の病院から何者かと一緒に逐電する。
 3年後結婚して妊娠した彼女からお金の無心があったことから、凡ての元凶が引っ越し当初に出会っていたTV脚本家クィルティ(ピーター・セラーズ)と判明、彼を射殺してしまう。

という悲劇なのだが、相当コミカルである。映画がセラーズの珍妙な変装ぶりを強調し(原作では殆ど印象に残らないクィルティが異様に目立つ)喜劇的に作っているということもあるが、中年教授が少女を愛しすぎて自分を見失う姿自体が非常識的すぎて甚だ喜劇的なのである。
 ところが、少女の年齢が小説の初潮前12歳から16歳ー17歳にアップされている(次のパラグラフ参照)為に、その喜劇性が限定され、原作とは違う映画ならではの面白味が薄くなってしまったのが惜しい。

Allcinemaに原作者ナボコフが小説の年齢設定を変えた理由が解らないという評があるが、性道徳にうるさい当時の映画環境を知っていれば疑問にはならない。本作は英国基調の英米合作であり、清教徒的道徳観を基礎としたヘイズ・コードにより雁字搦めになっていたアメリカよりは僅かに緩い英国らしさが出ているところがあるも、どちらの国でもやはり12歳の設定では映画化は無理だったと思われる。

ナボコフが脚色したことになっているものの、Wikipediaによると、ナボコフの脚色を映画化すると7時間にもなってしまう為、キューブリックがほぼ最初から脚色し直したらしい。それでもこの内容で153分は長すぎて、ハンバートとシャーロット、ハンバートとロリータのやり取りに冗長なところが目立つ。

他方、セラーズの七変化ぶりは楽しく、この好調ぶりがあって彼は2年後の怪作「博士の異常な愛情」に起用されるのであろう。クィルティがやたらに“普通”を繰り返すのがこのお話の異常さを物語る。

「教授の異常な愛情」といったところ。

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