映画評「寝ても覚めても」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・濱口竜介
ネタバレあり

八日間で何と三本目の二役映画である。作り方はぐっと明快ながら「2重螺旋の恋人」と似ているところがある。原作は柴崎友香の同名小説で、監督は新人の濱口竜介(メジャー映画デビュー作)。

大阪の21歳女性朝子(唐田えりか)が写真展で見かけた青年・麦(東出昌大)と劇的な恋の落ち方をする。しかし、半年余りでデラシネ気質の麦は姿を消す。
 そのおよそ2年後の東京。彼女は勤める喫茶店の前にある会社に単身赴任社員・亮平(東出二役)を見出してビックリする。恋焦がれた麦に瓜二つなのだ。傷口をえぐられたくない彼女は、そっくりではあるが別人の亮平を当初は懸命に避けようとするが、恐らくはその風貌と、そして麦にはない優しさに魅かれて同棲生活に入る。二人に連られて朝子のルームメイトの舞台女優マヤ(山下リオ)は彼の同僚・耕介(瀬戸康史)と結婚する。
 ところが、5年後、大阪時代の親友・春代(伊藤沙莉)と再会したことから麦が芸能人になっていることを知った朝子はひどく動揺、大阪への引っ越し前祝いの席に現れた麦に連れられるままに出て行ってしまう。
 しかし、車の中で目を醒ました彼女は酔いから醒めたような気持ちになり、ひどく傷ついた亮平の前に戻る。彼女の出現に激しく抵抗する亮平は優しさを発揮して彼女を受け入れる。とは言え、前のような気持ちになれるだろうか。

というお話で、「2重螺旋の恋人」同様に双子の写真が出て来る。あの作品はヒロインが双子の写真を見てから幻想に入って行ったように理解できなくもなかったが、本作はほぼ観た通りに理解すれば良いと思われる。
 それでも「寝ても覚めても」(国際タイトルは"Asako I & II"とひねっている)という題名は意味深長であるし、麦が二人の住居に現れる幻覚を朝子は確実に見ている。彼女が麦の車の中で目を醒ますという見せ方もあり、どこまで現実の話なのかと思わせないでもない(日本の題名は常識的には“終始”という意味に解釈できるが、国際タイトルでは現実と幻想とも理解できる)が、本質的に前出の一か所を除いて現実と理解するのが無難であろう。

そこで恋愛心理という点に集中すれば、朝子が前の恋人にそっくりであるが故に却って亮平に近寄れない心理が極めて繊細、相当隠微でありながらも日本人ならば解る人が多いのではないか。亮平が朝子の前の恋愛事情を知ってもそれを前向きに捉えるところに朝子がぐっと来るのは常識的ではあっても胸に迫る。

場面やシークエンスに多少字余り的なところを感じたが、猫の使い方やテラスの使い方は秀逸。但し、朝子の揺れる心理が面倒くさい印象を醸し出してしまう感がなきにしもあらずで、すっきりとは観られないので鑑賞者を選ぶ。

台風19号が心配で寝られない。現在の心境は“起きても覚めても”です。

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