映画評「ミッション:インポッシブル」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1996年アメリカ映画 監督ブライアン・デ・パルマ
ネタバレあり

懐かしき「トプカピ」(1964年)の宝剣強奪場面を見て、その応用編が見られる本作を思い出し、20余年ぶりに観る。
 当時はTVシリーズ「スパイ大作戦」(1966~1973)の四半世紀ぶりの復活として観た人が多く、そのイメージの強い人にはさほど好評をもって迎えられなかった。僕はラロ・シフリンの最高傑作である主題曲くらいにしか思い入れがなかったのでその辺は有利に働いたものの、物足りなさを覚えてIMDbにおいては☆☆☆という点を付けたが、今見ると当時不満だったオーソドックスな見せ方が却って魅力的で★一つプラスとする。20年余りでごれだけ考えが変わる。面白いですな。

CIAの下部組織IMFのメンバーが、東欧に潜伏しているエージェントのリストを売った内通者を洗い出すべく、パーティー会場にて作戦を展開するが、この作戦自体も筒抜けで主人公イーサン・ハント(トム・クルーズ)以外は全滅。
 自らが裏切者扱いされているハントはリストがCIA本部が洗い出しの為に作った偽物であると知り、本物を奪取して武器商人マックス(実は初老の女性ヴァネッサ・レッドグレーヴ)と接近、リストと交換で彼女が知っているはずの裏切者を確保しようとする。

後年のシリーズ作品にも似たようなお話があるが、まずリストの受け渡しがフロッピーディスクというのがITが本格的に始まったばかりの1990年代半ばの印象であり、懐かしい。

そして、そのリストを複製する場面で使われるのが「トプカピ」の重力認識装置とロープを使った作戦である。終盤のTGV(ユーロスターの列車)とヘリを使ったスペクタクルに比べると甚だ地味であるが、純サスペンスとしてはこちらのほうが強力であろう。個人的には「トプカピ」のほうが見せ方が上手いと思うが、本作も悪くない。
 気が利いていると思ったのは「トプカピ」で主役であったナイフが思わぬ形で使われること。明らかに「トプカピ」へのオマージュで、さらに高速で走るTGVの屋根を移動するハントの上官フェルプス(ジョン・ヴォイト)が「トプカピ」に出て来たのと似ている吸着装置を使うという徹底ぶり。何だか嬉しかったですなあ。

チームワークを見せるのは序盤だけで、この後20年以上も続くことになる続編同様に、ほぼハント一人の独演会になるのが良し悪し。それが当時「スパイ大作戦」ファンに不評だった最大要因(続くのがフェルプスの扱いだろう)だが、当時作品の質として低空飛行していたスパイ映画の先輩「007」のスタイルに近づき、成り代わろうという目論見があったような気もする。その後「M:I」シリーズは作られるごとに見せ場の華美さを強めていき現在に至る。総じてサスペンスとして巧く作られ、視覚的に「007」を上回ることが多い。

監督はブライアン・デ・パルマで、彼らしいテクニックはハントがマックスの一味に初めて接触する街中のショットと、空撮カメラがTGVに近づいていくヒッチコック・スタイルのカメラワーク。しかし、カメラが完全に中まで入って行かないのは不満でござる。最近は無才の連中がコンピューターを使ってこの手の見せ方をするので、却って腹が立つ。

「トプカピ」への傾倒は多分ベテラン脚本家ロバート・タウンの趣味と思う。それとも若手デーヴィッド・コープがビデオでこの旧作を観ていたか? 「スパイ大作戦」ファンは喜ばずも、「トプカピ」をよく知る人は喜んだはず。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス

この記事へのコメント

浅野佑都
2019年10月03日 21:52
 テレビシリーズは、子供のころに毎週欠かさず観ていまして、好きなスパイが変装の名人役マーティン・ランドー(イーサン・ハントのモデル)でしたね。
女スパイではレスリー・アン・ウォーレンが好きで、後に彼女は「ビクター・ビクトリア」でアカデミー助演賞ノミネート。
もちろん当時は、主演のピーター・グレイブスしか知りませんでしたが。

この頃は、和製ドラマは黎明期で、多くのアメリカ製ドラマが輸入され、後に影響を受けた番組がいくつも生まれましたね(「スパイ大作戦→「キーハンター」など」・・。
スパイものでは、なぜか、吹替がオネェ言葉だった(笑)「ナポレオン・ソロ」
「ヒッチコック劇場」は、初期のころは」まだ生まれてないはずなんですが、記憶にあるのは再放送を見たか・・・。
喜劇も「アイ・ラブ・ルーシー」「奥さまは魔女」「かわいい魔女ジニー」
「パパ大好き」に出てくる大きな冷蔵庫の中にぎっしり入ったコカ・コーラや果物に憧れるも、長じてアメリカ人と知り合うようになり、「あれは、ドラマの話で、一般のアメリカ家庭はいたって倹しいものだった・・」と知るオチも(笑)

西部劇は「拳銃無宿」「ライフルマン」etc・・。良い時代でした。

ここから感想になります。
>さほど好評をもって迎えられなかった。

まさに僕もその一人でして、‥。監督が「愛のメモリー」以来、お気に入りのデ・パルマでなかったら劇場には行かなかったでしょう・・。
結果、観てよかったですねぇ・。デ・パルマの作品らしく・サスペンス要素が大で、スパイ映画としては,プロットがやや複雑すぎますが、ちゃんと伏線の回収も怠らない。
シリーズ通して出来栄えに不足はないですが、僕は本作と「M:I:Ⅲ」が良いかと思います。

>「007」のスタイルに近づき成り代わる
当時は、ダブルオーシリーズはアイデアの出し尽くしで行き詰ってましたね!
荒唐無稽になり、本来のシリアスさが失われた(ダニルル・クレイグになってからはまた新たな展開でしたが・・)
本作は、あまり人も殺しすぎない点も気に入っています(実際、言うほどにはスパイは殺人なんかしませんし(笑)

現実世界も、北朝鮮のミサイルや香港デモなど奇々怪々の様相であります‥。

 なお、このコメントは、5秒後に自動的に消滅・・しません(笑)
オカピー
2019年10月04日 18:22
浅野佑都さん、こんにちは。

>テレビシリーズ
僕はTVを余り見ない人間だったので、映画をよく見るようになった1970年以降に少し見た記憶があるくらい。末っ子でチャンネル権が全くなかったこともあるかもしれません。

>吹替がオネェ言葉だった(笑)「ナポレオン・ソロ」
不思議でしたね^^

>「アイ・ラブ・ルーシー」
僕が観ていたのも「ルーシー・ショー」ではなくこちらかな?

>本作と「M:I:Ⅲ」が良いかと思います。
僕は気に入らないところがあるものの「M:I:Ⅲ」が一押しで、二番目は少々迷う。クラシックな映画ファンには本作が良いかもしれません。

>本作は、あまり人も殺しすぎない点も気に入っています
それは、その通りですね。

>なお、このコメントは、5秒後に自動的に消滅・・しません(笑)
面白い!