映画評「ジュリアン」

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年フランス映画 監督グザヴィエ・ルグラン
ネタバレあり

ベネチア映画祭で監督賞、セザール賞(フランス版アカデミー賞)で作品賞を獲っているが、近年日本人が幾つかの不幸なDV→児童虐待事件を知った後見ると物足りなく感じる作品であろう。

暴力的な夫ドゥニ・メノーシェと離婚した中年夫人レア・ドリュッケールは、小学生の息子トマ・ジオリア(役名ジュリアン)の親権を巡って調停して貰うことにする。裁判所は金輪際会わせないとする彼女の要請を認めず、隔週で週末だけ前夫に会わすよう裁定する。
 しかし、裁判所への証拠として出したように子供は父の母への暴力を嫌い、自ら父を好くことはできない。それでも既に親権とは関係のない18歳の長女マチルド・オヌヴーを含めた一家は新居に移って会うのを避けようとするが、DV男は何としても新居のありかを教えようとしない息子に強要して新居を把握する。
 この時は大事にならずに済むが、娘のパーティーで排除されたメノーシェは憤懣やるかたなく後日その住居に猟銃を持って押しかけて来る。

日本の妻たちがDV夫に逆らえず、積極的ではないまでも、娘たちの虐待に加担して死に至らしめた事件を考えると、このように離婚して夫を排除しようとしたこの作品の細君は賢い。日本の妻たちは本作のヒロインよりぐっと若いということもあり、子供より夫への愛情を優先し夫の支配力に屈してしまったのである。

本作は最後の10分ほどを別にすると静かに進ませることで怖さを胚胎・醸成させ、その10分で爆発させるという形を取る。だから、ダラダラしているという評は決して的を射ていないのだが、やや間延びした印象は禁じ得ない。例えば、最後のサスペンス場面において、自室の後に隣室のドアを長く叩いていたように思うが、加害者の意図も作者の意図もよく解らず、妙に長たらしい。
 一番良くないのは、最後のサスペンスをドラマ映画としてのそれというより、ホラー映画に近づけてしまったことで、前半のセミ・ドキュメンタリー的な処理との間でややチグハグな印象をもたらしてしまっている。恐怖度は半端ではないが、ここまでやると裁判所が裁定を過つとこういう恐怖を起こし得るという、アンチDVキャンペーン映画みたいに見えてきて、ドラマとして薄味となってしまう。Allcinemaにある類似のコメントは、全くその通りである。

男性が暴力的で、自分の内面と真に向き合うことができずに自己中心的になると、日本であったような事件を起こす。本当に何とかしないといけない。報道された3件の女児は本当に不憫でならない。

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