映画評「ウイスキーと2人の花嫁」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年イギリス映画 監督ギリーズ・マッキノン
ネタバレあり

1941年にスコットランドの孤島で起きた事件を、地元の作家コンプトン・マッケンジーが際物として小説化し、49年に洒落たコメディーを割合得意とするスコットランド系米監督アレクサンダー・マッケンドリックが映画化した。そのリメイクである。前述作は本邦に輸入されていないので、本作で初めて日本の映画ファンに紹介される珍事件の巻である。

第二次大戦初期、スコットランドの孤島トディー島。ウイスキーがなければ夜も日も明けない島民という辺りから頗る可笑しく、快調な出だし。
 電話をつなぐことも業務としている郵便局の親父マクルーン(グレゴール・フィッシャー)が、娘二人の恋人に結婚する条件にウイスキーがあることと告げるほど。しかし、配給も途絶えてウイスキーがない状態なので、島民は落ち込むのである。
 そこへ輸送船座礁という事件が起きる。村民は荷物が大量のウイスキーであると知り、沈没する前に掠めてしまおうと企み実行に移す。それを阻止しようとするのが融通の利かない民兵を指揮する愚直なワゲット大尉(エディ・イザード)で、上官に電話すると見せかけて関税消費庁を呼び出すなど、村民と虚々実々の駆け引きを繰り広げる。
 結局この勝負は村民たちの勝ちで、大尉が本国へ送付した銃弾の箱の中にウイスキーが入っていたことから彼は逮捕され、村民たちはウイスキーを囲んで二人の娘の結婚を祝う。

大して悪いことをしていない(厳密は全くしていない)大尉が逮捕されてしまう幕切れの後味が悪いと仰る人がいる。シリアスに作っていれば(寧ろ異論や正義が排除される村八分の問題性が浮かび上がることになるので)その意見は極めて正論であるが、本作の立場はまるで逆、愚直すぎる者はひどい目に遭うという主題をユーモラスに展開するのを目的としているのだから爽快な後味を味わえば良い。かかる観客も愚直すぎますな。

本作には3人の嫌われ者が出て来る。職務に忠実で愚直な大尉、自らの宗教観に忠実で因循な老婦人(娘の恋人の一人の母親)、そして村人の略奪を大尉に教えてしまう酒場主人。
 このうち老婦人は弱々しかった息子の激しい反発を食らって大人しくなり、最後には祝宴に参加して踊りまでする。昔はきっと活発なお嬢さんだったのだろう。

大尉の部下が、命令に忠実であることに忠実すぎて、当の大尉を含む追跡隊を阻止するシークエンスが可笑しい。何しろ目の前に命令をした大尉がいるのに“ドイツのスパイかもしれない”と阻止する。しかも、その解除暗号がウイスキーというのだから可笑しすぎる。こういう英国的な上品な笑いは非常に好ましい。

序盤強烈な反息子・反島民だった老婦人が扱いが徹底していない憾みが残り、大尉と並行して終盤まで悪役に徹してくれればもっと面白くなったかもしれない。

30年くらい前だったか、TV番組反響欄においてNHKの連続テレビ小説に関し「こんな悲しいお話に“次回もお楽しみに”というのは如何なものか?」という読者投稿があった。後日NHKは「“お楽しみ”という言葉に喜怒哀楽全ての感情を含めています」と回答。この読者の狭量に僕は苦笑したものである。

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