映画評「上海から来た女」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1947年アメリカ映画 監督オースン・ウェルズ
ネタバレあり

初期のオースン・ウェルズの作品は日本では見られず、大分時間を経て輸入された。本作も製作から30年経った1977年に日本で劇場公開され、僕も映画館で観た。
 一部に解りにくいという評があるのは、製作会社による大幅カットのせいかもしれない。しかし、最終的に浮かび上がるハードボイルドものとしての性格を理解すれば、これくらいの長さが本当は丁度良く、製作会社の判断が当たっているようにも思う。完全版がない以上何とも言えないのだが。

ニューヨークで若く色っぽい女性リタ・ヘイワースを暴漢から救ったのが縁となり、青年ウェルズが彼女の夫で有名弁護士エヴェレット・スローンが持っているヨットの乗組員として雇われる。
 かくしてカリブ海からサンフランシスコへ向かう航海に出、彼はリタと懇ろになるが、夫の目が光っている上に、途中からヨットに乗り込み弁護士の顧問のような位置に収まる中年男性グレン・アンダースから妙な提案を受ける。自分を殺したように見せかけてくれたら5000ドルを出すというのだ。リタと駆け落ちしたい青年ウェルズはこれに目がくらむ。
 ところが、アンダースは脅迫してきた執事を射殺した後逐電、ウェルズが大慌てで事務所に戻ると、アンダースに殺されると踏んでいたスローンが悠々と出て来る。殺されたのはアンダースで、スローンはニコニコと恋敵であるウェルズの弁護を引き受けると言う。勝つ気がないのだ。
 審理の後の混乱に乗じウェルズはチャイナタウンの遊園地に逃げ込む。

終わってみれば案外オーソドックスなハードボイルドものの図式で、最後に本当の悪党が判明するわけであるが、理詰めに考えるとその発端部分まで綺麗には遡及できない。それでもアンダースが奇妙な提案をする辺りからのサスペンスぶりは充実し、相当楽しめる。

それ以上に素晴らしいのは画面で、水族館でリタとウェルズのプロフィールが黒く浮かび上がるショットの美しさや、「燃えよドラゴン」(1973年)公開直後からそのオリジナルとして取り上げられていた鏡の間の圧倒的な見せ方。ご本家を後から見て興奮したものです。

リタ・ヘイワースは1970年代の初め「ギルダ」で初めて見たが、ピンと来なかった。しかも老け込むのが早くて1950年代後半の彼女はすっかりしなびていて、僕は結局この女優の魅力が未だに解らないのである。

“上海から来た”と言っても、サンフランシスコのことでした。

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