映画評「英国総督 最後の家」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年イギリス=インド=スウェーデン合作映画 監督グリンダ・チャーダ
ネタバレあり

インドとパキスタンの歴史をある程度知っている人が一番楽しめる作品である。
 高校で世界史は1970年頃まできちんと習った(日本の学校は現代史を教えないとよく言われるが、わが母校ではそんなことはなかった)が、第二次大戦前後のインドについてはよく憶えていず、一番楽しめるグループに僕はどうも入らない。ガンジー、ネルー(僕らの頃はネールでしたね)は勿論知っているが、ムスリム(イスラム教徒)連盟のジンナーなどまるで記憶にない。国民会議派は憶えている。

物語において歴史的事項を詳しく説明するのは煩雑なので最小限に留めましょう。

第二次大戦が終わり、1947年に英国は植民地インドの統治権を返還することを決め、最後の総督としてマウントバッテン卿(ヒュー・ボネヴィル)が派遣される。一緒にやって来た妻エドウィナ(ジリアン・アンダースン)と娘パメラ(リリー・トラヴァーズ)を含めてリベラルな一家は偏見なく使用人たちに接していくが、ヒンズー教徒とムスリムの対立が激しくなり、それが次第に様々な宗教の使用人が入り混じる総督邸の中にまで及んでくる。
 その為英国はインドの独立を早める決意をするが、英国領インドのまま独立させるか、インドとパキスタンに分けて独立させるかの二者選択で揉めに揉める。ところが、チャーチル前首相が自国の利益の為に分離独立を既定路線と決めていたことが判明、総合的に判断して総督はそれに従わざるを得ない。

というのが軸となるお話で、これに宗教対立と分離独立の為に引き裂かれる恋人同士(ヒンズー教徒男性:マニーシュ・ダヤール、ムスリム女性:フーマ・クレシー)を交えて、ドラマティックな独立騒動が描かれている。

純粋に歴史劇として観た場合には二人の終盤の再会は些か作り物めいて感心できないが、このエピソードが何故必要だったのか言えば、この作品を作った女性監督グリンダ・チャーダがインドに辿り着いた難民の孫娘だからで、恋人たちのエピソードに導かれる形で彼女の出自が明らかにされるのである。

ジンナー辺りをもっと知識として得ていればぐっと楽しめたかもしれないが、僅か70年前のインドの状況を知るには十分な内容で、逆にこの辺りの混乱をよく知らない日本人にはこの作品で十分勉強になる。

一方、深読みする癖のついてしまった初老人種には、この映画の内容が、現在混乱を極める英国のEU離脱、中近東から欧州への大量移住、ロヒンギャ問題といった世界的問題が重なって見えてしまう。

日本がアジア民族の独立の為にアジアに進出したという意見は、大義名分を別にすると、嘘であろう。ロヒンギャ問題の発端が英国にあるように英国がひどいことをアジアでやったのは確かだが、日本も負けず劣らずやったのだ。僕は植民地主義に基づく日本のアジア進出を歴史の力学から言って仕方がなかったと考えるが、形としては同じことを仰る日本無謬論者と違って、日本が悪くなかったなどとは毫も考えない。欧米諸国も日本も悪かったのである。

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