映画評「ゲット・アウト」 

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年アメリカ映画 監督ジョーダン・ピール
ネタバレあり

一週間前に観た「ヘレディタリー/継承」がそうだったように、ホラー映画は新人の監督デビューに向いているらしい。終盤まで閉鎖的コミュニティの恐怖劇と思わせる本作も、ジョーダン・ピールという黒人監督のデビュー作に当たる。

筋骨逞しい黒人青年ダニエル・カルーヤが、白人の恋人アリスン・ウィリアムズの家に招かれる。「招かれざる客」同様にならないかと戦々恐々として赴くが、両親も彼女が予め告げたように黒人への差別意識がない。彼女の弟ケイレブ・ランドリー・ジョーンズは得体のしれない印象はあるも、総じて好感触。寧ろ黒人の使用人二人に彼は違和感を覚えるのである。
 滞在中にコミュニティの人々を集まる園遊会にも加わるが、ここで出会う初老の白人を妻にしている黒人青年も尋常ではない印象を発散する。不穏な雰囲気を察知した彼はアリスンに帰ることを告げるが、彼女は何故かきびきびと動かない。ここで彼は彼女が様々な黒人と撮った写真を発見する。彼女もこの家族が中心となって行っていたコミュニティ、厳密には結社、の陰謀に加担していることに気付き、慌てて逃げ出す。

のだが・・・というお話で、終盤になると、白人の黒人の肉体や運動神経に対する憧れを科学的に扱ったSFホラーに変じていく。

この作品は話題性が高いので、余り詳細には触れないことにするが、次のような事例について触れないと映画評の意味を成さないので書いておく。
 序盤に車で鹿をはねた恋人たちの要請でやって来た警官がカルーヤ青年を調べようとするのをアリスンが止めようとすることの意味。或いは、フラッシュを焚かれた黒人青年が放つ「出て行け」という台詞の意味合い。それが映画を観終わった後では180度違う意味となるのである。或いは、黒人を差別しないことの隠れた意味にも深長なものがあり、アメリカ社会のポリティカル・コレクトネスへの見事な風刺になっている。
 アカデミー脚本賞を獲ったのも納得できる。

但し、最初のエピソードが些か解りにくい。ジョーンズ君が黒人青年を誘拐する一幕なのだが、この黒人が格闘技家のジョーンズ君に全く歯が立たないのを見ると、肉体を狙う結社にとってどこが魅力だったのか解らず、腑に落ちないのである。

白人に対する諧謔の側面が強いので、アメリカでは喜劇扱い。日本人にその感覚はなかなか解らない。

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この記事へのコメント

モカ
2019年08月30日 23:21
こんばんは。

これは1週間ほど前に観ました。 ホラーかと思ったら違いましたね。 昨日、今日と2日続けて困った時の町山頼みのようで、気が引けますが、町山の解説が面白いです。
( youtube 町山智弘 ゲットアウト 徹底解説 )

多分、Prof.の疑問点も解明されると思います。
トランプが大統領になる直前に撮影は終了していたけれど、トランプが大統領になってしまったのでラストを変更して取り直したとか、色々面白い話が聞けました。

解説を聞いたらなるほどね~とは思いますが、やはりおっしゃるように、日本人には膝をたたいて「そうそう、ある、ある~」とはいきませんね。
オカピー
2019年08月31日 12:52
モカさん、こんにちは。

>町山解説
観ました^^

冒頭の騒動について、白人住宅地における黒人の立場は余り考えていなかったので、彼の怖がる意味がよく解りました。
 結社が彼を狙った理由は依然曖昧ですが、解説に基づいて推測すると、黒人はあそこは大きい、あれが強いという白人の偏見だけで選ばれたと思えば間違いなさそうですね。

パロディについては殆ど解りませんが、ただ、アイラ・レヴィン原作の「ステップフォード・ワイフ」については本作との比較の為に昔の自分の映画評を読み直しましたよ^^v
モカ
2019年09月03日 18:35
こんにちは。

つまり、これはサタデイナイトライブの映画版ということでよろしいでしょうか?

「ステップフォードの妻たち」ってそんな話だったんですね。ベット・ミドラー、好きなんですけど、この時はオーバーアクト過ぎて早々に視聴終了してしまいました。
そんな展開なら、ちゃんと見れば良かったです。

アイラ・レヴィンって「ローズマリーの赤ちゃん」といい、この話といい、面白いのを書いてるんですね。
「死の接吻」しか読んでないのでアルレーの男性版のような人かと思ってました。
オカピー
2019年09月03日 21:41
モカさん、こんにちは。

>これはサタデイナイトライブの映画版ということでよろしいでしょうか?

そのようです。

>「ステップフォードの妻たち」ってそんな話だったんですね。
>そんな展開なら、ちゃんと見れば良かったです。

まだチャンスはあるでしょう!
キャサリン・ロスが主演した最初の映画化が観たい。


>アイラ・レヴィンって「ローズマリーの赤ちゃん」といい、

特殊なコミュニティを土台にするのが好きなようですね。
コミュニティとは余り関係ないですが、「ブラジルから来た少年」も彼。変な作品が多いですね。
オカピー
2019年09月04日 12:23
モカさん、こんにちは。

「ベロニカとの記憶」について。
レコードをチェックするところはなく、本をチェックしていました。
初めて彼の部屋を訪れた時、彼がかけたレコードはドノヴァンのThere Was a Time(邦題解らず)でしたよ。
しかし、映画の中でIrma ThomasのバージョンでTime Is on My Sideがかかりますし、イザベラの知的障害の弟がローリング・ストーンズ好きでした。

ご報告まで。
モカ
2019年09月04日 18:44
こんにちは。

ご報告ありがとうございます!
これは映画を観ないといけませんね。
たまに原作より映画のほうが納得できることもありますし。
例えば「朗読者」→「愛を読むひと」とか「サラの鍵」(これは原作通りのタイトル)。
両方とも映画のほうがいいのは、主演女優の力が大きいと思います。

アーマ・トーマスって・・・アーマさんには失礼ですけど、使用料が安かったのかしら? 初期ストーンズの楽曲の権利ってややこしいんですよね? 確か、ビートルズもえらい目にあったアレン・クレインがまだ持ってるとかでしょうか?
あ、作者は別の誰かでしたか?
ま、誰が持ってるにしてもアーマさんのほうが安そうだし、彼女にお金がいったほうがいいですよね。 
ご健在かどうかも存じあげませんが。

ドノヴァンはメローイエローくらいしか浮かんできません。
ドノヴァン、ギルバート・オサリバン、アーロ・ガスリー、
何となくこの三人はイメージがだぶりますね。
もう皆お爺さん (笑)こちらもご健在かどうか・・・
オカピー
2019年09月04日 22:32
モカさん、こんにちは。

>「ベロニカとの記憶」
本を調べると言っても、単行本ではなく、しかもさらりと見せるだけですので、こういうところは原作のほうが面白いかも。

>アーマ・トーマスって
彼女がTim Is on My Sideのオリジナル歌手らしいですね。
作詞・作曲ば恐らく別でしょうが、歌唱にも著作権料は入るはず。
昔「折鶴」という曲をヒットさせた千葉紘子がFM東京でパーソナリティーをやっていた時、1980年代の番組の中で“この間印税が入って来たんですよ”と言っていたのが印象的でよく憶えています。「折鶴」の歌手としての印税だったのでしょう。

>初期ストーンズの楽曲の権利ってややこしいんですよね?
そのようです。
全体としては、ストーンズはビートルズより使われますね。
日本の「悪霊島」で使われた「レット・イット・ビー」と「ゲット・バック」のオリジナルが後年使えなくなり、TV放映やDVD化では他のアーティストによるバージョンが代えられました。後者は録音にも参加していたビリー・プレストンのバージョン。

>ドノヴァンはメローイエローくらいしか浮かんできません。
「サンシャイン・スーパーマン」なんてのも僕はよく聴きました。
彼を初めて意識して聞いたのは「火曜日ならベルギーよ」の主題歌。他人の曲ですが、良い曲でした。それから「ブラザー・サン・シスター・ムーン」の主題歌もよく憶えています。懐かしいです。
モカ
2019年09月05日 11:16
こんにちは。

>「サンシャイン・スーパーマン」

 youtubeで聴きました。
聞いた覚えはありますが、ナンシー・シナトラが歌っていたような気がして、調べたら「these boots are made for walking」と勘違いしていたかもです。似てますよ。
どちらもこの時代特有の音ですね。もう少しサイケにしたらジェファーソンエアプレインとかにもありそうです。
こんなことをしてyoutubeをさ迷っていたらどんどん時間が過ぎていきます。

>「火曜日ならベルギーよ」
 全然知りません。
>「ブラザー・サン・シスター・ムーン」
 これは見ましたよ。忘れましたけど・・・清らかな映画だった かな・・・
>ケン・ローチの「夜空に星があるように」は見ましたけど、音 楽まではチェックしていませんでした。

なんでもよく覚えておられますね! 

私、カーラ・トーマスとアーマ・トーマスを混同していました。
アーマのお父さんのルーファスの「walking the dog
モカ
2019年09月05日 11:29
すいません! 途中でUPされてしまいました。
それで、ルーファス・トーマスの「walking the dog」もストーンズがカヴァーしているんでした。

日本で劇場公開されたのかどうか知りませんが、「ディア アメリカ戦場からの手紙」も勿論ご覧になってますよね?
60年代ロックの宝庫のようなサントラですけど、全部無償提供されたとか。あれに全部使用料を払ったら大変なことになったでしょうし、ナレーターの俳優もみんなノーギャラらしいですね。
オカピー
2019年09月05日 23:02
モカさん、こんにちは。

>「these boots are made for walking」と勘違い
邦題「にくい貴方」ですね。これもよく聴きました。
ナンシー・シナトラと言えば、「サマー・ワイン」というのもありましたし、「007は二度死ぬ」の主題歌も。

>こんなことをしてyoutubeをさ迷っていたらどんどん時間が過ぎて
そういうこともままありますね。
日本の曲に比べると、レコード会社が積極的にUPしているから昔の洋楽を聞く時に非常に便利ですよね。

>>「火曜日ならベルギーよ」
スザンヌ・プレシェット主演の観光コメディ。

>>「ブラザー・サン・シスター・ムーン」
聖フランチェスコの伝記映画ですね。パンフレット買いました。

>カーラ・トーマスとアーマ・トーマスを混同
僕もThomasとあったのでカーラ・トーマスかと思って、エンド・ロールをよく観たら、アーマ・トーマスでした。

>ルーファス・トーマスの「walking the dog」も
おお、そうですか。知りませなんだ。

>「ディア アメリカ戦場からの手紙」
見ましたが、忘れていました。
そんなに60年代ロックが使われていましたか。調べて本館に載せないといけないなあ。
日本のCMではきちんと払っていますかねえ?
モカ
2019年09月09日 11:05
こんにちは。

ナンシー・シナトラが流行った当時で小学校低学年くらいでしたか?
まさかリアルタイムに聞いてませんよね? いくら早熟天才少年だったとしても・・・(笑)

私は昔から映画のパンフレットって買ったことないんですよ。
学生の頃は、映画を観るだけで精いっぱいで(レコードの出費が大きかったので)映画代節約のために映画館で切符売りのアルバイトをしていましたよ。
帰りにただで見せてもらえるのが楽しみでしたが、夜なので最終のお金の集計をすると、50円くらい合わない日があって泣く泣く自腹切って辻褄合わせをしていました。
 遊興税とかいうのがあったんでしょうか、税務署からきたような連番の打ってある切符でごまかしがきかないようになってました。今となっては懐かしい思い出です。

最近、JASRACがうるさくて問題になってますね。 知り合いのちょっと音楽をかけているような小さなお店にも月ぎめでお金を払うようにしつこく言ってくるらしいです。
CMは当然使用料を払っているんじゃないですか?
時々、タイアップしているのか、下の方にミュージシャンの名前が入っているのもありますね。

「ディア アメリカ」は日本ではDVDになってませんが、
dailymotionっていうサイトで前半分くらいは見られます。
冒頭の「渚のボードウォーク」からCCRの「fortunate son」に切り替わるところとか、ザ・バンドの「 i shall be released」の使い方とか、なかなか良いです。アリス・クーパーの「i'm eighteen」
なんてこの映画を観なければ知らないままで終わってたでしょうね。バンドも見た目で判断してはいけませんね。
オカピー
2019年09月09日 23:07
モカさん、こんにちは。

>ナンシー・シナトラ
>まさかリアルタイムに聞いてませんよね?

半分イエスで、半分ノーです。
ラジオで歌手名や曲名を意識せずに聞いていたと思います。
 同時代的に曲名を憶えている最古の記憶は、ジェファーソン・エアプレイン「あなただけを」かドアーズ「ハートに火をつけて」。1967年のことですね。
 ビートルズは1968年の「ヘイ・ジュード」を片言で歌っていました。この辺りから洋楽を積極的に聴くようになりました。


>50円くらい合わない日があって泣く泣く自腹切って辻褄合わせ

姉が郵便局に勤めていた頃、1円でも合わないと合うまで帰れなかったそうです。自腹を払うのも嫌だし、帰れないのも嫌。お金をじかに扱う商売は辛いですねえ。


>JASRACがうるさくて問題になってますね。

一部の音楽関係者から文化破壊者と言われていますね。特殊な事情があって作曲者本人の演奏を禁じた例も出ています。ギター教室にも払えと言っているのも問題ですね。

昔、本館でビートルズなどの歌詞を対訳していたことがあるのですが、間接的にJASRACから文句を頂戴し、削除しました。
 大きな問題と思うのは、文学では本来引用が認められているのですが、歌詞は何故か文学に当たらないようで、作者名を明示した上での部分的引用も対象になるようです。さすがに曲名は大丈夫のようですが(笑)。
 レコードに付属されているビートルズの歌詞カードはデタラメなものが多いので、僕は自分で聴くなどして書いたわけですが、間違った歌詞を護ってどうするの、と僕は思うわけですよ。


>「ディア アメリカ」
>CCRの「fortunate son」

「フォーチュネイト・サン」が戦闘アクションで多く使われるのはこの作品のせいかもしれませんね。
 隙があったら、そのサイトでまた観てみようと思います。
モカ
2019年09月11日 22:51
こんばんは。

>ラジオで歌手名や曲名を意識せずに聞いていたと思います。

 上に兄弟がいると早熟になりますね。
私はポスト団塊ですが、春樹世代の兄弟がいたのでそっちに引っ張られてました。
「ヘイ・ジュード」を歌う小学生、可愛いかったでしょうね?
そのころお姉ちゃん(笑)はテレビで巨泉のビートポップスを見て「ヘイジュード」で踊ってましたよ!

 Somebody to love 「あなただけを」でしたか。
よく似たタイトルですが私の原初の記憶にある洋楽はディーン・マーティンの「everybody loves somebody 」です。ロック以前ですね。
 

オカピー
2019年09月12日 17:33
モカさん、こんにちは。

>上に兄弟がいると早熟になりますね。
僕の性格から言って、いなくても中学生にでもなれば聴いたでしょうが、やはり数年早くなりましたね。


>「ヘイ・ジュード」を歌う小学生、可愛いかったでしょうね?
どうだか(笑)


>そのころお姉ちゃん(笑)はテレビで巨泉のビートポップスを見て
>「ヘイジュード」で踊ってましたよ!

そう言えば、「ヘイ・ジュード」のミュージック・クリップで、女の子たち(男性もいたと思いますが)が踊っているのを見たことがありますよ。公式録音盤とはアレンジ等違いましたが。


>Somebody to love 「あなただけを」でしたか。

さすがにまだ英語は解らなかったので、邦題で憶えていました。
後年同じ原題でクイーンが発表した曲の方が今では有名でしょうかねえ。


>よく似たタイトルですが私の原初の記憶にある洋楽は
>ディーン・マーティンの「everybody loves somebody 」です。

TVコマーシャルで使われていたのを聞き、憶えましたよ^^