映画評「特捜部Q カルテ番号64」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年デンマーク=ドイツ合作映画 監督クリストファー・ボー
ネタバレあり

シリーズ第4作で、個人的には三度目の作品。例によって<未体験ゾーンの映画たち2019>にて日本で上映された作品なので、本ブログでは日本劇場未公開扱い。
 デンマーク版「相棒」として毎回楽しませてもらっている。我が邦の「相棒」は劇場版となると大風呂敷を広げてお話が破綻してしまいがちなのだが、こちらはそれがない。「相棒」の良い出来の挿話を長尺にしたような感じで好感が持てるのが良い。

古いビルの密室で女性二人男性一人のミイラ死体が発見される。そこで迷宮入り事件担当の特捜部Qのお二人カール(ニコライ・リー・コス)とアサド(ファレス・ファレス)が調査を開始する。
 今回アサドは他部署への転任前という設定で、その直前故の二人の心情も面白く扱われている。

その間に事件に関係する過去の場面がインサートされる。即ち、
 1961年に従兄と関係したという理由(当時のデンマークでは従兄弟でも近親相姦に近い感覚であったらしい)で十代少女ニーデが孤島の女子施設に送られる。不良少女や知的障害者などが送られる施設である。ここでニーデは仲間であるはずの少女リタに裏切られ、医師クルトや看護婦キギデにより堕胎と避妊手術をされてしまう。

これにニーデが怒ったわけで、当初国外に逃れ部屋の代金を払い続けていたと思われていたギデはミイラ死体の一人であって、ニーデがギデに成りすましていたことが判明していく。発見された男性はクルトではなく、医師らを守っていた弁護士である。
 そして、まだ婦人科医として活動するクルトらのネオ・ナチ医師グループが、劣等民族を理由に移民の女性たちを避妊手術を施す計画を遂行していて、それを明らかにしかねない特捜部Qのメンバーたちにも危険が迫ってくる。

過去のデンマークにおける人権侵害と、現在胚胎しつつある移民排斥の気運とを重ねた、かなり社会派的な内容である。前半の部分が倒叙ミステリー的に紹介され、現実部分のところでサスペンス色が強くなる。ミステリー・サスペンスとして十分面白いが、殺された弁護士へのアプローチの部分が拙速という印象は残ることと、画面が無難ではあるが面白味を欠くので、採点はこのくらい。

以下のコメントは映画には直接関係なし。
 現在は人権先進国である欧州も僅か半世紀前まではこれほどまでに女性の人権が無視されていたのである。日本でも優生保護法に絡む損害賠償問題が起こっているが、裁判所が違憲であると言っても、官憲は謝罪する代わりに“当時の法律では適正だった”と寝惚けたことを仰る。問題にされているのは、行為ではなくその法律自体が違憲であったということなのである。
 保守というより日本国無謬論者は“(戦後の混乱期における米国兵の)強姦による妊娠などから知的障碍者を守る為に処置が必要だった”と言うが、少なからぬ男性にも施されている事実をどう弁明する? 男性は妊娠などせんぞ。知的障碍者と言うが、TVで被害者の音声を聞くとごく普通の人たちである。結果的に、子供を育てられないほど問題のある人は寧ろ少数だったのではないか? その法律が違憲としか言いようのない“優性保護”を銘打っている以上、どんな言い訳も無用だ。

対照的にハンセン病に関しては、小泉政権の英断があり、現在の政権もそれを踏襲して謝罪した。僕は差別に感じる。

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