映画評「ハナレイ・ベイ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・松永大司
ネタバレあり

村上春樹の短編小説の映画化ということで観てみた。

ハワイのカウアイ島で日本人少年タカシ(佐野玲於)がサーフィン中に鮫に襲われ落命する。シングルマザーのサチ(吉田羊)は現地で火葬し、現地の官憲が取っておいてくれた手形を受け取らずに帰国する。
 以降その時期になると彼女は息子が落命したハナレイ・ベイを訪れ、同じ場所に腰かけて海を眺める日々を送っては帰国するということを恒例の行事とし、10年後、当時の息子と同じくらいの年齢の日本人少年二人(村上虹郎、佐藤魁)と出会い、辛辣な言葉を投げつけながら可愛がる。
 彼らは帰国前に、片脚の日本人サーファーを見たと告げる。生意気な息子には好かないところがあったものの、その姿をもう一度見たい彼女はこれにショックを受け、探し回るが、何も得るものはない。彼女はこれはカウアイ島が自分を受け入れていないからではないかと考える。
 その疑問の答えを求めて息子の事故死を扱った警官の未亡人に会う。彼女は殉死した夫の勲章より手形の方が何倍も価値があると言う。かくして遂に形に過ぎない手形や息子の写真を受け取って帰国した彼女は、それでも、現実を直視することが出来るようになる。

一人の中年女性の喪失感からの再生を綴った内容で、画面の感覚がなかなか良いと思ったら、大いに気に入った「トイレのピエタ」を作った松永大司の作品であった。

折に触れてフラッシュバックされる回想だけでは、台詞でお話を理解するのに慣れてしまった人には彼女の心情に解りにくいところがあるだろうが、きちんと見れば問題ない程度に理解できる作り方がされている。短編の映画化らしく純文学性が濃厚すぎずに接しやすいのが良い。

しかるに、喪失感をめぐるイラク戦争の帰還兵の台詞は、脚本も兼ねる松永監督の追加ではないか。喪失感の比較をしたものだろうが、説明的すぎてここだけが違和感を残すのである。

自然と人間の関係というハワイ人の世界観が結構重要。

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