映画評「ヒトラーを欺いた黄色い星」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年ドイツ映画 監督クラウス・レーフレ
ネタバレあり

ナチスによるユダヤ人迫害が人類史上最悪の蛮行であることは理解しているが、ホロコースト絡みはさすがに作られ過ぎという気持ちが僕の内心に起りつつある。

本作はユダヤ人の潜伏生活を描いた作品であるから「アンネの日記」型ながら、アングルが少々珍しい。ユダヤ人男女の若者4人がご当地ベルリンで知恵を絞って生き延びる様子を、ネタ元である御本人4人のインタビュー映像を交えて作っているのである。TVバラエティにおける再現ドラマをぐっと本格化したものと思えば良い。

得意の身分証偽造の技術を生かして自らも生き延びるだけでなく他人の為にも大いに役立ったツィオマ(マックス・マウフ)、理解あるドイツ人将校のメイドになって難を逃れるルート(ルビー・O・フィー)、反ナチスのドイツ人一家に匿われ、彼らの啓蒙活動に一役買うオイゲン(アーロン・アルタラス)、髪を金に染めて映画館に入り浸るうちに中年のドイツ人女性と助け合う関係になるハンニ(アリス・ドワイヤー)。

純粋にサスペンスを感じようと思えば、撮影時まで生き残った御本人を予め出してしまう作り方はマイナスである。以前同じような構成の山岳遭難ものでは大いに批判したが、本作においてサスペンスは二次的なものであり、ナチスの蛮行に思いを馳せる側面が優先されるので、そこに余り拘ってもつまらない。

ドラマ的に面白いのは、ナチスが敗れ去った時、ユダヤ人を意味する黄色い星によりドイツ人たちが捕えられないエピソードである。ユダヤ人とアーリア人の違いなんて最初からその程度しかないわけで、何と示唆的であろうか。

“ヒトラーが出て来ない”なんて相変わらず的外れの邦題批判があるが、ヒトラーはユダヤ人抹殺計画の象徴なのだから、本人が出て来る必要がないのは言うまでもない。

この記事へのコメント

モカ
2019年08月23日 13:40
こんにちは。

>ナチスによるユダヤ人迫害が人類史上最悪の蛮行であることは理解しているが、ホロコースト絡みはさすがに作られ過ぎという気持ちが僕の内心に起りつつある。

 同感です。 私は何年も前から違和感を覚えていましたが、「黄色い星の子供たち」にうさん臭さを感じて、ホロコースト映画にはどこかから補助金でも出ているのではないかとすら勘ぐっています。

 この関連映画では、
「サンドイッチの年」と「ヨーロッパ ヨーロッパ 僕を愛した二つの国」のDVD化を望んでいます。
  「サンドイッチの年」はyoutubeで見ることができますが、「ヨーロッパ・・」は見る術がない状態です。

 Profe.はご覧になってますよね? レビューを拝見したいです。
オカピー
2019年08月23日 22:57
モカさん、こんにちは。

>補助金でも出ているのではないかとすら勘ぐっています。
臭いですね。
 何年か前にイタリア製の「アンネの日記」後日談を見ましたが、イタリア製なのに英語なんです。これはイタリアではなく外国への輸出が念頭にあることが伺われるわけで、ユダヤ系の資本が入っている感じを受けました。


>「サンドイッチの年」
すっかり忘れていましたが、30年前に東京の映画館で観ましたよ。
「ナチス蛮行の後遺症を垣間見せながら、少年二人の交流、少年と古物商の交流を描いて温かい」といったコメント残しています。

>「ヨーロッパ ヨーロッパ 僕を愛した二つの国」
こちらは94年に衛星放送で。
「可笑し味の中に得も言われぬ悲劇性が形成されている。女性監督ながら演出は力強く、皮肉のスパイスもばっちり」とまとめていますよ(笑)。
モカ
2019年08月24日 18:00
こんにちは。 

古いコメントを発掘してくださってありがとうございます。
好評価で良かったです。

「アンネの日記」って何度も映画化されているんですね。
中学生の頃は、本は読んでいなくても皆タイトルだけは知っていたくらい有名でしたが、今はどうなんでしょう。
 

オカピー
2019年08月25日 19:40
モカさん、こんにちは。

資料を持ち続けているので、探すことが出来ました。
昔は手書きで、三十数年前からワープロになり、楽になりましたね。

>「アンネの日記」って何度も映画化されているんですね。
1959年のアメリカの映画化以来、コンスタントに映像化されていますね。寧ろ1990年代以降に増産。多くはTV映画です。

大衆文学は言うまでもなく、純文学作品でもすたれることが多いですが、「アンネの日記」は今でも大人気のようですね。
 数年前には何か所かの図書館の「アンネの日記」が破られる事件もあったくらい。犯人は別に反ユダヤやナチス・シンパというわけではなかったようです。