映画評「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年タイ映画 監督ナタウット・プーンピリヤ
ネタバレあり

TV「アンビリバボー」は暫く観ていた。その模倣番組「ザ!世界仰天ニュース」は全く観ない。何となれば、日本テレビの悪い癖で何でも出演者のネタばなしに持って行こうとする。動機が不純なんだわ(“ロックンロール・ウィドウ” by 阿木燿子)。
 その「アンビリバボー」も大分前に観なくなった。右に倣って出演者のネタばなし傾向が少し出て来たことと、もう一つは映画化されている実話をそうとは知らずに見、後になって「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」などで面白さを殺いでしまうという苦い経験をしたからだ。

実はこの作品もその類。実話は何か月か前に特別番組で見たのだが、まさか映画になっているとは。舞台がモデルとなった中国からタイに変わっているし、登場人物の追加・削除等の工夫が見られるとは雖も、お話の核となる部分は全くそのままなので、興味が半減してしまった。世評より☆★が少ないのは主にそれが理由である。

タイ。貧乏だが天才と言って良い女子高生リン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)が父親の勧めで私学へ転校する。奨学金で何とかまかなうが、親しくなった同級生グレース(イッサヤー・ホースワン)に試験の答えを教えてやったことから、パット(ティーラドン・スパパンピンヨー)を筆頭とする成績の悪い富豪子息の連中に、カンニングの手伝いをすることを承諾させられてしまう。
 パットは父親にボストン留学をけしかけられ、グレースも指南役として付き合わされることになるが、実力のないグレースはリンに来てもらわらないとお手上げ。そこでその前段となるSTICなるマークシート方式の国際的試験のカンニング作戦についてリンは頭を絞る。
 同じく貧乏人の秀才バンク(チャーノン・サンティナトーンクン)を無理やり指南役として味方に引き入れ、試験開始時刻が同じである為一番早く試験の行われるオーストラリアへ行く。二人で半分ずつ記憶した答案をスマホでタイへ送り、タイの二人はバーコード化したシールを鉛筆に貼る、という作戦である。
 ところが、バンクの犯行はばれ、将来が閉ざされてしまう。リンは放免になるが、将来が閉ざされてすっかり人の変わったように強欲になったバンクに誘われた次なるカンニング商売を固辞し、やがてカンニング事件を当局に語り始める。

カンニングの手法そのものは実際と全く同じなので、それ自体に既に驚きはない。違うのは実際のヒロインはもっと優秀で、全て一人で記憶する。映画が何故二人にしたかと考えるに、二人にし最終的に対照的な選択をさせるのを見せることで観客に射幸心について考えさせる狙いからであろう。
 これが本作最大の創意工夫で、ドラマとして実際より面白味のあるお話に仕上げている。殊勲賞に相当しよう。ただ、純サスペンスと考えた時には緊張が弱体化した印象を免れない。

捕えられた時の対策を本物と思わせて後半まで進むアイデアも敢闘賞もので、“タイ映画も随分洗練されてきたなあ”と思わせる。同時に、優れたアメリカン・サスペンスを研究した痕を感じる次第。

実話に出て来た、少女にカンニング作戦を授ける大人(塾経営者だったか?)は出て来ない。実話では、カンニング事件は同じ答案が多かったことから発覚し、少女は試験への参加が数年禁止され、当然カンニングした受験者は全員失格となった。もっと劇的な映画でも彼女の告白により当然彼らは合格が取り消されるはずである。

学校の一般的な試験が、この学校に出て来るように、出鱈目を書いてもある程度点が取れるマークシートなのは良くない。これでは本当の実力が測りにくく、差が出にくい。日本の学校ではまさかあるまいね。

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