映画評「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり

山田洋次監督のシリーズ第3弾は、前作の時に既に指摘したように成瀬巳喜男の戦前を代表する秀作「妻よ薔薇のやうに」(1935年・鑑賞済)の題名をそのまま戴いている。内容的には殆ど関係ない。(追記)但し、主婦が家を出て夫が迎えに行く設定は成瀬戦後の秀作「めし」(1951年)、終盤に稲妻が絡んでくるのは「稲妻」(1952年)と酷似している。勿論、戴いたのである。(追記終わり)

老夫婦(橋爪功、吉行和子)が夫の故郷に墓参りに行っている間に、平田家に泥棒が入る。嫁の史枝(夏川結衣)が居眠りをしていた間の出来事で、彼女は犯人の姿を見るも、見事に冷蔵庫に隠してあったへそくりを盗まれる。これに激怒した夫・幸之助(西村まさ彦)が史枝を責め、20年間専業主婦として頑張って来た彼女は家を出てしまう。
 帰って来た老父は、老妻が腰痛で動けない為に慣れぬ家事に奮闘することになり、働き者の嫁の有難味が解る。しかし、幸之助はプライドが高くてなかなか折れようとしない。末っ子で弟の庄太(妻夫木聡)に尻を叩かれて、無人となっている故郷の家に戻った妻を迎えに行く。“お前が必要なんだ”という夫の言葉に雷鳴が力を添えて、二人は家に戻ってくる。めでたしめでたし。

東京家族」以降山田監督は松竹の大先輩小津安二郎のフォーマットを徹底的に用いながら、小津とは対照的な家族観を打ち出す。それほど大袈裟なことではなく、小津が当時の“現在”と未来(こちらが今の現在)の家族を悲観的に捉え、山田監督が家族(の絆)に希望を見出しているということである。それには男性陣の主婦への理解が欠かせない、と主張する。昔ながらの家族形態を大事にしながら、アンチ自民党的に、女性への敬意を重視する。かと言って何でもかんでも女性は外に出よと言うわけでもない。

自民党も国力を増そうと思うのであれば、女性の活動を妨害したがっているとしか思えない因循な議員には出て行ってもらうべきである。イスラム教圏が潜在能力ほど科学力が伸びず、とりわけ経済的発展が出来なかったのは、女性を守ると称して女性を縛りに縛って来たからと僕は思っている。イスラム原理主義者は実にひどい。女性は勉強せずに働きもしないのが正しいというのだから。夫を戦争で失った妻には死を待てというのだから。

閑話休題。
 三作の中では最も遊びが少なくて直球的、少し物足りないところもあるが、老妻の墓をめぐる発言を布石に息子の妻の家出を繰り出して来る辺りはさすがに巧い。また、シリーズを通して見ている人には楽しめるところが多く、“老父と長男が(性格的に)そっくり”という台詞のリフレインと、前作で老父が家族の有難味に気付いたこととを併せて考えた時、幕切れにニヤニヤしたくなるのである。

蒼井優が結婚。結婚には吃驚しないが、相手に吃驚しましたな。

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