映画評「シャットダウン」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年チェコ=スロヴァキア合作映画 監督カレル・ヤナーク
ネタバレあり

一応SFというジャンルに入るのかもしれないが、現在のIT社会は潜在的に、本作が見せる内容に限りなく近いので、実質的に殆ど一般的なサスペンスと言って良い。日本劇場未公開作品。

IT会社の設計者たるヴォイチェク・ディクを夫に持つ女性彫刻家ガブリエラ・マルチンコワが、会社が設計したAIが管理する家に住まされることになる。当初は便利な生活を満喫するが、過剰なサーヴィスに懸念が生じて来る。
 頼んでもいない花が届く。夫のメールから注文されたようだが、夫は知らないと言う。カメラの動きも変だ。AIの不審な動きは近所に住むハッカーが起こしたと判明するが、このハッカーが家の過剰防衛で死んだ後も、夫が狙撃される事件が起きる。
 再びAIへの疑惑が発生、それは夫が入院する病院の管理パラメータまで変え彼を亡き者にしようとするに至って、確信に変わる。
 以降、ヒロインが如何に家のAI(若しくはAIに管理された家)と闘い、妨害を掻い潜り夫を助けることに成功するかをテーマに展開していく。

今でも人気のオカルト・ハウスもののヴァリエーションみたいな内容で、そこにITによる一種の管理社会化がどんどん進んでいる現実の怖さが内包されているわけである。こんな状態はそう簡単には起こりそうもないが、2045年問題などを考えてもAIの扱い次第では荒唐無稽なお話と呑気を決めつけられないものがある。

一つ視点を変えると、自らの夫への愛情に自信を持てなくなっていたヒロインが事件を通して愛情を確信するという話。そして、AIが彼女から感じ取った潜在意識が様々な異常事態を起こしたと分析されるところに、哲学SF的若しくは心理学的なアングルがあって程々興味深い。

管理社会の恐怖を描いた作品は多く、色々な違いあるとは雖も、新味は感じにくいわけだが、アニメを除くと日本で殆ど紹介されたことのないチェコとスロヴァキアの映画ということを考えると、時代が変わったものだと感慨を覚える。しかし、それは必ずしもポジティヴな感慨ではないのである(製作国の差が全くない)。

個人的に、住み始めて早々“踊れる歌”としてAIが選ぶのが「監獄ロック」であるのが大いに気に入った。この段階で意図的にAIが選んだかは知らないが、極めて暗示的・寓意的で非常に面白い。二回目は確信犯であろう。

かつてはチェコ=スロヴァキアという一つの国だった二か国がチェコ=スロヴァキア合作という扱いになっているのが面白い。

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