映画評「焼肉ドラゴン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・鄭義信
ネタバレあり

「月はどっちに出ている」「愛を乞う人」「血と骨」で三度キネマ旬報脚本賞を獲っている鄭義信の初監督作品である。原作は彼自身の戯曲で、勿論脚色も担当している。

空港近くの朝鮮人コミュニティー(大阪空港横の伊丹市中村がモデル)が舞台で、大阪万博一年前の1969年から始まる。

終戦後悲劇のあった済州島の難民である金夫婦(夫キム・サンホ、妻イ・ジョンウン)、夫の連れ子である長女静花(真木よう子)、次女梨花(井上真央)、妻の連れ子である三女美花(桜庭ななみ)、そして夫婦の長男時生(大江晋平)から成る6人家族。
 父親は焼肉屋を経営し、半島出身の人々が賑やかに出入りしている。次女が長女の幼馴染・哲男(大泉洋)と結婚するが、彼が長女に思い入れのある為か、喧嘩が絶えず、彼女はある時紛れ込んできた韓国人の若者に靡いてしまう。
 かくして不和が修復できないと覚悟を決めた哲男は改めて長女にプロポーズして、帰還事業で一緒に北朝鮮に渡ろうと言う。彼女と婚約まで行った新来者・尹氏(ハン・ドンギュ)は振られる。三女はキャバレーの司会をしていた日本人(大谷亮平)と結ばれる。
 1971年、不法占拠として住居が取り壊されることになり、一家はかくして離散する。

奇しくも一週間前に観た「止められるか、俺たちを」と全く同じ時代(1969-1971年)が背景。方や東京の映画プロダクション、方や大阪の在日コミュニティーという違いがあるが、狭いコミュニティーの話に終始して時代を俯瞰するところに共通項がある。

「止められるか、俺たちを」で僕はその時代を“戦後が本当に終った頃”と表現したが、僕と同じ世代の鄭義信は“日本の共同体そのものが崩壊を始めた時代”と感じているらしい。表現こそ違え、それまでの価値観が変わるという意味で通底するものがあり、僕のいい加減な概括も案外当たっているところがあるかもしれぬ。

価値観が変わるという作者の考えは、家族の分散という形で表現される。四つに分かれた家族はいずれもポジティヴに将来を捉えるも、北朝鮮の実際を知っている僕らは長女夫婦については暗然たる思いを抱かざるを得ない。僕がかなり悲しい映画と見る所以である。

さて、このお話は、息子の時生によって始められる。ところが、やっと進んだ私立中学で虐められていた少年は橋から投身自殺をしてしまう。「サンセット大通り」などたまに死者が語り手を務める作品があるわけだが、本作ではさすがにちょっと吃驚。
 同時に、映画では吃驚しても空間が夢幻的であるとも言える舞台ならそれほど感じないはずの設定で、その彼が屋根の上で叫んでいる場面はいかにも舞台的である。

“屋根の上”と言えば、本作は1971年に映画化されたミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」の本歌取りと考えられる。あちらはウクライナから追い出される五人娘のいるユダヤ人牛乳屋一家のお話であった。1971年の製作(舞台は1964年発表)というのも意味深長と言うべし。

日韓の政府対立がなかなか鎮火しそうにない。日本の主張に正しいところが多いと思うが、安倍政権がトランプ政権の対中国戦略をパクったのは明白で、アメリカからの真の独立を念願とする僕には頗る気に入らない。ある調査によると、日本国に好感を持っている韓国人は現在十数パーセントで、日本人に好感を持っている人は50%に近い。これが現実だろう。それでも、今年の来日者数は去年より減るかもしれないね。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント